合同研究会2017:活動報告

合同研究会2017全体概要

概要

人工知能学会には,2017年12月現在,第1種~第3種まで合わせて22の研究会が組織されています.通常は,各研究会は独立に開催・運営されていますが,2011年に人工知能分野のさらなる活性化を図るため,これらの研究会が一堂に会して発表を行う場を設けることになり,それ以来,発表/聴講無料の「合同研究会」を毎年秋に昨年の2016年まで慶應義塾大学日吉キャンパスの來往舎にて開催してきました.一方,昨今の人工知能ブームの影響で一昨年頃から参加者の数の大幅な増加により会場の収容人数の許容数を越えてしまうことが懸念されるようになりました.そのため,本年(2017年)は,慶應義塾大学の先生方および用度課の皆様に大変手厚いご支援を頂き,会場を慶應義塾大学矢上キャンパスに移すことができ,十分な収容人数を確保することができました.また,会場の確保と開催期間の設定に苦慮しつつ,例年3日間の日程を2日間に短縮せざるを得なくなり,会期を11月24日(金)~25日(土)として開催しました.
今回も,昨年と同じく,過去最多となる15個の研究会から99件の研究発表が行われました.研究発表以外に独自の企画を企画している研究会も多く,計17件の招待講演やパネルディスカッションなどの魅力的な企画が行われ,立ち見の会場も見受けられるなど,参加者の方々からも好評を得ました.また,本年は,開催期間が2日間と例年に比べて短縮されたため,昨年度実施した前年度の研究会優秀賞を受賞した方々の研究会優秀賞記念講演は開催せず,その代わりに全体企画として,人工知能研究を先導するお二人の方の招待講演を開催しました.
また昨年の17を上回る24の企業様にスポンサーとなっていただきました.また,昨年度の日吉キャンパス来徃舎において開催された合同研究会にて人の動線をうまく確保できなかった反省を踏まえて,本年度はスポンサーブースの設置場所を受付の周辺および休憩場所となっているカフェテリアにしました.これにより,昨年に比べて参加者の方々は多くスポンサーブースに足を運んでいただけたようであり,企業様の商品やデモなどを実際に見ながら,情報交換の場としてご活用いただけたようです.また,企業側からの学生リクルートへの配慮として,今回,参加者の名札のストラップの色を一般参加者と学生とで区別し,企業様から学生の方へのコンタクトを取りやすくなるよう配慮しました.
こうして合同研究会2017は,2日間で773名の参加者を迎え,昨年の4日間における814名の参加者と比して,週末となる土曜日を含めた開催期間にもかかわらず多くの参加者の方に来ていただき,大盛況で終了しました.
来年度の合同研究会2018は,本年度における経験を踏まえて,さらに盛り上げていくことを目指して参ります.ぜひ,皆様のご参加をお待ちしております.今後ともどうぞよろしくお願いいたします.

企業展示

24日,25日の両日にわたって人工知能に関連するゴールドスポンサー企業の方々の展示ブースを設け,合同研究会参加者との交流をはかっていただきました.合同研究会2017では,研究会参加者が参加しやすいよう,招待講演後の14:30-15:00を展示コアタイムとして設定した上で冠スポンサーによる茶菓提供を導入し,大変盛況な企業展示となりました.
本合同研究会のスポンサーとして, ゴールドスポンサー21社: アマゾンウェブサービスジャパン株式会社様, 株式会社 ALBERT 様, 株式会社 HPC テック様, 株式会社 NTT データ数理システム様, エヌビディア合同会社様, オーム社様, 株式会社クラウドワークス様, クリークアンドリバー社様, 株式会社クロスコンパス様, 株式会社システムインフロンティア様, 株式会社 GDEP アドバンス様, 株式会社センスタイムジャパン様, TIS 株式会社様, 東芝メモリ株式会社・東芝デバイス&ストレージ株式会社・東芝デジタルソリューションズ株式会社様, 株式会社バオバブ様, パナソニック株式会社様, ビジュアルテクノロジー株式会社様, 富士ゼロックス株式会社様, 株式会社 FRONTEO 様, 日本マイクロソフト株式会社様, 株式会社 LIFULL 様, シルバースポンサー5社: 株式会社朝日新聞社様, 株式会社オロ様, 株式会社 Gunosy 様, 株式会社システム計画研究所様, 株式会社 Faber Company 様, 茶菓スポンサー2社: エヌビディア合同会社様, 株式会社 Gunosy 様の皆様にご協力いただきました.

