06月06日(Thu) 09:00〜11:00 A会場(-国際会議場3F メインホール)
演題番号 | 3A1-NFC-03-2 |
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題目 | 認知症の人の情動理解基盤技術とコミュニケーション支援への応用 |
著者 | 竹林 洋一(静岡大学創造科学技術大学院) 上野 秀樹(静岡大学創造科学技術大学院) |
時間 | 06月06日(Thu) 09:35〜10:00 |
概要 | 認知症高齢者は300万人を超え,医療費や介護者負担のコストを抑えることが喫緊の課題である.認知症はいったん正常に発達した知的機能が持続的に低下し,社会生活に支障を来すようになった「状態」であり,記憶障がい,判断力の低下や理解力の低下などの症状があらわれる.これらの症状が認知症の人のそれぞれの持っている知識と周囲の人や環境とのインタラクションによって出てくるものが,興奮・不安・徘徊・妄想などの行動・心理症状(BPSD)である.BPSDは百人百様であるため,ケア現場では個別のコミュニケーションに疲弊し症状を悪化させることも少なくない.認知症の根源的な治療方法はまだなく,予防することは難しいが,早い段階に介入し適切な処置をとることによって認知症であっても豊かな本人本意の生活を送れることが分かってきた.このような知見から,ケアの質を高め,地域現場で支えるための仕組みが求められている. 共同提案者の上野は,「認知症の治療は精神科病院で」という常識を破り,精神科医師として訪問診療を立ち上げ先駆的な取り組みを実施してきた.また医師,看護師,介護士などの専門家との連携体制を構築済みであり,現場のノウハウや認知症の人の行動データを収集するための環境を整備している.BPSDのケアでは感情的なやり取りのみが記憶に残ることが多く,AIで培われた情動研究が応用できると考えられる.そこで,BPSDを問題行動として捉えるのではなく,正しい知識の下,症状を多角的に記述し表現することで,適切なコミュニケーションを行うための基盤技術を開発する.また,診断・ケアにおける暗黙知を形式知化することにで,世界に類をみない医療・介護現場の支援を実現できる. 専門分野での研究は活発化してきたが,専門家の知識の抽出や,知識表現,現場での利活用といったAIの観点からのアプローチは少ない.本研究課題の推進により,BPSDの情動理解,専門家知識表現モデルの設計を促進し,社会に真に役立つ知見を産み出すと考える. |
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