1. 選考対象
今回の選考対象は、以下のセッションである。
- [S-1] クラウドベースのロボットサービスの統合基盤(サバイバル4回目)
- [S-2] 認知症の人の情動理解基盤技術とコミュニケーション支援への応用(サバイバル4回目)
- [S-3] コト・データベースによるモノ・コトづくり支援(サバイバル4回目)
- [S-4] 世界価値観と国際マーケティング(サバイバル2回目)
2. 選考概要
選考は、次のように行った。
各セッション会場において聴講者に配布したアンケートの集計結果に基づき、次年度に残す(サバイバル成功)セッションとするか否かの選考判断を行った。
アンケート中では、学術的観点、社会貢献の観点、及び総合評価によって、次年度に残すべきかの評価を行った。
選考結果は、以下の通り、4件全てのセッションが「サバイバル成功」した。
- [S-1] クラウドベースのロボットサービスの統合基盤 ⇒サバイバル成功・卒業
- [S-2] 認知症の人の情動理解基盤技術とコミュニケーション支援への応用 ⇒サバイバル成功・卒業
- [S-3] コト・データベースによるモノ・コトづくり支援 ⇒サバイバル成功・卒業
- [S-4] 世界価値観と国際マーケティング ⇒サバイバル成功
[S-1], [S-2], [S-3] は4回目のサバイバル成功となり「卒業」となった。
[S-4]は2018年度の3回目のチャレンジセッションへ進む。
3. 選考基準
アンケートの評価は、以下の5項目について、1から5の5段階評価で行った。
[社会貢献の観点からの評価]
- 現時点での社会へのインパクト・貢献
- 最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み
- チャレンジ実用化に向けた取り組み
[総合評価]
- 近未来チャレンジのテーマとしてサバイバルすべきか
以下に、選考基準の詳細を示す
(選考の基本方針として、1回目、2回目のサバイバルについては、「良いところを見る」という方針で選考する為、選考基準を以下のように分けた)。
[1回目、2回目のサバイバルの選考基準]
- 総合評価が優れている(4.0以上)ことを目安に、
- 社会貢献の観点からの評価の以下の3つの評価項目のいずれか1つに、
優れた点(3.0以上)があればサバイバルとする。
- 現時点での社会へのインパクト・貢献
- 最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み
- チャレンジ実用化に向けた取り組み
- ただし、上記の条件を満たす場合であっても、社会貢献の観点からの3つの評価項目に、
サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)があれば、別途、アンケートのコメントの中身、選考員の意見を検証して決める。
[3回目、4回目のサバイバルの選考基準]
- 総合評価が優れている (4.0以上) ことを目安に、
- 社会貢献の観点からの評価の以下の3つの評価項目のいずれか1つに、
優れた点(3.5以上)があればサバイバルとする。
- 現時点での社会へのインパクト・貢献
- 最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み
- チャレンジ実用化に向けた取り組み
- ただし、上記の条件を満たす場合であっても、社会貢献の観点からの3つの評価項目に、
サバイバルとするのに問題となる点 (3.0未満) があれば、別途、アンケートのコメントの中身、選考員の意見を検証して決める。
4. アンケート集計結果
以下に、アンケート集計結果を示す。
表1にアンケート集計結果の一覧を、図1にアンケート集計結果のチャート図を示す。
表1: アンケート集計結果 一覧表
図1: アンケート集計結果 チャート図
5. 選考結果
以下に、選考結果およびその理由を示す。
[S-1] クラウドベースのロボットサービスの統合基盤(サバイバル4回目)
- 総合評価(4.3)はサバイバル前提基準の目安(4.0)を上回っている。
- 社会貢献の観点(学術的観点以外)からの評価の以下の3つの評価項目のいずれか1つに、優れた点(3.5以上)がある。
- 現時点での社会へのインパクト・貢献(3.7点)
- 最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み(4.3点)
- チャレンジ実用化に向けた取り組み(3.5点)
- サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)はない。