招待講演

今回から,新たな合同研究会全体企画として,開催日両日の午後先頭の時間帯に招待講演を実施しました.多くの参加者に関心をお持ちいただけるテーマをと考え,国立と民間企業の人工知能研究機関のキーパーソンお二人からお話を伺いました.いずれも人工知能研究の現在を活き活きと語っていただけたと思っています.300席という精一杯の座席数で臨みましたが,それでも満席に近い状況で,窮屈な思いをされた方もいらっしゃいました.運営側として申し訳なく思いつつ,それだけ多くの方にご参加いただけたことを本当に嬉しく思います.公演後の質疑も活発で,質疑終了後も講演者の周りには質問者の列ができていました.講演を快くお引き受けくださった講演者のお二人,参加していただいた皆さま全員に改めて感謝したいと思います.

11月24日(金)

第32回 知識・技術・技能の伝承支援研究会 (SIG-KST)

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知識・技術・技能の伝承支援研究会(SIG-KST)は24日(金)に開催され,4件の一般講演が実施されました.
一般講演では,安価な小型PCとマイコンを用いて中小製造業の現場で作業実績を自動収集する事例報告について,発電所における監視画像を対象とした深層学習による異常検知について,廃止措置中の原子炉を対象とした知識と技術の継承を目指したオントロジー構築について,および,眼鏡型と腕時計型のウェアラブル端末を用いた登山時のストック使用の影響に関する計測と分析について,それぞれ発表がありました.発表件数は少なかったですが,知識・技術・技能の伝承支援に関する多様な発表内容で構成され,当日の参加者数も多く,活発な議論が行われました.

第17回インタラクティブ情報アクセスと可視化マイニング研究会 (SIG-AM)

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第17回インタラクティブ情報アクセスと可視化マイニング研究会は,11月24日(金)の午後に開催されました.研究会の幅広い関心を反映して,アニメーション素材などマルチメディアデータベースへの知的検索技術,業務改善のための対話的インタラクション技術,情報可視化とインタラクション技術,ニューラルネットワークを利用した画像からの自然言語キャプッション生成の4件の一般発表があり,活発な質疑応答がかわされました.後半には,明治大学の中村聡史氏による招待講演「失敗から学ぶ情報対話技術」が行われました.数多くの「失敗」例に基づいて,ユーザインターフェースの設計指針について語られる,含蓄がありつつ大変楽しいお話しで,会場は大いに盛り上がりました.70名を超える参加者を迎え,充実した発表と討論の場となりました.

第112回 知識ベースシステム研究会 (SIG-KBS)

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第112回知識ベースシステム研究会は,昨年度に引き続き「知識表現・知識獲得とその応用」をテーマに,招待講演を含めて10件の発表が行われました.会議全体を通じ参加者は160名程度であり,改めて当該分野の勢いを感じることのできる会議となりました.
招待講演では,山梨大学大学院/JSTさきがけの山本泰生先生に「リソース指向型計算に基づくストリームデータマイニングの研究」というタイトルで,ストリームデータを対象としたパターンマイニングにおける新たなアプローチとその展開についてご講演頂きました.
また一般講演では,近年の技術的なトレンドを反映し,深層学習・表現学習の応用(自然言語,音楽,脳波,火山活動)に関する発表が多数行われました.その一方で,パターンマイニングに関するアルゴリズムの提案や,画像系列を用いた外観変化検知,人狼ゲームのログ分析に関する発表があり,多岐に渡る分野・技術に関して非常に活発に意見交換が行われる充実した議論の場となりました.

第3回 ウェブサイエンス研究会 (SIG-WEBSCI)

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人工知能学会合同研究会の一環として,2017 年 11 月 24 日(金)に第 3 回ウェブサイエンス研究会「自然現象としてのウェブ」が開催され,5 件発表(招待講演2件,一般講演1件,一般発表2件)が行われた.招待講演では,坪内祐樹氏(株式会社はてな)より「自然のごとく複雑化したウェブシステムの自律的運用に向けて」と高野雅典氏(株式会社サイバーエージェント)より「ソー シャルビッグデータ・オープンデータによる社会構造変化の発見」がそれぞれ発表され,実社会でのシステム運用と大規模データに関する活発な議論が交わされた.その他,一般講演として,三ヶ尻陽一氏(東京大学)から「自然主義心理学から見る自 然現象としての Web」についての発表が行われた.
これまで,ウェブサイエンス研究会は招待ベースの講演をメインに構成していたが,今回から新しい取り組みとして,一般発表を募り 2 件の発表があった.
発表の中では聴講者も含め,各々が異なる立場からウェブサイエンスについて活発な意見交換がされた.
ウェブサイエンス研究会では毎回テーマを変え,定期的にオープンセミナーを開催しており,今後も多くの研究者,エンジニアの方々と議論を交えて行く予定である.

