2011年度「近未来チャレンジ」選考過程、結果
1. 選考対象
今回の選考対象は、以下の3件である。
- 認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学 (サバイバル4回目 (最終回))
- マイニングによる大規模 Web オントロジの実現 (サバイバル3回目)
- Total Environment for Text Data Mining (サバイバル1回目)
2. 選考基準
会場アンケートの結果に,担当の選考員の意見を加味して,来年度に残すか否かを選考する.選考の基本方針として,特に,第1〜2回目のサバイバルについては,「良いところを見る」という方針で選考する.以下に,今回採用した選考基準を示す.
<4回目のサバイバルの選考基準>
総合評価が優れている (4.0以上) であることを前提に,
- 現時点での社会的インパクト
- ゴール達成時の社会的インパクト
- 実用化へ向けた取り組み
の3つの評価項目のいずれか一つに優れた点 (4.0以上) があればサバイバルとする.但し,上記の条件を満たす場合であっても,3つの評価項目に,サバイバルとするのに問題となる点
(3.0未満)があれば,別途,アンケートのコメントの中身,選考員の意見を検証して決める.
<3回目のサバイバルの選考基準>
総合評価が優れている (4.0以上) であることを前提に,
- 現時点での社会的インパクト
- ゴール達成時の社会的インパクト
- 実用化へ向けた取り組み
の3つの評価項目のいずれか一つに優れた点 (3.5以上)があればサバイバルとする.但し,上記の条件を満たす場合であっても,3つの評価項目に,サバイバルとするのに問題となる点
(3.0未満) があれば,別途,アンケートのコメントの中身,選考員の意見を検証して決める.
<1〜2回目のサバイバルの選考基準>
総合評価が優れている(4.0以上)であることを前提に,
- 現時点での社会的インパクト
- ゴール達成時の社会的インパクト
- 実用化へ向けた取り組み
の3つの評価項目のいずれか一つに優れた点(3.0以上)があればサバイバルとする。但し、上記の条件を満たす場合であっても、3つの評価項目に、サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)があれば、別途、アンケートのコメントの中身、選考員の意見を検証して決める。
<ニューチャレンジの選考基準>
総合評価が優れている (4.0以上) であることを前提に,
- ゴール達成時の社会的インパクト
- 実用化へ向けた取り組み
の2つの評価項目のいずれか一つに優れた点 (3.0以上) があればサバイバルとする.但し,上記の条件を満たす場合であっても,3つの評価項目に,サバイバルとするのに問題となる点
(3.0未満) があれば,別途,アンケートのコメントの中身,審査員の意見を検証して決める.
3. アンケート集計結果
表1: アンケート結果
テーマ名 |
アンケート回収数 |
3. 学術的観点から |
4
社会貢献の観点からの評価(5択) |
5. 総合評価 (5択) |
|
3.1(これまでの成果の学術的な信頼性・妥当性) |
4.1(現時点での社会へのインパクト・貢献) |
4.2(最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み) |
4.3(チャレンジ実用化に向けた取り組み) |
5.1(近未来チャレンジのテーマとしてサバイバルすべきか) |
|
1. 劣る |
1. 全くない |
1. 全くない |
1. 不足 |
1. やめてもらいたい |
|
2. やや劣る |
2. 小さい |
2. 小さい |
2. 不足気味 |
2. あまりサバイバルして欲しくない |
|
3. まあまあ |
3. まあまあ |
3. まあまあ |
3. なされている |
3. どちらでも良い |
|
4. 優れている |
4. 大きい |
4. 大きい |
4. 十分なされている |
4. サバイバルして欲しい |
|
5. 非常に優れている |
5. 非常に大きい |
5. 非常に大きい |
5. 現時点で実用化 |
5. 是非サバイバルして欲しい |
|
認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学 |
35 |
3.51 |
4.29 |
4.43 |
3.60 |
4.66 |
サバイバル(4回目)=卒業 |
Wikipediaマイニングによる大規模Webオントロジの実現 |
13 |
4.08 |
4.15 |
4.38 |
3.69 |
4.46 |
サバイバル(3回目) |
Total
Environment for Text Data Mining |
22 |
3.77 |
3.55 |
4.36 |
3.41 |
4.36 |
サバイバル(1回目) |
図1: アンケート結果グラフ (集計)
4. 選考結果
- 認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学 (サバイバル 4回目)
- 総合評価 (4.66点) が優れている
- いずれか一つの評価項目に優れた点 (4.0以上) がある.
- 学術的観点からの評価 (3.51点),
現時点までの社会へのインパクト・貢献(4.29点),
最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み(4.43点),
チャレンジ実用化に向けた取り組み(3.60点)
- サバイバルとするのに問題となる点 (3.0未満) はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
- 以上の評価から,選考基準と照らして「卒業」とする.
- マイニングによる大規模 Web オントロジの実現 (サバイバル3回目)
- 総合評価が優れている (4.46点)
- いずれか一つの評価項目に優れた点 (3.5以上) がある.
- 学術的観点からの評価 (4.08点) ,
現時点までの社会へのインパクト・貢献 (4.15点),
最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み (4.38点),
チャレンジ実用化に向けた取り組み (3.69点)
- サバイバルとするのに問題となる点 (3.0未満) はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
- 以上の評価から,選考基準と照らして「サバイバル」とする.
