2008年度「近未来チャレンジ」選考過程、結果
1. 審査対象
今回の審査対象は、以下の5件である。
- Wikipediaマイニングによる大規模Webオントロジの実現 (ニューチャレンジ)
- 認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学 (サバイバル1回目)
- オープンライフマトリックス (サバイバル2回目)
- 情報編纂の基盤技術 (サバイバル2回目)
- Community Web プラットフォーム (サバイバル3回目)
2. 審査方法
会場アンケートの結果に,担当の審査員の意見を加味して,
来年度に残すか否かを審査する.審査の基本方針として,ニューチャレンジ,
1〜2回目のチャレンジについては,「良いところを見る」という方針で審査する.
以下に,今回採用した審査基準を示す.
<ニューチャレンジの審査基準>
総合評価が優れている(4.0以上)であることを前提に,
- ゴール達成時の社会的インパクト
- 実用化へ向けた取り組み
の2つの評価項目のいずれか一つに優れた点(3.0以上)があればサバイバルとする.
但し,上記の条件を満たす場合であっても,3つの評価項目に,
サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)があれば,別途,
アンケートのコメントの中身,審査員の意見を検証して決める.
<1〜2回目のサバイバルの審査基準>
総合評価が優れている(4.0以上)であることを前提に,
- 現時点での社会的インパクト
- ゴール達成時の社会的インパクト
- 実用化へ向けた取り組み
の3つの評価項目のいずれか一つに優れた点(3.0以上)があればサバイバルとする.
但し,上記の条件を満たす場合であっても,3つの評価項目に,
サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)があれば,別途,
アンケートのコメントの中身,審査員の意見を検証して決める.
<3回目のサバイバルの審査基準>
総合評価が優れている(4.0以上)であることを前提に,
- 現時点での社会的インパクト
- ゴール達成時の社会的インパクト
- 実用化へ向けた取り組み
の3つの評価項目のいずれか一つに優れた点(3.5以上)があればサバイバルとする.
但し,上記の条件を満たす場合であっても,3つの評価項目に,
サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)があれば,別途,
アンケートのコメントの中身,審査員の意見を検証して決める.
3. アンケート集計結果
表1: アンケート結果集計
4. 審査結果
- Wikipediaマイニングによる大規模Webオントロジの実現 (ニューチャレンジ)
- 総合評価が優れている(4.18点)
- いずれか一つの評価項目に優れた点(3.0以上)がある.
- 学術的観点からの評価(3.48点),現時点までの社会へのインパクト・貢献(3.59点),最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み(3.86点),チャレンジ実用化に向けた取り組み(3.11点)
- サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
以上の評価から,審査基準と照らして「サバイバル」とする.
- 認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学 (サバイバル 1回目)
- 総合評価(4.55点)が優れている
- いずれか一つの評価項目に優れた点(3.0以上)がある.
- 学術的観点からの評価(3.74点),現時点までの社会へのインパクト・貢献(4.17点),最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み(4.45点),チャレンジ実用化に向けた取り組み(3.60点)
- サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
以上の評価から、審査基準と照らして「サバイバル」とする。
- オープンライフマトリックス (サバイバル 2回目)
- 総合評価が優れている(4.67点)
- いずれか一つの評価項目に優れた点(3.0以上)がある.
- 学術的観点からの評価(4.11点),現時点までの社会へのインパクト・貢献(4.11点),最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み(4.78点),チャレンジ実用化に向けた取り組み(3.78点)
- サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
以上の評価から、審査基準と照らして「サバイバル」とする。
- 情報編纂の基盤技術 (サバイバル 2回目)
- 総合評価が優れている(4.48点)
- いずれか一つの評価項目に優れた点(3.0以上)がある.
- 学術的観点からの評価(3.70点),現時点までの社会へのインパクト・貢献(3.52点),最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み(4.29点),チャレンジ実用化に向けた取り組み(3.19点)
- サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
以上の評価から、審査基準と照らして「サバイバル」とする。
- Community Web プラットフォーム (サバイバル 3回目)
- 総合評価が優れている(4.40点)
- いずれか一つの評価項目に優れた点(3.5以上)がある.
- 学術的観点からの評価(3.70点),現時点までの社会へのインパクト・貢献(3.95点)
- サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
以上の評価から、審査基準と照らして「サバイバル」とする。
アンケートコメントのリスト
- Wikipediaマイニングによる大規模Webオントロジの実現
- is-a リンクの例だけではオントロジーとしての評価が難しかったです.
- wikipediaを対象とする取り組みは大事と思います.目標設定をしっかりすればよいと思いました.
- wikipedia->ontologyの構築に興味があるので,非常に参考になりました.