総合評価を含めた評価点は、いずれも昨年の結果から上昇している。特に、「現時点までの社会へのインパクト」「チャレンジ実用化に向けた取り組み」については、実証実験やコンテスト開催等によるプラットフォーム活用の評価、活性化への具体的な取り組みが評価されたと考えられる。本テーマは実用的なレベルに到達したと考えられ、実用化への具体的な展開、業界・社会への広い認知が期待されており、次年度の卒業セッションに向けて、ぜひ取り組みを広めていただきたい。
アンケート集計の結果、全項目において基準を満たした。よって、
「卒業」とする。
[S-2] 認知症の人の情動理解基盤とコミュニケーション支援への応用(サバイバル4回目)
- 総合評価(4.5)はサバイバル前提基準の目安(4.0)を上回っている。
- 社会貢献の観点(学術的観点以外)からの評価の以下の3つの評価項目のいずれか1つに、優れた点(3.5以上)がある。
- 現時点での社会へのインパクト・貢献(4.3点)
- 最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み(4.5点)
- チャレンジ実用化に向けた取り組み(3.8点)
- サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)はない。
高齢化社会が進むにつれ、多くの人々にとって身近となっている課題であり、社会貢献の観点から大きな期待が寄せられているテーマ。現場と学術機関との間でコミュニティーを構築する実践的な取り組みや、知の活用に向けた取り組みなど、多面的な取り組みの報告が行われ、昨年度から引き続き、高い評価を得ている。次年度の卒業セッションでは、多岐にわたる実践的・技術的取り組みを広めるとともに、後進の研究者の為にも学術的な観点での成果の総括も期待したい。
アンケート集計の結果、全項目において基準を満たした。よって、
「卒業」とする。
[S-3] コト・データベースによるモノ・コトづくり支援(サバイバル4回目)
- 総合評価(4.3)はサバイバル前提基準の目安(4.0)を上回っている。
- 社会貢献の観点(学術的観点以外)からの評価の以下の3つの評価項目のいずれか1つに、優れた点(3.5以上)がある。
- 現時点での社会へのインパクト・貢献(3.8点)
- 最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み(4.4点)
- チャレンジ実用化に向けた取り組み(3.5点)
- サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)はない。
医療、介護、製造業、自動運転などの幅広い現場との連携・実証実験を通して、各分野/業務の「コト」を収集、可視化、知識化を行う取り組みや、それを活用した「モノ」「コト」づくり支援を行う試みを続けている。各取り組みは実践的で、今後の展開・実用化への期待が、高い評価に繋がっていると考えられる。一方で、個々の取り組みが個別事象への対処に陥る危険性もあると思われ、本テーマの核となる理論や方法論、指標等の確立への展望を含めて、次年度の卒業セッションにおける総括に期待したい。
アンケート集計の結果、全項目において基準を満たした。よって、
「卒業」とする。
[S-4] 世界価値観と国際マーケティング(サバイバル2回目)
- 総合評価(4.4)はサバイバル前提基準の目安(4.0)を上回っている。
- 社会貢献の観点(学術的観点以外)からの評価の以下の3つの評価項目のいずれか1つに、優れた点(3.0以上)がある。
- 現時点までの社会へのインパクト・貢献(3.6点)
- 最終目的達成時の社会へのインパクト・貢献の見込み(4.3点)
- チャレンジ実用化に向けた取り組み(3.8点)
- サバイバルとするのに問題となる点(3.0未満)はない。
人の行動プロセスや意思決定をデータ分析により予測するといったチャレンジングな学術的取り組みを含み、
産業応用の点からも期待が大きいテーマ。初年度と比較して実用化に向けた取り組みも強化されている。
大きな研究・実践的コミュニティーへと広がる可能性を秘めたテーマでもあるので、産業界との連携など、
実用化に向けてコミュニティーを拡大する為の方策へも期待したい。
アンケート集計の結果、全項目において基準を満たした。よって、
「サバイバル」とする。
付録: 各テーマへのコメント(会場アンケートより)
※誤字・誤植など元のコメントの一部を修正しております。
[S-1] クラウドベースのロボットサービスの統合基盤(サバイバル4回目)
