合同研究会2018全体概要
概要
人工知能学会には,2018年12月現在,第1種~第3種まで合わせて24の研究会が組織されています.通常は,各研究会は独立に開催・運営されていますが,2011年に人工知能分野のさらなる活性化を図るため,これらの研究会が一堂に会して発表を行う場を設けることになり,それ以来,発表/聴講無料の「合同研究会」を毎年秋に開催してきました.昨今の人工知能ブームの影響で一昨年頃から参加者数が大幅に増加しており,開催可能な会場の確保は大変に困難な状況ですが,慶應義塾大学の先生方および用度課の皆様に大変手厚いご支援を頂き,本年(2018年)も昨年同様,慶應義塾大学矢上キャンパスで開催することができました.会期は昨年同様2日間ですが,会場の都合で11月22日(木)~23日(金・祝日) と祝日を含む日程といたしました.
今回は,研究会数こそ14研究会と過去最多となった昨年から1研究会減りましたが,研究発表に関しては過去最多となる110件の口頭発表やポスター発表が行われました.また,研究発表以外に独自の企画をした研究会も多く,過去最多の計22件の招待講演やパネルディスカッションなど魅力的な企画が行われ,立ち見の会場も見受けられるなど参加者の方々からも好評を得ました.昨年に引き続き,合同企画としても人工知能研究を先導するお二人の方の招待講演を開催し,両日とも大変に多くの方々に参加いただきました.
また,開催に当たって21社の企業様にスポンサーとしてご支援をいただきました.企業展示と広告掲載特典のあるゴールドスポンサー16社,広告掲載特典のシルバースポンサー5社にご支援いただき,このうち2社には茶菓提供いただく冠スポンサーにもなっていただきました.ご支援をいただいたスポンサー様に厚くお礼を申し上げます.
こうして合同研究会2018は,2日間で801名の参加者を迎え,祝日を開催期間に含んだにもかかわらず,昨年の773名より多くの参加者の方に来ていただき,大盛況で終了しました.
来年度の合同研究会2019は,本年度における経験を踏まえて,さらに盛り上げていくことを目指して参ります.ぜひ,皆様のご参加をお待ちしております.今後ともどうぞよろしくお願いいたします.
企業展示
22日,23日の両日にわたって人工知能に関連するゴールドスポンサー企業の方々の展示ブースを設け,合同研究会参加者との交流を図っていただきました.合同研究会2018では,招待講演後の休憩時間を展示コアタイムとして設定するだけでなく,冠スポンサーによる茶菓提供を行うことで,大変盛況な企業展示となりました.
本合同研究会のスポンサーとして, ゴールドスポンサー16社:アイシス・エーアイ株式会社様,アプライド株式会社様,株式会社 HPC テック様,株式会社 NTT データ数理システム様,株式会社 クリーク・アンド・リバー社様,株式会社 システムインフロンティア様,株式会社 システム計画研究所様,株式会社 GDEP アドバンス様,株式会社 センスタイム ジャパン様,ソフトバンク株式会社様,チームラボ株式会社様,株式会社 東芝様,東芝メモリ株式会社様,ビジュアルテクノロジー株式会社様,富士ゼロックス株式会社様,株式会社 UEI様,シルバースポンサー5社:株式会社 オロ様,株式会社 サン・フレア様,株式会社 とめ研究所, パナソニック株式会社様,株式会社 Faber Company様,茶菓スポンサー2社:株式会社 サン・フレア様,パナソニック株式会社様の皆様にご協力いただきました.
招待講演
昨年より合同研究会の全体企画として,開催日両日の午後早い時間帯に招待講演を実施しています.本年は初日に,株式会社Preferred Networksの代表取締役副社長である岡野原大輔氏に「深層学習の現在とこれから」と題して,近年の人工知能発展の技術要因となった深層学習のさまざまな側面についてご講演いただきました.2日目は,独立行政法人日本学術振興会顧問を務められる安西祐一郎氏に「日本の人工知能技術戦術:現状と展望」と題し,幕末に並ぶ一大変革期とも例えられる現代日本の人工知能のあり方についてご講演いただきました.いずれの講演も立ち見が出るほどの参加者で熱気にあふれ,質疑応答も活発なものとなりました.講演を快くお引き受けくださったお二人の講演者と参加していただいた皆様に感謝いたします.