第7回 汎用人工知能研究会 (SIG-AGI)

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第7回汎用人工知能研究会を11月24日に開催した.本研究会も第7回を数え,数年前は殆ど知られていなかった,汎用人工知能(Artificial General Intelligence)という研究分野は,若干の誤解を含みつつも,将来性のある技術分野として定着してきたと言えよう.
今回の研究会のプログラムは,7つの一般講演と1つの招待講演で構成されていた.当初は,80人が収容できる会場を使用する予定であったが,研究会の開始直前になり,会場が溢れてしまったため,急遽,別の会場に移動するという事態になる程,盛況な研究会であった.
研究会の前半は,深層学習,強化学習に関する技術や汎用人工知能研究とその応用のためのフレームワークに関して報告があった.また,招待講演として,東京大学・理研AIPの中川裕志氏より,「AGIへの道程:2017年版」というタイトルで,汎用人工知能の構成論から,その影響に至るまで幅広い講演があった.研究会の後半は,機械学習に関する技術的な観点からの報告や人工知能に関する数理的なモデルに関する報告などがあった.
当日,会場の変更で,ご迷惑をお掛けしたことをお詫びすると共に,参加して頂いた皆さまにお礼を申し上げます.

第29回 ナチュラルコンピューティング研究会 (SIG-NAC)

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「美容人工知能の展開」と題して昨年度にひきつづき美容人工知能についてとりあげた.招待講演のうち2件は触覚コミュニケーションに関するもので,萩原広道氏(作業療法士・京都大学 人間・環境学研究科)の「子どもとの関係性をほぐす ― 発達障害児への作業療法を手掛かりに ―」では,発達障害をもつ子どもへの作業療法場面を手掛かりにして,大人と子どもとの関係性がどのように創られるのかについて映像資料を交えながら紹介があった.
阪上雅昭教授 (京都大学 人間・環境学研究科)「群れのコミュニケーションと触覚性 : 群れをマッサージできるか」では自然界のさまざまな群れ現象についての紹介,特にイワシの群れに関する最新の研究成果の紹介と「群れをマッサージする」という新たな考え方の提唱がなされた.より美容・ウェルビーイングに近い話題として渡邊淳司氏 (日本電信電話(株)コミュニケーション科学基礎研究所 特別研究員)からは「ウェルビーイングの構成要因と触覚による介入について」としてウェルビーイングの定義から世界の研究動向や最近の取り組みについてアンケート形式のワークショップを交えた講演があった.
(株)ファセテラピー代表・鈴木理絵子氏からは「美容と美容人工知能の概念」として,広義の美容の概念の提唱,美(ウェル)容(ビーイング)としてウェル(美)の状態を実現するための人工知能の提案と最新の取り組みが紹介された.鈴木泰博(名古屋大学)は「美容人工知能とその展開」としてマッサージ(触覚)刺激への生体応答計測を踏まえた人工知能を提唱した.講演後,美容人工知能による触覚美容ワークショップとして音声の触質による触覚コンテンツの検索および触覚コンテンツの再生装置の体験ワークショップ,触譜家(マッサージ・触覚を記述する言語「触譜」によりマッサージを作触する専門家)による作品展示などを行った.

