合同研究会2015年の各研究会の報告です.
合同研究会2015全体概要
概要
人工知能学会では,2011年より毎年秋に,慶応義塾大学日吉キャンパスの來往舎にて10程度の研究会が参加する合同研究会を行っています.本年(2015年)も同様に,発表/聴講無料として合同研究会2015を11月12日(木)~14日(土)に開催しました.今回は,三日間の中で11個の研究会と2つの人工知能学会30周年記念プレ企画において97件の研究発表が行われました.特に各研究会の中で,13件の招待講演やパネルディスカッションなどの大変魅力ある企画が行われ,参加者の方々からも人工知能研究分野の最新動向を知る上でも大変役に立ったと好評でした.
さらに,2014年度に研究会優秀賞を授賞した方々に,その研究内容をコンパクトにご講演頂く企画(研究会優秀賞記念講演)を連日午後の最初におこないました.時間の都合上,1件あたりの発表時間があまり長くとれなかったので,聴講者の方々からもっと詳しく発表を聞きたいという要望もありましたが,聴講者の方々がそれぞれの研究会でどんなことをやっているのかを知る良い機会になったようでした.
また昨年の倍以上の12の企業にスポンサーまたは展示企業となっていただきました.今回の初めての試みとして,3日間を通してお昼にコアタイムをもうけて来往舎のイベントテラスで企業展示を行ってもらいました.参加者の方々は,ポスターや商品の実物を見ながら,企業との情報交換に活用いただいたようです.また,中日(13日)にファカルティラウンジで行われた懇親会でのごあいさつを頂きました.
こうして合同研究会2015は,3日間で548名の参加登録をいただき,大盛況で終了しました.日程や時間帯によっては,各研究会の会場の収容人数を超えてしまい,立ち見をしていただくなどご不便をおかけしたことをお詫びいたします.ご発表者,議論に参加していただいた方,事務局をはじめとする運営者のみなさまに感謝いたします.
来年度の合同研究会2016は、他の学会30周年記念企画と連続開催しより盛り上げていくことを目指して参ります。ぜひ、皆様のご参加をお待ちしております。よろしくお願いいたします。
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企業展示
合同研究会2015では初めての試みとして,全日の12:00~15:00をコアタイムとして来往舎1階のイベントテラスにて、人工知能に関連する企業の方々の展示ブースを設けました.
本年度は,ゴールドスポンサーとして,株式会社NTTデータ数理システム様,株式会社近代科学社様,クックパッド株式会社様,株式会社構造計画研究所様,株式会社システムインフロンティア様,シナジーマーケティング株式会社様,日本電気株式会社様,株式会社ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン様,株式会社UBIC様,展示企業として,東芝 研究開発センター 知識メディアラボラトリー様,シルバースポンサーとして,株式会社 朝日新聞社 メディアラボ様,株式会社 ネクスト リッテルラボラトリー様にご協力いただきました.特にゴールドスポンサーおよび展示企業の皆様には,三日間にわたり企業展示を行っていただき,合同研究会参加者との交流をはかっていただきました.
研究会優秀賞記念講演
前回からの企画として,昨年度(2014年度)の研究会優秀賞受賞者に15分ずつご講演いただきました.3日間で13件のご講演をいただきました.異なる研究会の活動を互いに知ることができる合同研究会の特徴を活かしたこの企画に対しては,アンケート結果でも概ね好評を得られました.200名近く収容できるシンポジウムスペースが満員になってしまうほど,多くの方々に聴講いただきました.
懇親会
参加者の交流を深めるために,中日(13日)の夜18時から,会場の来往舎にあるファカルティラウンジにて下記の要領にて懇親会を実施いたしました.昨年の倍以上の70名以上の方々にご参加いただき,大変活発な交流が行われました.冒頭には,スポンサー企業からの企業紹介も行われ,スポンサー企業と研究者や学生間でのコミュニケーションが活発に行われました.