11月22日(木)
第6回 医用人工知能研究会研究会 (SIG-AIMED)
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第6回医用人工知能研究会はこれまでと同様,医療情報学会医用知能情報学研究会と合同で開催しました.今回は特集テーマは設けず,医学医療における人工知能要素技術の研究と応用に関する研究を募集しました.結果として,3件は自然言語処理,8件は機械学習・データマイニングに関する研究で,そのうち5件は深層学習を用いた医用画像理解に関する研究でした.医用画像理解は,単にCT, MRIの解析ではなく,眼科領域での画像,マンモグラフィに関する解析が報告され,深層学習の応用が広がりを見せはじめています.また,深層学習の医療応用の可能性について積極的な討論がありました.招待講演は,このような発表とは異なる領域の話題が必要と考えて,ライフサイエンス統合データベースセンターの藤原 豊史氏にお願いし,「希少疾患診断支援システムPubCaseFinderを支えるオントロジーとデータシェアリング」という演題で,疾患オントロジー,ゲノムオントロジーによる診療支援に関する研究の現状とその成果についての報告がありました.その中で,オントロジーのメンテナンス・充実という点で,機械学習の持ちうる可能性について示唆に富む議論がフロアと演者とでなされました.午前中150名以上,午後は100名程度の参加があり,登録全体で195名の参加があり,これまでの2回と同様盛況でした.
「社会における AI」研究会 第33回研究会 (SIG-SAI)
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「社会におけるAI研究会」第33回は“社会にとけこむAI”をテーマとして,招待講演1件,一般講演7件の計8件で実施しました.
開催テーマを鑑み,招待講演は川村 秀憲 教授(北海道大学大学院情報科学研究科 情報理工学専攻 複合情報工学講座 調和系工学研究室)に「社会に調和するAI」をタイトルとしてご登壇いただきました.
講演では,俳句を生成するAIの研究をはじめ,自動運転システムで譲り合いながらRCカーを走行させる研究,競輪の着番予想および予測記事自動生成を行わせる研究と実サービス,ファッション雑誌を用いた感性語の学習と推定を行わせる研究と実サービス,など,AI関連技術に関する高度な研究と,それらの成果を社会に展開する例が多数紹介されました.個々の事例が単体でも招待講演を構成できる厚みのあるものであったため,聴衆の関心も非常に高く,立ち見も出る盛況ぶりとなりました.
一般講演は,ユーザモデリングに関するものが多く報告され,アプローチ・手法としては行動データやアンケートデータを用い,トピックモデルを用いたクラスタリングとベイジアンネットワークを組み合わせて,課題に取り組むものが多く示されました.ポイントは元のデータが実際の購買行動や,サービス施設で収集されたもので,数量も数千件単位であるなど,社会との関わりが非常に大きい点が挙げられます.特に,虐待通報データを用いた分析は有用性・公益性も高くフロアからの反応も大きいものでした.
他にも,自動車の走行データから行動予測を行うもの,順序づけのアルゴリズムについて分析したもの,人狼ゲームにおける会話データについて分析したもの,議会と行政の関係性を分析しようとするもの,など,「社会におけるAI」に合致した複数の発表がおこなわれ,今回も有意義な会となりました.
第31回SIGNAC研究会 「Tactileology =触覚+アルゴリズム」の展開 (SIG-NAC)
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SIGNAC第31回研究会を11月22日に開催しました.まず主査の鈴木が「自然計算としてのあたらしい触覚学の創成~人間計算機の構築に向けてと題した話題提供を行い,自然計算の発展としての「あたらしい触覚学」を紹介し,触覚人工知能のデモンストレーション(触覚入力・触覚出力による人工知能系)や関連研究の紹介が行われました(触覚ロボット,看護・ヘルスケアへの応用,触覚家電の研究開発,基礎数理(企業や組織の触覚学など),アート・デザインへの応用など).
この「あたらしい触覚学」での“基本言語”に相当する“触譜(楽譜の記法をもちいた時間変化する触覚の記述言語)”について,触譜の発明者である鈴木理絵子氏(株 ファセテラピー代表)が「触譜入門」と題した招待講演を行い,触譜の着想から触譜の提案そして発展の現状について紹介がなされました.
さらに,鈴木と共同して触譜を用いた作品制作を試みている石橋義正氏(映像作家・映画監督:「オー!マイキー」(世界5カ国で放映,ベルリン国際映画祭正式招待など),「ミロクローゼ(山田孝之主演)モントリオール・ファンタジア映画祭正式招待・最優秀監督賞ほか受賞多数」,ニューヨーク現代美術館MoMAやテートモダン(ロンドン)でのパフォーマンスや展示,猪熊弦一郎現代美術館(個展)など)が「いいかげんな話」と題する招待講演を行い,世界的に高く評価されている独創的な作品群について,たとえば「オー!マイキー」と日本文化(能)との関連など,作品の背景に流れている日本文化・思想について解説がなされました.また最近に着想した「シンギュラリティの独自解釈とその思想的な視座」からのパラダイムが提示されました.
