合同研究会2016:活動報告

合同研究会2016全体概要

概要

人工知能学会には,2016年12月現在,第1種~第3種まで合わせて22の研究会が組織されています.通常は,各研究会は独立に開催・運営されていますが,2011年に人工知能分野のさらなる活性化を図るため,これらの研究会が一堂に会して発表を行う場を設けることになり,それ以来,発表/聴講無料の「合同研究会」を毎年秋に慶応義塾大学日吉キャンパスの來往舎にて開催しています.本年(2016年)は,本学会30周年記念式典を会期中に開催することから,例年3日間の日程を4日間に拡大し,2016を11月9日(水)~12日(土)に開催しました.
今回は,これまでで最も多い15個の研究会から114件の研究発表が行われました.研究発表以外に独自の企画を企画している研究会も多く,計17件の招待講演やパネルディスカッションなどの魅力的な企画が行われ,立ち見の会場も見受けられるなど,参加者の方々からも好評を得ました.
また,2015年度に研究会優秀賞を授賞した方々に,その研究内容をわかりやすくご講演頂く企画(研究会優秀賞記念講演)を 9,10,12 の午後一に研究会横断のシングルトラックセッションとして開催しました.本年は,前年までの反省をうけ,聴講者に発表内容を伝えやすくしようという意図から,1件あたり20分と発表時間を長くとったため,質疑応答も活発に行われました.各研究会での年間を通じた最優秀講演を聴講することにより,研究会活動をあまりご存知でない参加者に人工知能学会の研究会活動のアピールできたとともに,各研究会で活躍されている研究者にとっても日ごろ触れる機会が少ない他研究会でのホットトピックや動向を知る良い機会になったようでした.
また昨年の1.5倍の18の企業にスポンサーとなっていただきました.また,うち 16 の企業には,来往舎 1F,2F およびイベントテラスで企業展示を行ってもらいました.参加者の方々には,ポスターや商品の実物を見ながら,企業との情報交換に活用いただいたようです.ただし,昨年から導入したコアタイム制は踏襲したり,イベントテラスの大スクリーンに過去の合同研究会や全国大会の写真を投影したりといった施策を行ったものの,コアタイムの時間に企業展示まで足を運ぶ方の数が期待したほどではなかったようした.これには,研究会優秀賞記念講演に時間を多く割いた影響で休憩時間が少なったといったことも影響していると考えられます.もう少しゆとりのあるスケジューリングを行うなど企業展示エリアを活性化する対策を行うことが今後の課題として挙げられます.
こうして合同研究会2016は,4日間で過去最大の814名の参加者を集め,大盛況で終了しました.事前登録者が,昨年度参加者数を超えてしまい,当日参加を中止したことをお詫びいたします.ご発表者,議論に参加していただいた方,事務局をはじめとする運営者のみなさまに感謝いたします.
来年度の合同研究会2017は、来往舎のキャパシティの限界を考慮して場所を変更すること,また企業展示と会場との動線をより適切に確保し企業展示を盛り上げることなど,本年度の反省を受け,さらに盛り上げていくことを目指して参ります.ぜひ、皆様のご参加をお待ちしております.今後ともどうぞよろしくお願いいたします.

写真:合同研究会2016看板写真:合同研究会2016 受付写真:合同研究会2016 受付2

企業展示

9, 10, 12日の12:00~15:00をコアタイムとして、人工知能に関連する企業の方々の展示ブースを設けました.合同研究会2016では,従来のゴールドスポンサー,シルバースポンサーに加えて,来往舎内に展示ブースを設置可能なプラチナスポンサーを導入したため,昨年はイベントテラスのみであった企業展示を,来往舎1階, 2階, およびイベントテラスに拡張しました.
本年度は,プラチナスポンサーとして,エヌビディア合同会社様、株式会社オプトホールディング様、日本アイ・ビー・エム(株)様、株式会社GDEPグループ様、株式会社NTTデータ数理システム様の5社、ゴールドスポンサーとして,近代科学社様、ヤフー株式会社様、東京ロボティクス株式会社様、株式会社オロ様、シナジーマーケティング株式会社様、(株)オーム社様、株式会社構造計画研究所様、株式会社サイバーエージェント様、パナソニック株式会社様、株式会社ネクスト様、株式会社アールティ様、株式会社 FRONTEO 様、行動情報科学研究所様の12社,シルバースポンサーとして、株式会社朝日新聞社(メディアラボ)様にご協力いただきました.
特にプラチナスポンサー,およびゴールドスポンサーの皆様には,4日間にわたり展示を行っていただき,合同研究会参加者との交流をはかっていただきました.