第105回 人工知能基本問題研究会 (SIG-FPAI)

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2017年度の合同研究会で,人工知能基本問題研究会では,産業技術総合研究所人工知能技術コンソーシアムと共催で「FPAIグランドチャレンジ: 人工知能の基本問題から,実社会の問題へ」という講演会を行った.当初,データハッカソンも含めたイベントを模索していたが,今回は,人工知能の社会応用に取り組んでいるグループで議論されてきている実社会問題に対する人工知能技術の課題を,チュートリアル形式で発表する形式になった.11月24日(金)の午前だけの短いイベントであったが,100名近い方が参加された.
本村陽一(産業技術総合研究所)「人工知能技術と社会問題 ~JSAI2018グランドチャレンジに向けて~」,原田奈弥(産業技術総合研究所)「ものづくりにおけるAI」,道本龍(博報堂DYホールディングス)「データ共有プラットフォームの社会実装への取り組み」,秋山誠 (経済産業省産業技術環境局)「Connected Industriesの実現に向けた研究開発におけるデータマネジメント」,松村直樹(野村総合研究所)「産総研人工知能技術コンソーシアム ユースケースWGの取り組み」,中台慎二(NEC)「AI間の交渉・協調・連携に関するコンテスト」,豊田俊文 (東急エージェンシー)「人工知能技術コンソーシアムにおける共有ツール」,対間悠一,浜島朋希(ソニーモバイルコミュニケーションズ),山下和也 (産総研)「Xperia Touch の技術紹介と人工知能技術との連携の実例について紹介」といった講演が行われた.最後に,本村陽一(産総研)氏が司会となって,「今後の進め方について」について議論された.
次回は,人工知能のフレーム問題に焦点をあてて,全国大会で続きの議論を行う予定である.

第4回 医用人工知能研究会 (SIG-AIMED)

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医用人工知能研究会(SIG-AIMED)は11月24日(金)に,第4回研究会が開催された.本研究会は2015年度に開催された第1回より,同時期に設立された日本医療情報学会 (JAMI) 課題研究会「医用知能情報学研究会」との合同開催を続けている.今回の合同研究会では13件の研究発表が行われ,定員160名の部屋がほぼ満席になるほど多くの方々に参加いただいた.
午前中のセッションでは,機械学習,深層学習,ニューラルネットワークなどの技術を,画像診断,フェノタイプ同定,疾患スクリーニング,ウイルスの流行予測,癌予測などといった様々な医療分野の課題に適用した研究の報告が行われた.これらの人工知能技術の医療応用は臨床の現場にからの期待も大きく,フロアからも多くの質疑が出され盛んな議論が行われた.
午後のセッションでは,生命科学データベース,診療ガイドラインからのルール抽出,議論の構造化による臨床勧告の選択,症例類型化のための分類知識の獲得,電子カルテデータの分析,健康イベントにおけるユーザ行動状態の解析など,様々な観点からの医療・ヘルスケアに関わる研究発表が行われた.これらの発表からも,本研究会が対象とする医療分野が非常に多くの研究領域と関わっていることが見て取れる.
なお本合同研究会の前日である11月23日(木)には,第37回医療情報学連合大会における共同企画として「医学医療におけるAI応用」というセッションが,人工知能学会・医療情報学会の両研究会の協力のもと行われた.そちらにも,大変多くの聴衆が参加しており,医療情報分野における人工知能への期待の大きさがうかがえる.本研究会では,その期待に添えるよう両分野の研究者が互いに意見を交わせる場を継続的に提供したいと考えている.医療分野に直接かかわっている方のみならず,様々なAI技術の応用先とてして医療分野に関心を持たれている方にも多く参加いただけると幸いである.

11月25日(土)

第81回 先進的学習科学と工学研究会 (SIG-ALST)

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ALST研究会では,3件の一般発表と5件のWIPPの発表が行われました.一般発表では,大学院留学生や一般の研究者の方々の先進的かつ挑戦的な,質の高い研究発表がありました.本研究会では,発表時間20分に対し質疑応答の時間を10分間設け,活発かつ深い議論が行われるよう配慮しています.質疑応答の時間を終えてもまだ議論が終わらず,休憩時間等に入っても参加者同士で活発に意見交換する様子が見られました.
WIPPセッションでは,学生の方々をを中心として,新鮮かつ挑戦的な研究の発表が行われました.発展途上ではあるもののいずれも将来有望な研究であり,一般の研究者の方から,今後の発展のための良いヒントとなる多くの質問やコメントを得ることができ,大変有益な時間となりました.参加者は38名でしたが,定められたセッション時間では足りないと思えるほどに活発な議論が繰り広げられました.