11月12日(木)
人工知能学会30周年記念 プレ企画 1 「人狼知能コンテスト」キックオフ
本キックオフイベントでは,集団の中にいるスパイを発見するコミ
第106回 知識ベースシステム研究会(SIG-KBS)
第106回知識ベースシステム研究会は,「知識表現・知識獲得とその応用」をテーマに,全部で7件の発表が行われました.発表は,ベイジアンネットワークの構造推定やペトリネットに基づく論理推論など基盤技術に関するものから,ソーシャルメディアや医療データを対象とした実データ分析まで多岐にわたり,そのそれぞれで質疑応答による意見交換が行われました.また100名程度の参加者があり,当該分野としての注目度や重要度を改めて感じることのできる会議となりました.
第43回 AIチャレンジ研究会 (SIG-Challenge)
AIチャレンジ研究会では,合同研究会の初日である 2015/11/12 (木) に「ロボット聴覚」特集と題して研究会を開催した.ロボット聴覚は,近年,実環境音響信号を扱う分野として様々展開が模索されており,ロボットに限らず,動物行動学への応用,UAVへの応用といった,12件(うち2件は,招待講演)の発表が行われた.予稿集は,こちらを参照されたい.招待講演として,東京工業大学の篠田浩一教授,京都大学の鹿島久嗣教授にご講演をいただいた.篠田教授は,深層学習をマルチモーダル情報処理に適用して世界の最先端でご活躍されており,ご自身のご研究に加えて深層学習についてわかりやすい解説を頂いた.また,鹿島教授からは,ビッグデータ解析に対して,クラウドソーシングを用いて取り組むアプローチをわかりやすく解説していただいた.いずれもロボット聴覚や実環境音響信号処理との関連が深くなっていくことが予想される分野でもあり,多くの聴講者を集めた.また,合同研究会に対するNHKからの取材も行われ,AIチャレンジ研究会の風景が記事の中で紹介された.合同研究の中で開催された企業展示についてもAIチャレンジ研究会と関連が深い,(株)ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン,(株)システムインフロンティアの2社が参加した.前者はロボット聴覚の中核技術であるマイクロホンアレイ処理のクラウドサービスに関して,また後者は,マイクロホンアレイのハードウェアを中心に展示を行い盛況であった.
第15回 ナチュラルコンピューティング研究会 (SIG-NAC)
「身体+美学+計算」のテーマで、自然計算と身体や美学との関連についてシンポジウムを行った。講演は、秋庭史典(名古屋大学 情報科学研究科)による、記譜法と身体についての美学、哲学的な観点からの論考、森村さよ(東京藝術大学 芸術情報センタ)による、形状記憶合金などの環境に応じて動く素材をもちいた「呼吸する建築」のコンセプトと実際の設計デザインの紹介、渡邊淳司(NTT コミュニケーション科学基礎研究所)による、身体的理解のための触覚メディアの役割、鈴木泰博(名古屋大学 情報科学研究科)による、アルゴリズムの観点からの身体と触覚の美学、鈴木理絵子(株 東京ファセテラピー)による、触感からのアルゴリズム逆生成とその一般化(振動触覚化)であった。また、講演後には振動触覚に関するデモンストレーション展示と触譜(触覚を記述する体系)を用いた触覚のデザインについて、制作者自らが触譜を展示してのディスカッションからなるワークショップを行った。参加者は研究者以外に美容関係者、マスコミ関係者など比較的さまざまな分野からの参加があり、ワークショップではさまざまな交流が行われ盛況であった(参加者は50名程度)。
人工知能学会30周年記念 プレ企画 2 「SF作家xAI研究者:未来を語る」座談会
日本SF作家クラブ 第18代会長 藤井太洋さんや第35回「日本SF大賞」を受賞された長谷敏司さんを始めとするSF作家の方々と人工知能研究者による対談を,会場参加者も交えて合同研究会のレセプションも兼ねて熱く行いました.
なお,この座談会での議論の内容は,人工知能学会誌7月号に記事として詳細を報告する予定です.
11月13日(金)
第26回 知識・技術・技能の伝承支援研究会 (SIG-KST)
知識・技術・技能の伝承支援研究会(SIG-KST)は13日(金)に開催され,7件の一般講演と知識・技術・技能の伝承支援に関する討論会が実施された.一般講演では,情報システム開発に関して3件の講演があり,仕様書分析と回答候補の自動抽出,提案書資産探索の効率化,作業項目依存関係の抽出について発表された.また,これらに近いテーマとして,組織内共有フォルダからの活動状況抽出に関する講演があった.その他,デッサン時の視線分析に基づく学習支援,計測とシミュレーションを用いた避難訓練分析,体験に基づくダイエットの分析と知見についての講演があり,全体として幅広いテーマで構成されたと言える.討論会では,研究会の活動実績と過去の討論からの知見について話題提供がなされた後,知識・技術・技能の伝承支援について活発な議論が行われた.
