演題番号 | 1H2-1 |
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題目 | 認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学 |
著者 | 大武 美保子 (東京大学) |
時間 | 6月20日(水) 11:20〜11:40 |
概要 | 日本は本格的な高齢化社会に突入しています。認知症者も年々増加し、2005年は約189万人、20年後には約292万人に達すると予測されています。一方で、2006年には介護保険制度が改正になり、今まで以上に介護予防に重点が置かれるようになりました。認知症予防回復支援サービスの開発は、今、正に求められています。人工知能学の分野では、ATRの安部らの研究グループにより、情報セラピーインタフェースが開発されています。 本チャレンジの目的は、認知症の予防と回復を支援する手法、技術、システム、プログラム等の、サービスを開発することと、これを通じて、ヒトがものごとを忘れるメカニズムを明らかにすることです。忘れることから逆に、覚えることや学ぶことにアプローチします。これは、学習の仕組みを異なる角度から明らかにしようと試みるものであり、人工知能への貢献が期待できます。 現在提案者が取り組んでいるのは、1) コミュニケーション支援により脳を活性化する認知症予防プログラムの開発、2) 主として身体運動情報を入力して駆動可能な脳シミュレータの開発、3) 神経疾患の認知神経モデルの構築です。特に1) のプログラムは、介護予防施設において予備的な成果を得ており、このチャレンジに終わりはありませんが、5年以内に一定の形のサービスを実現できると考えています。 このような取り組みは、介護や医療の現場において、これまでも多くの実践と、知見の蓄積があります。一方で、脳神経科学の進展と共に、認知症に関する基礎的な知見も年々生まれています。現場の知恵と、基礎研究の知識とをつなぐことで、これまで提案されてきた手法をより効果的にするための条件や、新しい手法を提案することができます。本チャレンジセッションを、脳科学の分野における認知症の研究者と、情報工学の分野で認知症者の支援システムを開発している研究者、技術者、介護や医療の現場で認知症予防や回復に取り組んでいる実践者の方々に来て頂いて、ディスカッションする場として活用したいと考えています。 2007年問題と言われるように、団塊の世代の退職者が急増するこれからの5年間は非常に重要で、認知症予防回復支援サービスは、実現すべき緊急の課題です。きわめてタイムリーな企画として、提案したいと思います。 |
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