2010年度「近未来チャレンジ」選考過程、結果
1. 選考対象
今回の選考対象は、以下の5件である。
- 情報編纂の基盤技術 (サバイバル4回目 (最終回))
- オープンライフマトリックス (サバイバル4回目 (最終回))
- 認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学 (サバイバル3回目)
- マイニングによる大規模 Web オントロジの実現 (サバイバル2回目)
- Total Environment for Text Data Mining (ニューチャレンジ)
2. 選考基準
会場アンケートの結果に,担当の選考員の意見を加味して,来年度に残すか否かを選考する.選考の基本方針として,特に,第1〜2回目のサバイバルについては,「良いところを見る」という方針で選考する.以下に,今回採用した選考基準を示す.
<4回目のサバイバルの選考基準>
総合評価が優れている (4.0以上) であることを前提に,
- 現時点での社会的インパクト
- ゴール達成時の社会的インパクト
- 実用化へ向けた取り組み
の3つの評価項目のいずれか一つに優れた点 (4.0以上) があればサバイバルとする.但し,上記の条件を満たす場合であっても,3つの評価項目に,サバイバルとするのに問題となる点
(3.0未満)があれば,別途,アンケートのコメントの中身,選考員の意見を検証して決める.
<3回目のサバイバルの選考基準>
総合評価が優れている (4.0以上) であることを前提に,
- 現時点での社会的インパクト
- ゴール達成時の社会的インパクト
- 実用化へ向けた取り組み
の3つの評価項目のいずれか一つに優れた点 (3.5以上)があればサバイバルとする.但し,上記の条件を満たす場合であっても,3つの評価項目に,サバイバルとするのに問題となる点
(3.0未満) があれば,別途,アンケートのコメントの中身,選考員の意見を検証して決める.
<1〜2回目のサバイバルの選考基準>
総合評価が優れている(4.0以上)であることを前提に,
- 現時点での社会的インパクト
- ゴール達成時の社会的インパクト
- 実用化へ向けた取り組み
の3つの評価項目のいずれか一つに優れた点(3.0以上)があればサバイバルとする。但し、上記の条件を満たす場合であっても、3つの評価項目に、サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)があれば、別途、アンケートのコメントの中身、選考員の意見を検証して決める。
<ニューチャレンジの選考基準>
>総合評価が優れている (4.0以上) であることを前提に,
- ゴール達成時の社会的インパクト
- 実用化へ向けた取り組み
の2つの評価項目のいずれか一つに優れた点 (3.0以上) があればサバイバルとする.但し,上記の条件を満たす場合であっても,3つの評価項目に,サバイバルとするのに問題となる点
(3.0未満) があれば,別途,アンケートのコメントの中身,審査員の意見を検証して決める.
3. アンケート集計結果
表1: アンケート結果
図1: アンケート結果グラフ (集計)
4. 選考結果
- 情報編纂の基盤技術 (サバイバル4回目)
- 総合評価 (4.38点) が優れている
- いずれか一つの評価項目に優れた点 (4.0以上) がある.
- 学術的観点からの評価 (4.27点),
現時点までの社会へのインパクト・貢献(4.06点),
最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み(4.38点),
チャレンジ実用化に向けた取り組み(3.81点)
- サバイバルとするのに問題となる点 (3.0未満) はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
- 以上の評価から,選考基準と照らして「卒業」とする.
- オープンライフマトリックス (サバイバル4回目)
- 総合評価 (4.52点) が優れている
- いずれか一つの評価項目に優れた点 (4.0以上)がある.
- 学術的観点からの評価 (4.05点),
現時点までの社会へのインパクト・貢献 (4.29点),
最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み (4.52点),
チャレンジ実用化に向けた取り組み (3.90点)
- サバイバルとするのに問題となる点 (3.0未満)はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
- 以上の評価から,選考基準と照らして「卒業」とする.
- 認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学 (サバイバル3回目)
- 総合評価 (4.70点) が優れている
- いずれか一つの評価項目に優れた点 (3.5以上) がある.
- 学術的観点からの評価 (4.10点),
現時点までの社会へのインパクト・貢献 (4.50点),
最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み (4.85点),
チャレンジ実用化に向けた取り組み (3.75点)
- サバイバルとするのに問題となる点 (3.0未満) はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
- 以上の評価から,選考基準と照らして「サバイバル」とする.
- マイニングによる大規模 Web オントロジの実現 (サバイバル2回目)
- 総合評価が優れている (4.54点)
- いずれか一つの評価項目に優れた点 (3.0以上) がある.
- 学術的観点からの評価 (3.92点) ,
現時点までの社会へのインパクト・貢献 (4.00点),
最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み (4.31点),
チャレンジ実用化に向けた取り組み (3.62点)
- サバイバルとするのに問題となる点 (3.0未満) はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
- 以上の評価から,選考基準と照らして「サバイバル」とする.
- Total Environment for Text Data Mining (ニューチャレンジ)
- 総合評価が優れている (4.22点)
- いずれか一つの評価項目に優れた点 (3.0以上) がある.
- 学術的観点からの評価 (3.89点),
最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み (3.67点)
- サバイバルとするのに問題となる点 (3.0未満) がある.
- チャレンジ実用化に向けた取り組み (2.89点)
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
- 以上の評価から,選考基準と照らして「サバイバル」とする.