写真:合同研究会2015 企業展示その1写真:合同研究会2015 企業展示その2

研究会優秀賞記念講演

前回からの企画として,昨年度(2015年度)の研究会優秀賞受賞者に20分ずつご講演いただきました.9,10,12日の3日間で13件のご講演をいただきました.この企画は,異なる研究会の活動を互いに知ることができる特徴がある反面,十分な発表時間がとれずわかりにくいという指摘が昨年まではありました.今年度は,発表時間を15分から20分に増やしたこと,要旨集の冊子を印刷、配布したこともあり,活発な議論が行われました.また、アンケート結果でも概ね好評を得られました.200名収容できるシンポジウムスペースが満席になってしまうほど,多くの方々に聴講いただきました.

写真:合同研究会2015 優秀賞記念講演その1写真:合同研究会2015 優秀賞記念講演その2写真:合同研究会2015 優秀賞記念講演その3

11月9日(水)

第46回 AIチャレンジ研究会 (SIG-Challenge)

プログラムページへ行く
AIチャレンジ研究会は「ロボット聴覚およびその展開」特集のテーマで研究会を開催した.
ロボット聴覚の分野では,ロボット以外にも対象を広げており, 本年も動物行動学やUAVへの応用などの9件(うち招待講演1件)の発表が行われた.
招待講演では教師なし学習などで活躍されている立命館大学の谷口忠大准教授に音声データからの教師なし語彙学習についてのご講演をいただき, 多くの聴講者を集め大変な盛況であった. 一般講演でも各スロットの25分を存分に使った闊達な議論が行われ, 講演者・参加者一体の熱気溢れる研究会であった.

第23回 ナチュラルコンピューティング研究会 (SIG-NAC)

プログラムページへ行く
11月9日にSIGNAC研究会を「美容人工知能, 美とウェルビーイングをつくる人工知能」とテーマとして開催した。まず「情報と身体、コミュニケーション、ウェルビーイング」と題して渡邊淳司 先生(NTT コミュニケーション科学基礎研究所) から、近年、注目を浴びている幸福度やWell-being理論を援用したヒューマン・インタフェース領域の設計手法やその基盤となる先行研究や新たな取り組みについての紹介があり、次に鈴木泰博(名古屋大学情報文化学部)よる触覚相互作用を介した美容(=善い状態への誘導、ウェルビーイングは自ずから美容に含まれる)とした「美容人工知能」の提唱と感性情報学と人工知能による美容人工知能の方法論の紹介、最後に鈴木理絵子氏(株式会社 ファセテラピー)から触譜(触覚を記述するための譜面)をベースにした美容人工知能のエステサロンの現場での実践や、美容人工知能技術を用いたマルチメディアデータからの触質」抽出とマップ化(”触質マップ”)などの紹介(大統領選でのヒラリークリントンの演説の触質が中嶋美嘉の「雪の華」の触質に近いなど)があった。講演終了後は触譜家(触譜を用いてマッサージを作触する専門家)による作品展示ワークショップが行われた。参加者は人工知能の専門家のみならず、多数の美容関係者(エステティシャン、化粧品会社など)からの参加がみられた。

第2回 医用人工知能研究会(SIG-AIMED)