当初はその後に石橋氏や鈴木(理)を交えてパネルディスカッションを行う予定でしたが,予定を変更して業務で触譜を用いている実践家2名から,触譜をもちいたデザインについて合理的・体系的な方法の紹介が行われました.その後,その他の実践家5名程度による触譜デザインについての展示と説明がポスター発表形式で行われました.
最後に「これまで合同研究会で行ってきた“触譜による自然計算とその応用”は今回でひとまず終了」し,今後は日本触覚学会(2018年設立)へ活動の場を移すことが告知されました.
第10回汎用人工知能研究会 (SIG-AGI)
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第10回汎用人工知能研究会が11月22日に開催されました.
今回の研究会のプログラムは,5つの一般講演と1つの招待講演からなります.
研究会の前半は,脳に学ぶAIのためのサーベイと機能についての仮説提案,強化学習に関する手法や認知アーキテクチャACT-Rの仮想世界への適用に関して報告がありました.
招待講演として,立命館大学・パナソニックの谷口忠大氏より「記号創発ロボティクスによる汎用人工知能への挑戦」というタイトルで講演がありました(内容については森山和道氏による紹介記事https://bit.ly/2DQ7nFUを参照されたい).
研究会の後半は,模倣学習の実験とシンボルグラウンディング問題についての議論,およびサイエンスフィクションと人工知能などの技術の関係についての発表とパネル討論がありました(後者は科学技術振興機構(JST)のプロジェクト「想像力のアップデート:人工知能のデザインフィクション」のお披露目でもある).
第4回ウェブサイエンス研究会 (SIG-WebSci)
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人工知能学会合同研究会の一環として,2018年11月22日(木)に第4回ウェブサイエンス研究会「ソーシャルコンピューティング」が開催され,8件発表(招待講演1件,スポンサーセッション1件,一般発表6件)が行われました.佐野幸恵氏(筑波大学)よる「ウェブにおける集合的感情の周期と記憶」と題した招待講演では,10年間のブログデータへの感情分析から季節や災害によって集合的感情がどのように変化するかの分析結果が報告されました.ウェブサイエンスの1つのテーマは,ウェブを脳や生態系のメタファーとして理解することです.それに関連する発表として「コミュニケーションデータにおける情報の伝搬」に関する研究発表や,「ミーム間には現実の生態系にみられるような関係性があるのか」といったテーマに関する研究発表が行われました.発表中は聴講者も含め,各々が異なる立場からの活発な意見交換がなされていました.ウェブサイエンス研究会は合同研究会だけでなく,オープンセミナーという形で講演者を数名お招きし,聴講者も交えて深いディスカッションを行うような場をつくっています.今後も多くの研究者,エンジニア,学生の方々と議論を交えて行く予定です.
市民共創知シンポジウム(SIG-CCI Symposium)「市民と研究者が共創する場を創る」(SIG-CCI)
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市民共創知シンポジウムは11月22日午後に開催され,「市民と研究者が共創する場を創る」をテーマに4件の招待講演が実施されました.過去4回の研究会はすべて開催地市民が同じ壇上で発表し対話する形式でしたが,研究者のみの講演によって構成された今回は「シンポジウム」としての開催となりました.國藤進教授による基調講演「W型問題解決学と先端技術で様々な問題を解決する」では,ミニ移動大学での写真KJ法など,地域住民を巻き込んだW型問題解決の実践例が紹介されました.伊藤孝行教授による招待講演「市民共創知研究会の構想」では,市民共創知研究会の基本構想として,地域循環型の研究会とソーシャルメディア「みらいらぼ」が相補的に結合し,市民共創プロジェクトによる共創知が横展開していく展望が示されました.堀田竜士氏による招待講演「企業と地域の共創」では,第1回市民共創知研究会を開催した岩手県遠野市での富士ゼロックスのCSV活動事例をはじめとして,第4回研究会までの参加・共創の傾向分析が報告されました.白松俊准教授による招待講演「市民共創の実践例と共創の担い手探索システムの検討」では,各地のシビックテック活動や市民共創知研究会での共創プロジェクトの継続性を維持するために,共創の担い手を探索する手法が検討されました.各招待講演後には,扱う地域課題のスケールや,継続的に共創するための参加者のモチベーション維持など,共創の場を創る意義や難しさについて活発な議論が行われました.