- 【学術観点からの評価】
- デモでの具体的な紹介があり、わかりやすかったです。
- 確実に進んでいる
- 統計調査などの従来手法との違いがあまり明確にわかりませんでした
- コミュニティーに共有のAIは重要と思う
- 標準的なロボットサービス仕様を拡張したプラットフォームを構築し、他研究者への提供を通して有用性を検討している
- 【社会貢献の観点からの評価】
- ロボットがクラウドベースになることによる新規性がわからなかった。チャレンジの具体的目標がよくわからなかったため、上記アンケート(項目4.2, 4.3)は回答不可
- 保守運用の自動化など増えていけば大変になるため実用化されたらとても有用だととても感じた。
- 実証実験が評価できる
- LINEBOTなどではなぜだめなのかとも思いました。利用者が多いサービスが普及しやすいと思います。非言語が大切な部分と思いました。
- AIの新展開といえる
- 社会的認知が広まればニーズが出てくると感じられる内容でした
- マーケティングへの適用の試みや実証実験を幅広く実施しており、実用化への取り組みも十分行われている。
- 【総合評価】
- パネルでのディスカッションがよかった
- クラウドの活用することのメリットは物理的な距離を越えられる点だと思うので、特に遠隔地間のサービス分野で社会実装に向けた開発・大規模な実験の取り組みを期待します。
- 全体を通して、チャレンジのゴールが理解できなかったので評価できない。
- 一般企業でも新しいものは受け入れられにくいものです。社長命令とかでないと難しい。県知事さんとかと組んで導入していけばうまくいくのではないでしょうか。
- ロボットでアンケートとかとても興味があるがアンケートを多くやってきた企業の商品開発研究員としては課題の設定からすでに違うと思っていた。でも少し勉強して先生方に直接アクセスします。現状を知る良い機会となりました。
- 次に期待できる
- 対話型インタフェース全般の問題として、まだまだ自然な会話が成立しにくいことがあると思います。Webに説明を加えるなどユーザーが何かをみて操作することも必要かもしれません
- とても面白い
- 非常に興味深い
- サバイバルはぜひしてほしいです。が、具体的な比較をするうえで分野ベースラインとなる手法の定義等、クリアすべき問題はあると思います。そこをきっちりしていただいてサバイバルを行えばとても有意義な内容になると思う。
- 本テーマの提案であるプラットフォーム(CRSP)について開発整備や他機関との連携実証実験コンテスト等、
精力的に取り組まれていて、今後のさらなる発展が期待される。ただセッションの発表の中でも、CRSPとの直接の関連がわからないものもみられる。
本テーマの掲げる「ロボットの非専門家にも利用されるプラットフォーム」の面をさらに追及していただきたい
[S-2] 認知症の人の情動理解基盤技術とコミュニケーション支援への応用(サバイバル4回目)
- 【学術観点からの評価】
- 多職種連携のモデル事例となる取り組みだと思います。サスティナブルな取り組みとなる仕組みになることが今後のポイントとなるかなと思います。
- どの研究コミュニティーに属する研究成果かややわからなかった発表があった。
- 昨年から一年間の、AI的な進捗の観点で3
- 従来経験的に行われてきた、ケアの方法がAIの導入により、分析可能となり学術的な信頼性が向上している。
- 評価の仕方が「やってみました」のように見える、仮説提示と結論がセットになっていないので、学術的には信用しづらい
- IT分野、医療介護それぞれの一流の専門家による共同研究成果。素晴らしい
- 世界全体をみてもユニークでエビデンスを正確にとる努力が払われている・・・と理解を得ました。
- 【社会貢献の観点からの評価】
- 超高齢社会で生きてゆくわれわれ自身が少しでも明るく生きていけるようにこの取り組みの学び方がコモンセンスとなるように頑張っていただきたいです。
- 認知症の対処として、貢献度は高い、だがAIっぽくない、アナログを集めただけのよう。
- ユマニチュード+AIによりケアの技術が向上することで多くの患者へ貢献できる。
- 個人の経験知を形式知におとす。人口の限界にAIを活用して焦点を絞るなど、実用化がしやすいターゲット先であると思う。
- すばらしい発表でした
- ほぼすべての技術が現場で使われており、実用化にきている。
- 問題の分析がどんどん洗練されていてすばらしい。4Kから8Kへと進んでいる感じがします。
- 【総合評価】
- 卒業ということで必要ないのかも知れませんが大変すばらしい取り組みを精力的に実践されていると思います。