第64回 分子生物情報研究会 (SIG-MBI)

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分子生物情報研究会(SIG-MBI)は,2017年11月25日(土)に「分子ロボットの今後の展望について」と題し,計測自動制御学会「分子ロボティクス調査研究会」・JST「分子ロボット倫理研究会」の後援の下で研究会を開催した.午前,午後のセッションともほぼ満席となるほどの参加者があり,分子ロボットの最先端技術と創薬応用に向けた関連技術に関して活発な議論が交わされた.
午前のセッションでは,分子ロボティクス技術に関して8件の一般講演があった.はじめに,主査の小長谷明彦(東工大)より,2017年3月に終了した新学術領域研究「分子ロボティクス」の成果概要と後継プロジェクトである新学術「血糖値制御用分子ロボット」,NEDO「分子人工筋肉プロジェクト」,JST「分子ロボットELSIプロジェクト」について紹介があった.血糖値制御用分子ロボットに関しては,豊田太郎(東大)から人工脂質二重膜(リポソーム)の実験技術について,池田将(岐阜大)から環境により変形する分子系について,梅田民樹(神戸大学)からリポソームが壊れる条件の理論解析について報告があった.分子人工筋肉に関しては,上野豊(産総研)から生体分子の計算モデルについて,我妻竜三(東工大)から千万原子スケールの超分子モデリングについて,Arif Pramudwiatmoko(東工大)から生体分子のVR技術について,Gutmann Greg(東工大)からVRシミュレーションの報告があった.
午後のセッションでは,「分子ロボットの創薬応用への可能性について」と題する招待講演セッションを開催した.招待講演に先立ち,関根久NEDO「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」プロジェクトより来賓挨拶を頂いた.続いて,野口洋文(琉球大)より糖尿病膵島移植の現状と問題点,湯川博(名古屋大)よりin vivo蛍光イメージングについて,石原司(産総研)よりロボット創薬について,森島圭祐(阪大)より生命機械融合ウェットロボティクスについて,吉澤剛(阪大)より分子ロボティクスの倫理と社会に関する講演を頂いた.

第43回 セマンティックウェブとオントロジー研究会 (SIG-SWO)

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第43回セマンティックウェブとオントロジー(SWO)研究会は,特別企画として「推論チャレンジ(仮称)開催予告~解釈可能な人工知能を目指して~」を開催するとともに,「セマンティクスを用いた推論」および一般をテーマに,8件の一般研究発表がありました.また,約100名の方々にご参加いただき,活発な議論が行われました.
近年のDeep Learningを起爆剤とした人工知能(AI)技術への関心の高まりに伴い,AI技術が普及し様々な社会システムに埋め込まれるようになることが予想されます.そのような中にあって,AI技術を安全・安心に社会の中で活用していくためには,システムが正しく動作しているかの検証や品質保証のため,システムが判断に至った理由を説明できる(解釈可能性を有する)AI技術が必須となります.
このような背景のもと,SWO研究会では,人工知能技術による推論(推定)に関するチャレンジを開催し,認識の共有と必要な技術の開発・促進を図ることを目的としたコンテスト「推論チャレンジ(仮称)」(以下,「推論チャレンジ」)の開催を検討しています.
本特別企画では,「推論チャレンジ」の開催概要,および,想定しているタスクと合わせ,推論研究に関する技術動向,「セマンティクスを用いた推論」の具体事例として,シャーロック・ホームズの短編小説「白銀号事件」における犯人を推論により導く方法の紹介などを行いました.また,ミニワークショップを通して,シャーロック・ホームズの短編小説「赤毛組合」を題材として,推論に必要な知識の検討や,「推論チャレンジ」開催に向けた課題などについて,参加者の皆さんと意見交換を行いました.
今後,「推論チャレンジ」については,「http://challenge.knowledge-graph.jp/」にて,情報発信を行っていく予定です.
今回の研究会にご参加いただきました皆様にお礼を申し上げると共に,今後も引き続き,本分野の活動へのご協力をお願い致します.

第9回 コモンセンス知識と情動研究会 (SIG-CKE)