11月23日(金)
第84回先進的学習科学と工学研究会 (SIG-ALST)
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ALST研究会では,3件の一般発表と5件のWIPPの発表が行われました.一般発表では,大学院留学生を含む学生3名の先進的かつ挑戦的で,本研究会の水準を上回る研究発表が行われました.本研究会では,発表時間20分に対し質疑応答の時間を10分間設け,活発かつ深い議論が行われるよう配慮しています.質疑応答の時間を終えてもまだ議論が終わらず,休憩時間等に入っても参加者同士で活発に意見交換する様子や,各研究の面白さについて討論している様子が見られました.
WIPPセッションでは,学生の方々の発展途上ではあるものの,優れた着眼点で進められている研究がポスター形式で発表され,将来有望な研究として会場から高く評価されました.また,今後の発展のための良いヒントとなる多くの質問やコメントを得ることができ,発表者の学生の方々にとっても大変有益な時間となったようです.参加者は29名でしたが,定められたセッション時間が終了してもなお質疑が行われており,非常に活発な議論が繰り広げられました.
その後の,専門委員会では実に2時間にもわたる各研究の講評が行われ,いずれも優れた研究であることを確認するとともに,各研究者の視点からどのように優れているかについて,またどの点を改善するかについて熱心な議論が行われました.
第67回人工知能学会分子生物情報研究会 (SIG-MBI)
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分子生物情報研究会(SIG-MBI)は,2018年11月23日(金)に「分子ロボティクスの医薬応用への可能性を探る」と題し,計測自動制御学会「分子ロボティクス調査研究会」・JST「分子ロボット倫理研究会」の後援の下で研究会を開催しました.祝日にも関わらずのべ45名の参加者があり,分子ロボットの最先端技術と医薬応用に向けた関連技術に関して活発な議論が交わされました.
午前のセッションでは,分子ロボティクス技術に関して1件の招待講演と3件の一般講演を行いました.はじめに,主査の小長谷明彦(東工大)より,「分子ロボットを“Beyond the Pill”の視点から考える」と題して,分子ロボット創薬のビジョンと現況ならびに倫理問題の重要性について紹介がありました.次に,日本の膵島移植の第一人者である野口洋文先生(写真)による「膵島移植・再生療法の現状と展望」と題する招待講演があり,膵島移植に関する日米の違い,iPS細胞を用いた膵島細胞研究の現状報告に加え,分子ロボット技術を用いた分子膵島ロボットへの期待を頂きました.引き続き,東京農工大学の柳澤実穂よりDNAナノテクノロジーを用いたリポソーム内膜の力学的補強法について,岐阜大学の池田将より環境に応答して構造変化するペプチドについて,東北大学の川又生吹より筒状DNAオリガミ構造のリポソームへの局在化について講演を頂きました.
午後のセッションでは,神戸大学の梅田民樹より複数の脂質袋状二分子膜(ベクシル)の凝集体の数理モデルについて,東工大の我妻竜三よりDNAオリガミの全原子シミュレーションについて,東工大のGreg Gutmannより生体分子の原子モデリングを表示可能なVRシミュレーションについて,東工大のArif Pramudwiatmokoより生体分子をVR上で触れるためのインターフェースについて講演を頂きました.最後に,名古屋大の湯川博より生体内動態の観測に有用な無毒性の量子ドットについて講演を頂きました.
