基調講演・招待講演

基調講演

東日本大震災を受けて,基調講演を中止して,緊急パネル討論を開催します.
西田 豊明

  • タイトル:日本の人工知能25年 ―共感する人工知能をめざして―
  • 日時:2011年6月1日(水) 10:55-12:00(65分)
  • 講演者:西田 豊明(京都大学)
  • 概要:
    人工知能学会創立から1/4世紀が経った.本格的な人工知能研究が始まったとされる1956年のダートマス会議からは1/2世紀が過ぎた.いまや研究の基礎となる理論も精巧なものになり,研究に必要な計算資源もデータ資源もインタフェースもソフトウェア部品も充実し,人工知能研究の前提も手法も大きく変わった.人工知能研究は単なるアカデミックリサーチを超えて1997年のIBMのDeep Blueのチェス世界チャンピオンGarry Kasparovへの勝利や2011年のIBM のWatsonのJeopardy!クイズ王Ken Jennings とBrad Rutterへの勝利だけでなく,2010年のGoogleの自動運転カープロジェクトなど我々の日常生活にインパクトを与えはじめている.人工知能はいま我々にとってどのような意味を持つのか?我々はこれから人工知能とどう関わっていくのか?本講演では,これからの人工知能に研究において大きなテーマとなると考えられる「共感」に焦点をあてて,日本の人工知能研究の根底にあるものに迫りたい.

招待講演

瀬名 秀明
  • タイトル:なぜミクロスはスネ夫並みの知能なのか
    ~人工知能と物語のはるかな未来へ~
  • 日時:2011年6月2日(木) 13:00-14:30(90分)
  • 講演者:瀬名 秀明(作家)
  • 概要:
    2011年春にリメイク映画が公開された,藤子・F・不二雄の『大長編ドラえもん のび太と鉄人兵団』は,「ひとりの人間がロボットのユートピア社会を設計することは可能なのか」というハードな主題を持つ傑作漫画であった.この漫画には人工知能を搭載する多彩なロボットが登場するが,なかでも興味深いのはスネ夫が持つヒト型ホビーロボット〈ミクロス〉の設定である.原作漫画と1986年版のアニメ映画を比べてみてほしい.ドラえもんから人工知能を授かったミクロスは,原作では「人間並みの知能」と説明されるが,映画版では主人である「スネ夫並みの知能」と表現されている.このわずかな違いは,しかし現代において先端の人工知能SFを描く際に,重要なポイントのひとつとなり得る.
    「人間並みの知能」を考えることの可能性と限界はどこにあるか.この講演では,演者が2011年2月に発表したノベライズ長編『小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団』(小学館刊)のエピソードを皮切りに,古今の人工知能SFを参照しながら,人工知能研究の未来ヴィジョンと物語が持つ想像力の交差点を探ってゆく.知能と身体性,社会,未来,創造性などがキーワードとなるだろう.わかりやすく肩の凝らない講演にしますので,くつろいでお聴きいただければ幸いです.