プログラムページへ行く
SIG-AIMEDの第2回研究会が合同研究会1日めの11月9日に開催された。事前登録が120名程度であったが,当日参加を含めて記名のあった参加者が186名あり,AI研究関係者だけでなく,製薬・医療機器を含めた医療関係の参加者がほとんどを占め,本分野の注目度を示している。研究会は以下の3部で構成した。
第1部においては,柏野氏から医工連携のあり方,橋爪氏からWatsonの活用事例,城戸氏からパーソナルゲノムによる疾患リスク予測,安木氏から脳動脈瘤発生予測,松尾氏が医学単語重み付け手法の提案,榊原氏から医師国家試験自動解答システムについての報告があり,本研究分野においてさまざまなテーマが研究されはじめており,今後の成果が期待できる。次に,招待講演では,IBM Watsonに関する医療応用がアメリカを中心にどのように展開されているかについての報告があった。武田氏によれば,Watsonの応用分野で医療への展開が最も成功しており,今後世界的な展開を考えている点を非常に明快に講演していただいた。第2部においては,大江氏から知識ベースを用いた問診システム,馬氏から電子カルテ情報を用いた患者検索システム,上原氏から深層学習による胸部X線画像の異常検知,木村氏からは医療情報システムにおいて活用可能なデータについての概論,津本氏からは退院時要約を用いた症例の類型化の報告があった。これらのプロジェクトに近い一般発表として,この後,中嶋氏によるヘルスケアデータの分析,野原氏にわるバングラデシュ遠隔診療実験のデータの解析について発表があった。
最後に,第3部のパネルでは,吉本氏がIoTのインダストリ分野での適用の現状について報告があり,今後IoTで集めたビックデータの解析を含めてAIへの期待が大きいが,技術者が絶対的に不足しており,発展の阻害要因となる可能性の指摘があった。竹林氏はIoTを用いた価値創造という立場からAI応用の可能性についての説明があった。依田氏からは,インドにおけるスマートフォンを使った医療サービスが紹介され,その中でSNSに対する自然言語処理とマイニングが医師の診断の効率を高めている例についての報告があった。
以上,本研究会の発表は多岐にわたっていたが,今後の発展の種となるテーマが多数報告され,今後の発展が期待される。

第29回 知識・技術・技能の伝承支援研究会 (SIG-KST)

プログラムページへ行く
知識・技術・技能の伝承支援研究会(SIG-KST)は9日(水)に開催され,3件の一般講演と1件の招待講演が実施されました.
一般講演では,電力自由化市場における調達計画の設計手法について,行動センシングデータから行動を記述する手法について,および,船舶のメンテナンスルールと運航性能モニタリングの関係に着目した経済価値定量化手法について,それぞれ発表がありました.また,招待講演では,問題解決と状況改善のためにシミュレーションを用いる「システムダイナミックス」について,日本における第一人者の高橋先生から初心者向けの紹介と解説をしていただきました.

11月10日(木)

第109回 知識ベースシステム研究会 (SIG-KBS)

プログラムページへ行く
第109回知識ベースシステム研究会は,「知識表現・知識獲得とその応用」をテーマに,全部で9件の発表が行われました.発表内容は多岐に渡り,理論的な内容(AIにおける社会的損失のモデル化,信頼性リンクの生成モデル,半教師付きクラスタリングのための類似性学習)から,新たな応用に向けた研究(外国人名の漢字変換システム,スライド共有サービスにおけるユーザの専門知識の抽出),近年発展が著しい深層学習の応用(自己符号化器の協調フィルタリングへの応用,分散表現のパターンマイニングへの応用,),実データの分析(帰納論理プログラミングのロボカップサッカーへの応用,人狼ゲームログの分析)と,非常に幅の広い分野・内容に関して講演が行われ,そのそれぞれにおいて活発な意見交換が行われました.また50名程度の参加者があり,当該分野としての注目度や重要度を改めて認識すると共に,分野のすそ野の広がりを感じることのできる会議となりました.

第40回 セマンティックウェブとオントロジー研究会 (SIG-SWO)

プログラムページへ行く
SWO研究会は,特別企画として「ISWC2016開催報告」を開催するとともに,セマンティックウェブとオントロジー,Linked Dataに関する6件の一般研究発表があり,活発な議論が行われました.
今年,セマンティックウェブ,Linked Data分野のトップカンファレンスであるInternational Semantic Web Conference 2016 (ISWC2016,2016年10月17日-21日,兵庫県神戸市)が,2004年に広島市で開催されて以来,12年ぶりの日本開催となりました.国内の研究コミュニティを中心に多くの方が研究発表や会議運営など様々な形で関わりました.そこで今回,日本におけるセマンティックウェブ研究の更なる発展に向けて,ISWC2016の開催を振り返る企画を開催し,ISWC2016 国内委員,及び参加者の方から,全体概要,主要セッションや受賞論文を中心にご報告いただきました.
SWO研究会はNHK放送技術研究所と連携し,今年8,9月に,NHKワールドが保有するコンテンツをLinked Dataの形式で構造化したデータを活用して,訪日外国人向けアプリケーションを開発するアイデアソン,ハッカソンを開催しました.今回,同研究所 浦川 真様による招待講演「構造化データを活用したインバウンドアプリケーションへのコンテンツ展開」では,データ構造化における知見やノウハウ,ISWC参加者による開発アプリの利用状況などについてお話いただきました.
今回の研究会にご参加いただきました皆様にお礼を申し上げると共に,今後も引き続き,本分野の活動へのご協力をお願い致します.

