2013年度「近未来チャレンジ」選考過程、結果


1. 選考対象

今回の選考対象は、以下の6件である。
  1. Total Environment for Text Data Mining (サバイバル3回目)
  2. 異種協調型災害情報支援システム実現に向けた基盤技術の構築 (サバイバル1回目)
  3. クラウドベースのロボットサービスの統合基盤 (ニューチャレンジ)
  4. 認知症の人の情動理解基盤技術とコミュニケーション支援への応用 (ニューチャレンジ)
  5. コト・データベースによるモノ・コトづくり支援 (ニューチャレンジ)
  6. 文字に汚染されない子供たち (ニューチャレンジ)

2. 選考基準

会場アンケートの結果に、担当の選考員の意見を加味して、来年度に残すか否かを選考する。 選考の基本方針として、特に、第1〜2回目のサバイバルについては、 「良いところを見る」という方針で選考する。以下に、今回採用した選考基準を示す。

<ニューチャレンジの選考基準>
総合評価が優れている (4.0以上) であることを前提に、

の2つの評価項目のいずれか一つに優れた点 (3.0 以上) があればサバイバルとする。但し、上記の条件を満たす場合であっても、 2つの評価項目に、サバイバルとするのに問題となる点 (3.0 未満)があれば、別途、アンケートのコメントの中身、審査員の意見を検証して決める。 (今年はニューチャレンジセッションに加え、 インタラクティブセッションでもアンケートを集計した。 インタラクティブセッションで使用したアンケート用紙は、 ニューチャレンジセッションで使用したものに「話題に上らず」という選択肢を追加した。 結果として、一つも「話題に上らず」は選択されなかったため、 ニューチャレンジセッションとインタラクティブセッションのアンケートはそのまま合わせて選考を行った。)

<1〜2回目のサバイバルの選考基準>
総合評価が優れている(4.0以上)であることを前提に、

の3つの評価項目のいずれか一つに優れた点(3.0以上)があればサバイバルとする。但し、上記の条件を満たす場合であっても、3つの評価項目に、サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)があれば、別途、アンケートのコメントの中身、選考員の意見を検証して決める。

<3回目のサバイバルの選考基準>
総合評価が優れている (4.0以上) であることを前提に、

の3つの評価項目のいずれか一つに優れた点 (3.5以上) があればサバイバルとする。但し、上記の条件を満たす場合であっても、3つの評価項目に、サバイバルとするのに問題となる点 (3.0未満)があれば、別途、アンケートのコメントの中身、選考員の意見を検証して決める。

3. アンケート集計結果 (青塗りつぶしは基準未満を示す)


表1: アンケート結果


図1: アンケート結果グラフ (サバイバル)


図2: アンケート結果グラフ (ニュー)

4. 選考結果

  1. 異種協調型災害情報支援システム実現に向けた基盤技術の構築 (サバイバル1回目) 集計の結果、関係者、非関係者を区別しない場合、本テーマはサバイバルの基準を満たす。しかし、非関係者のみに絞って平均を見ると、実用化へ向けた取り組み(2.9)は問題となる水準(3.0以下)である。
    以上のように、非関係者のみに絞った集計結果に問題となる水準の項目があるものの、 総合計はサバイバル基準をすべて満たし、かつ、 非関係者のみに絞った集計結果のサバイバル基準を満たさない点もわずかであるため、 本テーマが1年目であることも考慮し、 近未来チャレンジ担当判断で「サバイバル」成功とする。 ただし、チャレンジャーには来年に向け、 今回非関係者から厳しい採点が下された実用化へ向けた取り組みに関しては改善を求める連絡を行う。 近年、隆盛を極めているSNSのデータをうまく使うことにより災害支援を行うという考え方は実用化への近道であるといえる。今後はSNS以外へのフィールドの拡張も期待したい。
  2. Total Environment for Text Data Mining (サバイバル3回目) TETDMはプラットフォーム非依存にすることで多様なユーザな環境に対応することを目指している。その一環で従来別言語により実装されていた著名な形態素解析器と同等な機能を持つjava実装の形態素解析器をTETDMに組み込んだ。一方で、R言語との連携も模索しており、これにより統計処理等データマイニングに必須な要素がプログラムにあまり親しみがないユーザにも比較的容易に利用できるよう工夫しており、システム全体の裾野が広がっている。
    集計の結果、全項目において基準を満たした。よって「サバイバル」とする。
  3. クラウドベースのロボットサービスの統合基盤 (ニューチャレンジ) Robot Service Initiative(RSI)という業界団体による既存の枠組みをうまく利用することで5年という短期間でも多彩な展開が期待される。本テーマはロボット関連のソフトウェア実装に関するプラットフォームの確立提供を目指している。うまく展開されれば、企業のみでは難しい、ビジネス展開に直ちに結びつきづらい認識系の知見を人工知能学会の参加者を呼び込みこむことができ、産学連携のシナジー効果が期待できる。
    集計の結果、全項目において基準を満たした。よってチャレンジテーマとして採択とする
  4. 認知症の人の情動理解基盤とコミュニケーション支援への応用 (ニューチャレンジ) 実際の医療現場で日々認知症と向き合っている医師がチームに存在することにより、問題へのアプローチが実践的になることが期待される。一方で幼児の情動理解基盤について、発表者は研究してきた背景を持っているため、少しの変更で高齢者にも適用可能な知見を多数有していると思われる。この問題は、今後日本において常に付きまとう命題であるため、チャレンジ終了後にも継続性のある成果を期待したい。
    集計の結果、全項目において基準を満たした。よってチャレンジテーマとして採択とする
  5. コト・データベースによるモノ・コトづくり支援 (ニューチャレンジ) 発表者らは、すでに病院においてモノ・コトづくり支援を行ってきた経験を持っている。なお、会場やアンケート結果からも「認知症の人の情動理解基盤とコミュニケーション支援への応用」との関連を指摘し連携を期待する声が多かったので、何らかの協力関係に発展することが期待される。一方、テーマの内容上、対象フィールドは病院に限られることはないので、より多くの現場へ対象を広められるポテンシャルを有している。
    集計の結果、全項目において基準を満たした。よってチャレンジテーマとして採択とする
  6. 文字に汚染されない子供たち (ニューチャレンジ) どの評価項目についても低評価となっているが、これは提案内容が水準に達していなかったというより、発表内容について理解できた聴衆がほぼいなかったことによると思われる。発表者は人工知能分野の研究者ではなく、また学会全般における発表経験がなかったため、効果的な発表には残念ながらなっていなかった。具体的には、会場に接続手段のないipadに発表資料を入れてきており、当日プログラム委員がwindows環境で発表できるようにファイルを調整したものの、発表者の思惑通りにことが運ばなかったという不運があった。(このことを反省し、来年度以降、発表環境については事前に周知したい。)次年度以降に期待したい。
    集計の結果、どの項目においても基準を満たせなかった。よって残念ながらチャレンジテーマとしては採択しない

付録: 各テーマへのコメント

  1. 異種協調型災害情報支援システム実現に向けた基盤技術の構築 (サバイバル1回目)
  2. Total Environment for Text Data Mining (サバイバル3回目)
  3. クラウドベースのロボットサービスの統合基盤 (ニューチャレンジ)
  4. 認知症の人の情動理解基盤技術とコミュニケーション支援への応用 (ニューチャレンジ)
  5. コト・データベースによるモノ・コトづくり支援 (ニューチャレンジ)
  6. 文字に汚染されない子供たち (ニューチャレンジ)