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本研究会は2006年10月の発足以来,自然知能の発達観察・モデル化を中心に,いじめ・発達障害・育児の悩み,成人のADHDやアスペルガー症候群,高齢認知症者の行動・心理症状,育児・介護現場の感情トラブル,虐待,うつ,高齢者の自己喪失感など多岐に亘るテーマで,2度の名称変更を経て計22回の研究会を実施してきました.幅広い分野の第一人者の研究者・実務家による招待講演を柱に,人間中心の視点で複雑で膨大なコモンセンスを計算機で扱う仕組みと実世界現場での価値創出に関する議論を重ねてきました.
今回は「自己の変容と人間の多重意識」をテーマに,総合内科医・尾藤誠司氏と認知症当事者・樋口直美氏の講演を中心に開催しました.「意識」は人類最後の謎とも評されますが,AI創始者の一人Minsky博士によれば,人間の「意識」は多種多様な概念を詰め込んだ「スーツケースワード」で,反応・注意・不安・内省・共感など多重の意味を持つ点が本質であり,数十億年に亘る生物の叡智を凝縮して脳の「バグ」を修正してきた進化の賜物と位置付けられます.
尾藤氏はJST・RISTEX人と情報のエコシステム「内省と対話によって変容し続ける自己に関するヘルスケアからの提案」プロジェクトのリーダーで,「不安を取り除く」医療の限界を指摘,内省と対話によって「不安を手なずける」自己意識の変容が重要と提言されました.樋口氏の講演は,認知症と診断を受けてから今日に至るまでの当事者の変容を内省し,手書きの絵で解説されたもので,認知症当事者が求める社会の変容を意識喚起させる内容でした.
最後の総合討論では,約40名の参加者全員が意識共有し,障害の有無によらずみんなが心豊かに暮らせる社会の在り方を熱く語り,記憶に残る盛会となりました.
研究会の模様は,登録会員限定で映像配信中です.http://sig-cke.jp より登録後,視聴いただけます.

第30回 社会とAI研究会 (SIG-SAI)

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第30回社会におけるAI研究会(SIG-SAI)を11月25日(土)に開催した.「社会を豊かにするAI」がテーマであった今回の研究会では,ゲーム,生産管理,医療,交通などの分野における人工知能技術の応用について,計5件の講演が行われた.「社会」のどの部分に着目するか,「豊か」の定義は何かという自由度の高いテーマ設定であったが,興味深い講演が大半であった.研究の中で用いられた手法は遺伝的アルゴリズム,決定木,確率的潜在意味解析,エージェントシミュレーションと多岐にわたるが,このアプローチの多様性こそが本研究会の特徴の1つであろう.
また応用を指向した研究会であるため当然といえば当然であるが,実際の企業の現場で得られた知見や現実世界で観測されたデータを用いたものが多く,社会を何らかの意味で豊かにした,あるいは今後豊かにするであろうことが根拠を持って示された研究が集まったことは喜ばしいことであった.
研究会には40名程度の方に参加いただき活発な議論が行われた.発表者・参加者の皆様に感謝したい.

第49回 AIチャレンジ研究会 (SIG-Challenge)

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49回を数えるAIチャレンジ研究会は,11月25日にロボット聴覚を中心テーマに開催された.招待講演2件,一般講演7件の発表があり,40名を超える参加者があった.
午前の招待講演ではバージニア工科大学のTomonari Furukawa教授から Non-Line-of-Sight Sound Source Localization技術とロボット・自動運転,視覚障害者のエコロケーション習得支援に関するご研究の紹介があった.また午後は,東京大学の猿渡洋教授から,ブラインド音源分離研究のこれまでの展開をその背景にある数理を通じてご講演頂いた.
一般講演では,音源定位・距離測定などの音計測技術,音響信号の解析,野鳥やアンドロイドなどを対象としたロボット聴覚技術の展開など,幅広いテーマの講演があった.

第13回 データ指向構成マイニングとシミュレーション研究会 (SIG-DOCMAS)

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第13回データ指向構成マイニングとシミュレーション研究会(SIG-DOCMAS)は11月25日(土)に開催した.「社会の分析・理解・課題解決のためのシミュレーション・データマイニング」をテーマとした一般講演では,車両や人の移動に関するモデル構築・シミュレーションや,複雑系の創発メカニズムの設計とシミュレーション,また大規模なグラフ系列のマイニング手法など,多様なトピックに関する研究発表が行われた.7件中,4件が企業関係者を著者に含むものであったこともあり,多様な参加者による活発な議論が行われた.
また,村上博之氏(トヨタ自動車株式会社 パートナーロボット部)による招待講演を企画した.本招待講演では,ヒトとモノ,ヒトとヒトとの共感を目指した,モビリティー技術や情報通信技術を融合したHuman-wareとHeart-wareの試みについて,氏が先導してきたプロジェクトを中心に研究・技術のビジョンについて講演いただいた.今回の研究会は,のべ80名の方々に参加いただき,盛況であった.