第14回 インタラクティブ情報アクセスと可視化マイニング研究会 (SIG-AM)

プログラムページへ行く
第14回インタラクティブ情報アクセスと可視化マイニング研究会は,11月10日(木)に開催されました.対話的情報検索,インタラクション技術,対話技術,推薦システム等,研究会の幅広い関心を反映した5件の一般発表があり,活発な質疑応答が行われました.後半では,チュートリアル企画「再訪:質問応答と文書要約」と題して,横浜国立大学の渋木英潔氏と東京工業大学の高村大也氏に,最近の進展が目覚ましいふたつの技術の「今」を解説いただきました.技術の面白さと同時に奥深さを伝えていただいたと感じています,50名近い参加者を迎え,充実した発表と討論の場となりました.

人工知能基本問題研究会 (SIG-FPAI)

プログラムページへ行く
人工知能基本問題研究会(SIG-FPAI)では、11月10日(木)-11日(金)の2日間にかけて、慶應義塾大学日吉キャンパス来往舎のシンポジウムスペースで、「確率的グラフィカルモデルの産業界への応用」を開催しました。今回は、数学協働プログラムの援助をうけていて、人工知能学会、産業技術総合研究所人工知能センター(AIRC)の主催となっています。ベイジアンネットワーク(BN)をはじめとして、大学や研究機関の成果をどうしたら実社会に出せるかというのがメインのテーマで、事例、ツール、実体験(ハンズオン)などが中心にして、非研究者も楽しめる内容としました。
初日は、本村陽一氏(AIRC)の基調講演を皮切りに、「Part 1: 人工知能の飛躍にむけて」では一般の人工知能の各分野でご活躍の方々、「Part 2: 確率的グラフィカルモデルの実践」では確率的グラフィカルモデルでご活躍の方々からお話を伺いました(いずれも、大学の研究者以外の方々、写真左は、佐藤泰介氏(東工大名誉教授、AIRC)の講演)。また、その後に行った講演者によるパネルディスカッション「Part 3: パネル討論: グラフィカルモデルは、データ分析の主役になりうるのか」は、非常に盛り上がりました。2日目は、鈴木譲氏(大阪大学)、廣瀬慧氏(九州大学)による、確率的グラフィカルモデルのハンズオンを行いました。学会の研究会でハンズオンというのは、あまり例がないように思われますが、熱心な方が多数参加されていました。
初日は、250名、2日目は100名の方々にご参加いただきました。会場のシンポジウムスペースは、最大200名の方を収容できる広さでしたが、満席に近い状態が長く続きました(写真 右)。開催に際してご協力いただいた、山田誠二(NII)会長、中臺一博(ホンダ)実行委員長、小林一郎 (お茶の水女子大) 副実行委員長、ならびに学会事務職員の皆様に感謝いたします。

11月11日(金)

第6回 経営課題にAIを!ビジネス・インフォマティクス研究会 (SIG-BI)

プログラムページへ行く
11月11日の午前に,合同研究会の一環として,「経営課題にAI を!」第6回研究会が,SIG-BI(ビジネス・インフォマティクス研究会)の主催で開催された.
「経営課題」は,人工知能の技術ではなく,それを適用する対象領域を意味する.したがって,この研究会では,さまざまな手法を利用して,当該問題に接近するという発表がおもなものとなる.
本研究会では,次の週の国際ワークショップを控えていることもあり,従前の研究会に比較すると,2つのセッションからなる小さな研究会となった.しかし,合同研究会の一環ということもあり,参加者の数は多く,短くとも有益な研究会となった.
発表プログラムは以下のとおりである.

  • 移住支援のための⼈⼯知能によるマッチングシステム
  • 起案者と出資者の相互作用を考慮したクラウドファンディングの研究
  • ⽔耕栽培マネージングシステムにおけるKinectを用いたロボットアームの直感的な操作と触覚センシングに関する手法
  • 学術⽂献データから構成される共著ネットワークを用いた有望な研究者の探索に関する研究
  • フォールトラインによるコンフリクトへの対応〜多様化する組織のマネジメントの⼀考察〜

次回の研究会は,人工知能学会全国大会のオーガナイズ・セッションとして開催予定である.