- Total Environment for Text Data Mining (サバイバル1回目)
- 総合評価が優れている (4.36点)
- いずれか一つの評価項目に優れた点 (3.0以上) がある.
- 学術的観点からの評価 (3.77点),
現時点までの社会へのインパクト・貢献 (3.55点),
最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み (4.36点),
チャレンジ実用化に向けた取り組み (3.41点)
- サバイバルとするのに問題となる点 (3.0未満) はない.
- 関係者,非関係者,平均のいずれを見ても,結果は変わらない.
- 以上の評価から,選考基準と照らして「サバイバル」とする.
付録: 各テーマへのコメント
- 認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学(サバイバル4回目)へのコメント
- 学術観点からの評価:
- 各種システム、療法の評価について、今後お聞きしたいです。(評価結果のお話があまりうかがいなかったので。)
- アカデミズムではなく、実際に介護に携わった人の〜まである.このようにアカデミズム以外にて、このチャレンジが広まっていることは素晴らしいことだと思う。AIの普及にも関わってゆくと思われる.
- 個人差が大きい対象および想像と扱うので、必ずしも客観性にこだわる必要はないのではないか.
- 工学と医学の両方からの発表があり、学際的である.
- 影響が大きいので、研究者の広い他の分野も含めてのBackgroundが必要
- まだまだ議論すべきポイントがしっかり決まっていない.
- 一般市民の参画がひとつの特長なので、学術的信頼性を高めるという目標を折り込み済みであり、現状で大きな問題はない.
- ロボットにあえて喋らせる場合での利点調査が期待できそうで、面白く思っております.
- 最後の発表しかみていないのですが、学術的に信頼できると思いました。
- 社会貢献の観点からの評価:
- 完全に実用化されている訳ではないが、卒業には価すると思う.
- フィールドスタディの数と種類をもっと増やして欲しい
- 実用化されている中でより改善しようとするアプローチが他と異なる.
- 人間をどういう位置づけで研究するかが問題
- ビジネスになるとは現時点では思えないので、研究と製品開発を区別しなければならない。
- 一般市民を参画させる意義は大きい.
- ケースバイケースではあるか...
- 理論から実践まで幅広い取り組みがされていて、貢献の可能性が高いと思いました.
- 柔軟な発想の方が多く、いろいろな実験を社会的にされているのがよくわかった.
- 研究ありきではなく実践ありきで進めておられる研究が多い.
- 認知症が経度であれば不安なく生活できる.インフラを実現できれば患者も家族も救われるケースが多いと思いますので期待します
- 全体としての評価:
- 様々な分野の方が発表されており、このチャレンジの影響力の大きさを感じる.又、認知症のみならず、ほかの分野への応用も可能と思え、この先も楽しみである.
- 長期的な取り組みの中で手法を改善していくことが大事.
- 社会的課題として重要度が高いのでサバイバルすべき
- ますますコミュニティを大きくしていってほしい.
- 4.4のコメントが同時に行われる中で(途中までしか書いていない)
- 人間ではなく、ロボットならではのメリットが明らかになってきているようで、大変期待しております。
- 認知症への対応は、非常に重要な社会性の高い課題だと思います.是非、サバイバルしてほしいです.
- Wikipediaマイニングによる大規模Webオントロジの実現へのコメント
- 学術観点からの評価:
- だんだん一般的に使える技術になってきた
- wilipediaのような大規模なリソースから自動的にオントロジのような構造化文書を構築することは非常に有用である
- 社会貢献の観点からの評価:
- Linked Open Date等利用や拡張を目的としており実用化に向け取組んでいる
- wikipedia自体が社会的に貢献してるし、非常にいいと思います。
- 全体としての評価:
- 今年はじめて参加します。これからもこのテーマに参加したいのでぜひ来年もお願いします。
- Total Environment for Text Data Mining(サバイバル1回目)へのコメント
- 学術観点からの評価:
- 研究動機や手法が整理され、明確にされているものが多かった。
- 各発表内容の前提が見えなかった。ツールの関係者以外が分かる発表にしてほしい。
- 興味深い研究が多かった。
- 社会貢献の観点からの評価:
- 様々なテキストマイニング゛の研究がなされている。そしてモジュールの仕様について検討されている。
- 実際に活用された研究の例もあり、学習や検索システムとして是非実用化してほしいものが多かった。
- 世の中で実用的な研究こと一番価値があることだと思います。このチャレンジはこういっためんでとても価値があると思います。
全体としての評価:
- テキストマイニングの発展に役立つ
- 研究とアプリケーションをコネクトする場として続いて行ってほしいと思います。
- 今回は、提案環境での実装が今後見込まれるシステムの発表が主だったが、今後は提案環境による実装が進んでいくとよいと思います。
- 今年入った新人です。TETDMこそ自分が研究しようとする分野です。なので今後も続いたらと思います。
- とても面白そうだと思いました。自分自身、データマイニングの研究を行っているので興味を持ちました。
- 統合環境の構築は歓迎したい。出来上がったら是非使ってみたいと思います。
- 現時点では統合環境というよりは視覚化(可視化)が中心と感じた。分析対象(内容、目的)とマッチする分析手法の開発へのフィードバックも期待したい。