付録: 各テーマへのコメント
- 「情報編纂の基盤技術 (サバイバル4回目) 」へのコメント
- 様々な基本技術が面白く使われている
- 情報があふれてきている中で,どのようにまとめてみせるかは重要な技術だと思います
- このような知的文書の処理技術は今後必要になる
- 現実世界の問題を解こうとする研究が目立った
- 実用化の手法も様々でありこれからの発展が望まれる
- 参加している人たちが魅力的
- 面白いタイプの取り組みと思う
- 今回初めての参加です.各発表内容の共通性がどの当たりなのかよく分からなかった.大量文章の要約でしょうか.そもそも「情報編纂の基盤技術」というタイトルがぴんと来ないというのが問題かも.なにかもっといかしたタイトルを考えてみたら? (流行っぽい) (魅力的な)
- 同じ効果を持つ複数技術同定のためのワード抽出は非常に興味があります
- 提案者以外の発表も非常にアクティブで活発です
- 「オープンライフマトリックス (サバイバル4回目) 」へのコメント
- 前半と後半でギャップがありすぎる
- これからの研究活動を社会に位置づけ研究を続けやすい社会環境を実現するという意味で学術の将来を考えている
- 現場の data や case に基づいた発表が多いため (3.1は2)
- 子供の事故予防研究を中心に日常生活コンピューティング研究の基盤技術を作ることが出来たと考えている
- 現場の実データに基づいている点が学術的にも意義があると思います
- 一部の発表が優れている
- 後半のセッションは目的と手段の関係をもう少し議論した方がよいのでは?
- 社会のニーズに研究活動をサービスとして提供しようと考えている.インパクトは個々の技術によるだろう
- 今後の Plan が明確であるため (4.1〜4.3は1,1,2 (高評価)) .
- 研究レベルから社会への大きな動きまで発展させることが出来たと考えている
- サービス産業など実際の産業支援を目指したテーマが重要だと思います
- これは応用指向で良い応用を見つけることは重要
- 「認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学 (サバイバル3回目)」へのコメント
- 学際的で刺激の多いセクションでした.
- 自分の研究に対し,非常にいいヒントをいただきました.とてもよかったです.
- 応用例が多くためになる.
- もう少し基礎的な話もあれば,もっと良い.
- 個別性の高い問題のため一般化は難しいと思うが,実践に基づくデータの蓄積が素晴らしいです.
- 市民参加型研究のモデルケースとして大変興味深かった.
- 効果の検証などが少し不明.
- 今のところ,まだロボティクス研究とフィールド研究の間が大きいように思います.今後,そのスキマを埋める研究が登場すると面白いのでは?
- 実用化に関しては,大きな形では難しいことが多いと思います. (認知症なので,難しい面があると思います.)
- ログの検索 (音声?) 遠隔参加など,技術の導入の余地があると研究者として嬉しい.
- 医学系学会でのアピールを頑張って欲しいです.
- こうした領域には息の長い応用研究が必要だと思います.
- 一般化が難しくとも,例えば普及させるための仕組みの提案などまで至り達すれば良いのではないでしょうか?
- マイニングによる大規模 Web オントロジの実現 (サバイバル2回目)」へのコメント
- 質疑応答システムの知識ベースとして Wikipedia を使うといったゴールを想定すると,まだ道は遠い感じです.
- Wikipedia を利用するというモチベーションが情報の利用にとどまらずに社会的に利用するという方向をもっと追求すべきではないでしょうか?
- Linked Data をもちいたアプリケーションをより充実させることが実用化に向けた大きな取り組みの一つだと思います.
- 大規模データの活用として面白い.
- 来年も面白い発表が集まることを期待します.
- Wikipedia からはまだまだ多くの情報を取り出せる可能性があるので,サバイバルしてほしい.
- Total Environment for Text Data Mining (ニューチャレンジ)」へのコメント
- まさに必要とされているところであると思います.
- テキスト可視化についての学術的な成果が得られており,信頼性・妥当性は充分であると考えられる.
- 一般人にも使えるようにという視点もはいったので,期待します.
- 枯れた技術をツール化するのはよい.最新の検証されていない技術はどうか.
- 発表者は,様々な成果を挙げているようだ.
- 砂山氏本人が,この研究をずっとしており,かなりのシステムを作成している.
- 更に他にも賛同者はいると思える.
- モジュール開発用の汎用ライブラリの提供 → 開発者の負担低減
- ニューチャレンジなので,これからに期待.
- マネジメントの問題 (開発者をどうつのるのか)
- ユーザー側のコミュニティをどう作るか (長く利用される息の長いサイトにするため) ユーザコミュニティとして,地元の NPO を当たるとよいかと思いました.
- ツール作りは重要だが,評価されにくい土壌があるのは確か.「みんなが乗ればうまくいく」のは正しいが,その状態に持ち込むための戦略が必要.
- あれば便利だと思う.比較実験がしやすい等の貢献が可能になるのは良い.研究としては面白いし,ぜひやってほしい.
- これからなので,取り組みは``思い''だけであるが,その思いは伝わってくるので期待したい.
- 文書解析時,機密漏洩の懸念? (特に企業)
- 発展の余地あるテーマと考える.来年も期待している.
- 研究会等を通じて広報を.
- 開発者のコミュニティづくりと,そのマネジメントがすべてだと思うので頑張ってほしい.
- 主旨に賛同するテキストデータマイニングの研究者を複数人集めて,同じページでダウンロードできて,インタフェースを作成してしまえば終ってしまうように感じた.つまり,筆者を筆頭とする複数人による1件の研究で済むように思う.もっと大きなテーマになれないか?
- チャレンジをしているうちにどんどん改良していってほしい.3種研の可能性もあると思う.
- 商用で Pipeline Pilot という類似の統合環境があるようです.ご参考まで.