- 特に新規性なし.web一般としても,wikiとしても.
- 方向性をうまく考えればよいチャレンジになる可能性があると思われる.
- 方向性は見えにくかったが,wikipediaは面白いリソース&仕組みなので,ぜひ何とかして欲しい.
- もっと早くしてもよかった.もっと多くの人が参加すべき.
- wikipediaの特徴をより生かせる方向で研究を進めたらよいかと思いました.ユーザの知恵をいかに抽出するか,リンク情報を同使うか,多言語処理,などが考えられます.
- オントロジではせまいので,wikipediaマイニングでいいのでは?
- wikipedia全体を対象にした方がよりコミュニティとして広がっていい.
- 認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学
- 現場での調査のため信頼性が劣るのはしょうがない.
- 心理学者とのコラボレーションも欲しい.
- 多様な取り組みが成果にまでつながっているとは言い切れない.
- 学術的には研究手法の点で未知のことが多いように思うが,科学的検証を重要視して欲しい.
- 近未来チャレンジのテーマであるがため,これからさらに発展して欲しい.テーマが多かったので,長期的な展望にたって,サバイバルの選択をして欲しい.
- フィールド実証実験されている点に"近未来性"あり.
- 更なる進展とインパクトが期待される.
- AIも実用性ある領域にアタックすべきである.
- 学際的な感じがおもしろかった.
- オープンライフマトリックス
- データ収集,実験環境の整備に注力しており,収集されたデータの分析,知識発見は今後の課題である.
- 得られたデータの深い洞察,分析がされれば有用な価値のある研究成果が得られると思われる.
- 今後の展開が期待されるので,ぜひ続けて欲しい.
- 学術のみにとどまらず,応用を意識した上で,技術を開発しており,それによって新たな学術が生まれていっていると感じました.
- 社会と密着した研究が増えてきており,実際に社会応用が始まっており,来年が楽しみ.
- 毎年,新しい話題が増え,来年が楽しみです.
- 知識処理技術との融合に向けた取り組みをとりあげて欲しい.
- もっとがんばらなければならいと思った.まだまだ再利用,法則性が低いので.
- 現場をどう一般化するかポイントだと思った.
- 来年もがんばりたい.
- しっかりしたデータ収集基盤ができつつある.この基盤の有用性を示すには今後の展開を見守る必要がある.
- データが集まる仕組みができ,これを用いたモデリングとそのための課題へとフェーズが移っている.
- 社会貢献を進めながら,データ整備・技術の整備を進めている点がよい.
- 情報編纂の基盤技術
- おもしろい取り組みがなされていたので,実現されるとよいと思います.
- 様々な技術が提案されている.まだまだアイディアレベルのものが多いが見込みはあると考える.
- 現実的なケースが多く,実現が適切に行われれば有用性は高い.
- 共通の関心をもった研究者が連携(字が読めない)できる場なので,続けて欲しい.
- 従来,様々な分野で研究されてきた要素技術を横断的にまとめ新しい分野の形成を目指しているが,その明確な成果はまだのように思われる.
- User orientedな技術は重要である一方で評価も分かれる.
- まだまだ自然言語処理+ヒューリスティクスの域を出ていないが,もっと他の分野,例えば,学習やエージェントも参入する余地があり,期待を込めてサバイバルして欲しい.
- 動画などの普及により,情報編纂技術がますます必要となっている.また時系列データの分析も大変重要になっている.
- Community Web プラットフォーム
- チャレンジの取りまとめに向けて,何らかの共通データを用意してそれを用いて研究してはどうか.社会に向けた発表,発信をもっと積極的に行うとよいと思う.セッション参加者が自由に使える共通データはやはりあった方がよい.Yahoo!知恵袋や盛岡SNS?
- 質疑の時間をもう少しとって欲しい.そうするともっと盛り上がると思う.分析の話が多いので,コミュニティWeb実現に向けたデザインの話をもう少し多くして欲しい.次回はもう少し大きい会場でお願いします.立ち見が多かったので.間に休憩を入れて欲しい.JSAI大会の他に集まれる場所を設けては?
- セッションが長いので,2セッションにわけてほしい.
- 出来ることの設計と取り組みのようなものが多かったように思います.もっと「チャレンジ」的な研究も見てみたいです.
- 客観的な視点が少ない.
- 世の中の流れへの追従が課題.
- 知的な刺激になりました.刺激しあう場として存続してほしいです.
- 全体的に実証内容がまだまだ浅いと感じました.
- どのような実用化に向けての調査・分析を行うか,についてもっと考察を深めてから展開を試みて欲しいと思いました.
- 一般向けサービスとして普及すればインパクトは大きい.
- 今後しばらくは必要な分野
- 多分野からの様々な考え方を知ることができる.