第37回 セマンティックウェブとオントロジー研究会 (SIG-SWO)
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SWO研究会は,「Linked Dataプラットフォーム」をテーマに,パネルディスカッションと7件の研究発表が行われ,60名を超える参加者がありました.オープンデータやLinked Dataの公開と活用が広がるにつれ,これらのデータを利用したアプリケーションを開発・提供するための基盤となるソフトウェアの開発が進みつつあります.パネルディスカッションでは,プラットフォーム開発に取り組まれている4名の研究者をお招きし,各プラットフォームや活用事例の紹介に続けて,データの取り込みや活用に関する課題を中心に議論が行われました.フロアからも,データの品質・信頼性や,データ利用を容易化する取り組み等に関する質問が寄せられ,有意義なセッションとなりました.また,研究発表のセッションでは,特集テーマであるLinked Dataプラットフォームに関連する研究発表4件の他,Wikipedia,自然言語処理,医用画像情報などに関する研究発表3件があり,活発な議論が行われました.本研究会が中心テーマとしているセマンティックウェブ技術に関するトップカンファレンスISWC(International Semantic Web Conference) が2016年10月17月~21日に神戸市で開催されます.今回の研究会にご参加頂きました皆様にお礼を申し上げると共に,今後も引き続き,本分野の活動へのご協力をお願い致します.
第11回 インタラクティブ情報アクセスと可視化マイニング研究会 (SIG-AM)
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第11回インタラクティブ情報アクセスと可視化マイニング研究会は,11/13(金)に開催されました.研究会の関心の広さを反映し,クラスタリング等の情報検索基礎技術,推薦システム,音声対話,可視化システム等,様々な分野から9件の一般発表が行われました.その中には「コミック工学」なる新しい技術分野を紹介し,参加を募る意欲的な発表もありました.加えて,国立情報学研究所の高須淳宏氏に「書誌情報抽出および統合のためのテキストマイニング」と題して招待講演を頂き,テキストマイニング研究の厳しさと奥深さを伝えていただきました.延べ数で90名を越える参加があり,活発な質疑応答が行われ,関連分野への関心,そこでのアクティビティの高さが伺える研究会となりました.
第3回 経営課題にAIを! ビジネス・インフォマティクス研究会 (SIG-BI)
経営課題にAIを! ビジネス・インフォマティクス研究会では,合同研究会の2日目である2015/11/13 (金)に研究会を開催しました.経営分野における人工知能研究の発展は目覚ましく,様々な経営課題に対して取り組みが進んでいます.人工知能研究が大きな成果をあげてきた製品開発等に留まらず,企業活動における中心的課題である経営戦略,経営組織,人事管理,労働市場,会計,財務,経営意思決定,産業集積,イノベーションマネジメント,マーケティング,企業情報システム,サプライチェーンマネジメント,知識マネジメント等といった,経営分野における先進的な取り組みを人工知能研究の観点から統合的に議論する場として,第3回の研究会を,この合同研究会で開催することができました.
招待講演2件を含む合計11件の発表が行われました.招待講演においては、日本アイ・ビー・エムの中野雅由氏から「IBM Watsonが開くコグニティブ・コンピューティングの世界」,東京証券取引所の保坂 豪氏から「東京証券取引所におけるHigh Frequency Tradingの分析」と題した招待講演をいただき,多数の参加者にお集まりいただきました.この場を借りて御礼申し上げます.第4回は,石垣島で3月19日に開催することが決まりました.多くの方のご参加をお待ちしています.(詳細はhttp://sig-bi.jpを御覧ください.)