汎用人工知能研究会 (SIG-AGI) 「みんなでつくる認知アーキテクチャ」ハッカソン最終報告会

プログラムページへ行く
合同研究会中における当研究会の企画は、人工知能学会創立30周年記念事業「みんなで作る認知アーキテクチャ」の一環として、NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブとの共催にて実施されました成果発表会でした。本企画の目的は、急進展する人工知能が人類とともに歩む姿を模索するためには,技術自体が開示される意義が高いと考え、オープンな技術開発を促進することです。
成果発表に先立ち、その約一ヶ月前の10月8日〜10日の3日間にわたり慶應義塾大学日吉キャンパスにて、11チームの参加によるハッカソンを実施しました。このハッカソンのテーマは、ゲームエンジンを用いて構築した仮想環境と接続した認知アーキテクチャ、つまり環境や状況を認識し、効率的に意思決定し、行動を起こすと「認知=行動サイクル」を途切れずにおこなうエージェントの構築を行いました。上記のハッカソンに参加した11チーム中から4チームが合同研究会中の成果発表会に進出しました。
当日はまず、高橋恒一(理化学研究所)よりハッカソンの報告と選抜チームの紹介があり、続いて審査委員長の市瀬龍太郎(国立情報学研究所)より審査方法の説明がありました(図1)。その後、森本俊亨 (慶應義塾大学)、 大瀧貢(富士通)による「『危険回避』認知アーキテクチャ」、落合幸治、 都築拓(大阪大学)による「Free EnergyによるAttention Control」、野口裕貴 (慶應義塾大学)による「複数のゲームにおけるcontinual learning」、大澤 正彦 (慶應義塾大学)、 島田 大樹 (法政大学)、 芦原 佑太 (電気通信大学/クロスコンパス)、 倉重 宏樹 (電気通信大学)による「Accumulatorモデルに基づく行動抑制型認知アーキテクチャ」の発表(図2)が行われました。
なお、引き続く審査の結果、大澤正彦らによるチームに奨励賞の対象チームとして選抜され、同日午後の人工知能学会30周年記念式典(慶應義塾大学日吉キャンパス 藤原洋記念ホール )において、結果発表と授与式が行われました。当研究会が実現を目指す汎用人工知能においては、認知アーキテクチャは主要な技術であり、また本企画を通じて広くそれに対する理解が進んだと思います。

第27回 社会におけるAI (SIG-SAI)

プログラムページへ行く
第27回社会におけるAI研究会を2016年11月11日に開催しました.
今回は「社会を強くするAI,および一般」をテーマとして発表を募集した結果,12件のエントリーを頂き,その後の調整・キャンセルにより最終的に7件の発表を頂きました.また106名の参加登録を頂き,当日も多くの参加者様においでいただきました.
社会という観点からは大きく,交通,観光,購買のいずれかに関する発表が寄せられました.
手法という観点からは,ベイジアンネットワークやトピックモデルなど統計的機械学習の手法を用いて,行動からユーザを分類し,理解や介入を行おうとするものが半数程度,その他に,実際にどのようにデータを収集し活用するかというシステムデザインの話や実際の取組,データへのアノテーションなどに関するもの,が寄せられました.
「社会におけるAI」研究会,「社会を強くするAI」ということで,実装した結果を含めたサービスの実データを用いるものがほとんどで,タイトル通りに社会との関連性が良くあらわされたものになりました.各発表の質疑においても,産業界の方などから具体応用に関する様々なご意見・ご質問を頂きました.
一方で「社会を強くするAI」というテーマについては,もともと大きな・難しいものであることもあって,個々の発表からは理解いただくことが難しかったかもしれません.しかしながら全体を通してご覧頂くと,今回頂いたような発表が積み重なって,データに基づいてユーザの生活行動をより自然に収集出来るようになり,行動とその意味までが把握できるようになり,最終的に,何かの事象にあらかじめ備えたり,我々の活動をより快適にするなど,AI技術が社会を強くする可能性を感じていただけたのではないかと思います.
最後に発表者および参加者の皆様にはこの場をお借りしてお礼申し上げます.