- 認知症の方のQuality of Lifeの向上が実現していくために必要ないくつもの研究シーズ、ビジネスが含まれる取り組みだと思います。
- ヘルスケアの側の企業研究員なもので人工知能側の視点の認知症の話を期待したので少しミスマッチだったのかも、それでも学ぶことはあったがAOSは納得、いいものだと思った。
- AIっぽくない。コーパスの中身が全くわからない。発想がアナログ医療的。医学系学会そのまま持ってきた感、内輪感。すごくテーマはよい。聴衆の層を考えたほうがよいか。
- このセッションで行われていることが多くの医療看護現場へ普及するよう今後がんばってほしい。
- 高齢者ケアをどんな視点からアプローチすべきか企業サイドからは常に知りたいことです。ぜひ活用しやすい形式知を増やしてほしいと思う。
- 発表内容のような情報が共有されると自身の研究にも役立つのでぜひ結果をオープンにしてほしい。
- 是非継続してさらなる発展をしてほしい。
- 私が70歳になる前に日本中の認知症ケアの水準を格段に上げてほしいと思いました。
[S-3] コト・データベースによるモノ・コトづくり支援(サバイバル4回目)
- 【学術観点からの評価】
- 申し訳ありませんが判断がつきません
- ナカコウジ先生が面白かった
- 利研費やNEDOプロジェクトなど、採択され発展しているので信頼性がある
- これからという内容が多く(フォームを作った、構想を作ったなど)信頼性という点では低い
- 信頼性や妥当性の新たな指標がありそう
- 非常に評価の難しいテーマだと考えられるが、重要なテーマだと考えられるので、定量評価に関する取り組みを期待したい。特に、招待講演のプロベナンスの枠組みは利用できるのではないか
- 【社会貢献の観点からの評価】
- 電子化により「心」を失ったとの事は、確かに時代の流れとして事実として認識させられた。電子化とアナログをいかに融合させるか今後の目標として受け止めた
- プロベナンスのシステムがほしい
- 現場の課題に正しくフォーカスしており低コストでの実現を目指す方針はすばらしい
- 社会課題に直接取り組みながら工学研究としての再現性を高めている(civil engineering)
- 具体性がとぼしい印象。例えばという例自体がどう社会に使われていくかを想定していないように聞こえる。本当に現場のおじさん、困っている人が助かるのか!!??今のままだと研究の為の研究に見える
- “研究”を論述するかたちにも新たなスタイルがありそう
- 医療や製造現場と連携して実践的な取り組みを進めている。フィールドからのフィードバックを積極的に取り入れてほしい
- 【総合評価】
- 私の業界である建設業において現在問題(重要)となっている離職と高齢化、中堅社員の失望感の保有について看護の世界と同じと認識した所である。我々の業界において活用の術として展開できないものかと拝見していた
- JSAI2回目なので「近未来チャレンジ」の制度が何なのかよくわからなかった。このテーマの目的などが示されてないので評価できません アンケートするのなら説明していただけた方がよいかと思いました
- IoTが普及し今後「コト」の情報処理は増々重要となるだろう
- そのままやっていれば倒産するだけだから、企業体でやるならやればよい 企業ではできないことをやっているというのは言い訳。国費が投じられているのなら、今のままではやるべきではない。ただの自己満足にならないよう。最後に使われる姿をもう一度考えなおすべき
- 重要な議論の場なので、サバイバル楽しみにしています
- データをどのように支援につなげるのか?どのようにデータベースに収集するのか?共有するのか?自分の視野が広くなったと思う
- 現場サイドの取り組みから開発サイドからの取り組みまで幅広く扱われていて非常に興味深かった。反面、焦点がぼやけがちになっている印象があり、今後、新たなAIの機軸となるような方向へ発展されることを期待する。
[S-4] 世界価値観と国際マーケティング(サバイバル2回目)
- 【学術観点からの評価】
- 学術的には感じたが細かい記述や方法の言及が少なかった
- 【社会貢献の観点からの評価】
- 価値観マーケティングやデンマークのツーリズムなど実際の現場で使われている(検証されている)のは非常に実用化に期待できる
- 【総合評価】
- 前回に比べ多くの方が来場されており、関心の高さを感じました
- 価値観とマーケティングだけでもビジネスには大きなインパクト。国際マーケティングとなると問題がさらに難しくなるため大変だと思うが有意義な取り組みなので成功して欲しいプロジェクト
以上