11月14日(土)
第59回 分子生物情報研究会 (SIG-MBI)
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分子生物情報(SIG-MBI)研究会は、2015年11月14日(土)に「アメーバ型分子ロボットの現状と課題について」と題して、新学術領域研究「分子ロボティクス」アメーバ班との共催で研究会を開催した。分子ロボティクスは生体分子を用いて感覚と知能を備えた人工物の創成を目指している。生体分子を用いて、生物が有するような「知能」をいかにして実現するかが新学術領域の大きな研究テーマの一つとなっている。当日の研究会では、のべ30名ほどの参加者があり、このようなアメーバ型分子ロボットを実現するための技術について活発な議論が行われた。
はじめに、午前中のセッションにおいて、主査の小長谷明彦(東工大)が新学術領域「分子ロボティクス」の全体概要とアメーバ型分子ロボットの開発状況ならびに関連する3次元実時間シミュレータについて報告した。次に、遠藤政幸(京大)より、アメーバ型分子ロボットの「感覚」となるDNAオリガミを用いたDNAレセプターについて、小宮健(東工大)より、DNAレセプターからのシグナルを増幅する機構について報告して頂いた。風山祐輝(東大)からは、アメーバ型分子ロボットの外殻となる細胞サイズのリポソームを均質に生成するマイクロ流体デバイスについて報告があった。
午後のセッションでは、野村慎一郎(東北大)が、アメーバ型分子ロボットの「知能」に相当するDNA論理回路を用いた運動制御系の現状について報告した。続いて、角五彰(北大)はDNAを用いて分子モーター集団運動を制御することにより自己組織化現象を誘導できることを示した。また、平塚祐一(北陸先端大)は光応答性のカルシウム濃度変化により微小管ネットワークを人工筋肉のように収縮させられることを示した。最後に、安部聡(東工大)より細胞内で結晶化するタンパク質の応用について報告があった。
第9回 データ指向構成マイニングとシミュレーション研究会 (SIG-DOCMAS)
第9回データ指向構成マイニングとシミュレーション研究会(SIG-DOCMAS)は11月14日(土)に開催した.「社会的課題解決のためのシミュレーション・データマイニング」を特集テーマとした一般講演では,マルチエージェントシミュレーションにおける資源分配に関する基礎研究,電力需要予測や人的資源配分などの実問題に関する研究の他,金融市場予測,観光地/音楽推薦,社会ネットワーク分析などについての8件の発表と,それらに対する活発な議論が行われた.また,今回の研究会では東京大学の白山晋先生による「ディープラーニングによって人工知能は実現できるか」と題した招待講演を行った.本招待講演では,現在様々な分野で注目されているディープラーニングについて,その基礎から今後の可能性に至るまで1時間という短い時間であったが,非常に分かりやすく解説頂いた.今回の研究会では100名を超す事前参加登録があったため,午前中のセッションをより大きな中会議室に急遽移動したものの,終始ほぼ満席に近く,特に白山先生の招待講演は通路に追加で椅子を並べるほど盛況であった.
第75回 先進的学習科学と工学研究会 (SIG-ALST)
ALST研究会では4件の一般発表と7件のWIPPの発表が行われました.ALST研究会の一般発表では,参加者間での議論を重視するため,発表20分,質疑応答10分のように長い時間を割り当てています.一般発表では、多くの質問がなされ活発な議論が行われました.また,WIPPセッションでも,さまざまな領域からの大学生・大学院生が参加しました.
セッション前に各発表者がイントロダクションの説明を実施した後にポスターセッション形式での発表を行いました.20人ほどの参加者の列と1時間絶えることのない活発な議論が繰り広げられました.
第1回 ウェブサイエンス研究会 (SIG-websci)
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ウェブサイエンス研究会は、2015年11月14日に第1回目の研究会を開催しました。ウェブの存在、あるいは情報の流れそのものを新たな「自然現象」あるいは「生命現象」と捉えて、学際的な研究を促進することを目指す研究会の初の研究会開催となりました。招待講演にドミニク・チェン氏(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事/IT起業家)をお招きし、「インターネットを生命化する」と題した講演をいただきました。さらに、研究会の幹事である濱崎雅弘(産総研)、鳴海拓志(東京大学)、橋本康弘(筑波大学)らによる講演をはさみ、続くパネル討論を含めて活発な議論が交わされました。研究会の詳細なレポートをこちらに掲載しましたので、ぜひ御覧ください。多くの方にご参加いただきありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。