11月12日(土)

第2回 ウェブサイエンス研究会(SIG-WEBSCI)

プログラムページへ行く
第2回ウェブサイエンス研究会は、人工知能学会合同研究会の一環として、2016年11月12日(土)に開催され、「共創」をテーマに4件の講演・発表を行った(1件発表辞退)。招待講演には京都大学のアダム・ヤトフト氏を迎えEvolution of Conceptsについてご講演いただいた。その他に、一般講演3件(ヴォロシティ株式会社青木氏、大阪大学の高橋氏、東京大学の池上氏)があり多面的で活発な意見が飛び交った。今後もウェブサイエンス研究会は、Intelligent Amplifier(IA)としての人工知能によってもたらされる世界に注目し、新しい価値観の創造に結びつけることを目指していきます。定期的にオープンセミナーも開催していますので、是非多くの方々と議論を交えていきたいと考えています。

第62回 分子生物情報研究会 (SIG-MBI)

プログラムページへ行く
分子生物情報研究会(SIG-MBI)は、2016年11月12日(土)に「分子ロボティクスとマテリアルインテリジェンス」と題し、新学術領域研究「分子ロボティクス」とナチュラルコンピューティング研究会(SIG-NAC)との共催で研究会を開催した。のべ34名の参加者があり、現在の半導体以外の「生体や物質」を用いたunconventional intelligence技術に関して活発な議論が交わされた。
はじめに、午前中のセッションでは、「分子ロボティクスとその知能」という副題のもとで、主査の小長谷明彦(東工大)より、感覚と知能を備えた分子ロボットの開発状況が報告された。次に、菅原研(東北学院大)より、環境との相互作用における分子スケールでの群ロボットとマクロスケールでの群ロボットの講演があった。鈴木泰博(名大)からは、環境の変動に追従するDNA計算を原理とした学習する抽象化学反応系の実験の進捗について、丸中愉太(東大)より、分子ロボット技術への応用を念頭とした神経ネットワーク様のグラフ経路を探索する群知能を用いた機械学習法について講演があった。
午後のセッションでは、「マテリアルインテリジェンス-ものに宿る知能」という副題のもとで5件の講演があった。はじめに、堀尾喜彦(東北大)より脳型コンピュータのハードウェアの開発動向が、次に、川又伊吹(東北大)より、計算を行うゲルオートマトンの実験と理論の最新成果について報告があった。引き続き、物理的計算能力を活用する「自然知能」に関する講演として、中嶋浩平(京大)からは、タコの足様のソフトマターを計算原理としたphysical reservoir computingについて、成瀬誠(NICT)からは、光の量子性を用いたフォトニック知能について、金成主(NIMS)からは、意思決定問題を解く「綱引き原理」とその発展系に関する講演があった。

第11回 データ指向構成マイニングとシミュレーション研究会 (SIG-DOCMAS)

プログラムページへ行く
第11回データ指向構成マイニングとシミュレーション研究会(SIG-DOCMAS)は11月12日(土)に開催した.「大規模データ・シミュレーションの社会応用を加速する技術と実践」をテーマとした一般公演では,ほぼ半数が交通に関連したモデリング&シミュレーションの研究であった.人流,車流に関するデータからのモデリング,都市規模でのシミュレーション環境の整備に関する研究開発について,発表が行われた.また,ブログやTwitter等のソーシャルデータを用いた分析を行う研究も複数発表された.これらを含む全9件の発表に対して,活発な議論が行われた.また,井原渉氏(AI TOKYO LAB & Co.)による「AI技術応用ビジネスの最前線」と題した招待講演を企画した.本招待講演は,技術を詳細に語るというより,AI技術のビジネス利用の実際を語るもので,AI技術の活用について氏の経験を基にした様々な事例を紹介,説明いただいた.今回の研究会は,のべ60名弱の方に参加いただき盛況であった.

第78回 先進的学習科学と工学研究会(SIG-ALST)

プログラムページへ行く
ALST研究会では,4件の一般発表と3件のWIPPの発表が行われました.一般発表では,大学院生や一般の研究者の方々の先進的かつ質の高い研究の発表が行われました.ALST研究会では,発表時間20分に対し,質疑応答の時間を10分間設け,活発な議論を促進しております.特に本年度は質疑応答の時間を終えてもまだ議論は終わらず,休み時間等に参加者同士でより深い議論をするさまが見られました.
WIPPセッションでは,本年度から学生のみならず一般の研究者からも,発展途上にある研究の募集を試みました.結果として,一般の研究者の方から学生の研究者の方が多くの質問やコメントを貰い,今後の研究の発展のための良いヒントを得るとともに,一般の研究者同士の質の高い議論を長時間実施することができました.参加者は16名でしたが,一時間では足りないと思えるほどに活発な議論が繰り広げられました.