第11回コモンセンス知識と情動研究会 (SIG-CKE)
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本研究会は2006年に発足し,自然知能(コモンセンス)のモデル化に基づく人工知能研究の深化発展を狙い,認知症を筆頭に社会課題解決に役立つAI研究を推進しています.今回の合同研究会では「当事者のからだとこころのインタラクションモデル」をテーマに,認知症当事者の佐藤雅彦氏と山田真由美氏,元うつ病の米倉まな氏を軸に,7件の講演が実施されました.前半は,「当事者のからだとこころ」と位置づけ,認知症と言っても千差万別で,それぞれのからだとこころの困りごとは多種多様であることが実体験に基づいて説明されました.また,うつの体験から,自身のからだとこころの状態を理解できることが改善につながったことが示されました.当事者のリアルな声は説得力があり,このような当事者の語る体験や困りごとの本質を,自然知能のモデル化を進めることによって探っていくことが重要とのコンセンサスが得られました.後半は,「多様な当事者のための生活環境インタラクションデザイン」という観点から,当事者のからだとこころのモデル化に基づく生活支援や評価するための基盤についての報告がありました.また,認知症の初期によくみられるもの盗られ妄想を例にあげ,精神症状と呼ばれる状態は正常な心の働きの結果であるというユニークなモデルも提案されました.安西祐一郎氏の基調講演でも触れられていましたが,DARPAがAIに「常識」を教える「Machine Common Sense」プロジェクトをスタートさせるなど,AI研究はコモンセンスに基づく人間支援にシフトしつつあり,コモンセンスAIを社会課題解決に活用する本研究会の意義重要性と期待の高まりを実感しました.全体で50名の参加者があり,異分野の研究者や多職種の実務家が集い,活発な議論が行われました.発表者・聴講者の皆さまには御礼申し上げるとともに,今後とも研究会活動への積極的な参画をお願いいたします.尚,研究会の模様は,登録会員限定で映像配信中です.http://sig-cke.jpより登録後,視聴いただけます.
第20回インタラクティブ情報アクセスと可視化マイニング研究会 (SIG-AM)
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第20回インタラクティブ情報アクセスと可視化マイニング研究会は,11月23日(金)の午前午後で開催されました.
午前はまず,本研究会幹事・滋賀県立大学の砂山渡氏のチュートリアル「データ分析の基本とTETDMの活用法」が行われ,データ分析の基本プロセスにおいて,人間がなすべき作業と,それを支援するTETDMの活用方法について,具体例と合わせて話がありました.
その後,午前午後に渡って,研究会の幅広い関心を反映して,為替の動向情報獲得のためのニュース記事の分類と情報抽出,テキスト分類のための深層学習ネットワークの分類パターンの解釈支援,使用食材や食材の使用順序と人気レシピとの関係の分析,訪問履歴からの観光スポットの訪問パターンの可視化,論文テキストを用いた論文自動評価に向けた指標の提案,について,5件の一般発表があり,情報獲得,情報理解のためのインタフェース,情報分析に関わる本研究会の核となるテーマについて,活発で意義のある質疑応答がかわされました.
午後後半には2件の招待講演が行われました.ヤフー株式会社の野本昌子氏による「SIGIR2018参加報告」では,最近の情報検索研究の動向が手際よく紹介され,情報検索の分野においても,深層学習が優勢になってきていることや,ユーザの行動に関わる部分の研究が増えていることが報告されました.また,東京大学の中山英樹氏による「マルチモーダル深層学習の発展」では,多くのメディアにおける深層学習技術にある程度の定番技術が確立してきたこと,それを組み合わせることで様々な展開が図れるであろうことなど,深層学習技術の現状と展望について,示唆に富むお話しを伺えました.
合同研究会企画招待講演を挟んで丸一日の長丁場でしたが,延べ113名の参加者を迎え,特に午前中は席につけない方が出るほどの盛況で,会場は大いに盛り上がり,充実した発表と討論の場となりました.合同研究会の安西先生の招待講演の中でも,データサイエンティストが絶対的に不足していることと,その育成が急務であることが示され,本研究会が対象とする情報アクセスやマイニングの需要と意義は,今後ますます大きくなるものと考えています.
第15回データ指向構成マイニングとシミュレーション研究会 (SIG-DOCMAS)
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第15回データ指向構成マイニングとシミュレーション研究会(SIG-DOCMAS)は,11月23日(金)に開催されました.「社会の複雑化に対処するためのシミュレーション・データマイニング」および一般というテーマ設定に対して,2件の発表取り下げを経て,最終的な発表件数は合計4件となりました.発表件数増については,来年度以降の課題です.
集まった一般講演では,深層学習による予測,文章データからの推定・推薦,シミュレーションを利用した評価関数検証といったトピックについて,研究発表が行われました.特に,深層学習を用いた競輪のレース結果予測については,すでにメディア等で話題になったこともあり興味を集めました.また,招待講演を企画し,藤澤克樹教授(九州大学/産総研/東京工業大学)より,「ヒト・モノのモビリティに関する新しい数理モデルと産業応用」と題して,データ,シミュレーション,大規模計算にかかわる,スケールの大きい研究活動について講演いただきました.今回の研究会は,70名を越える方々に参加いただき,盛況でした.
前回は,発表者の過半が企業からの発表者でしたが,今回は企業からの発表者が得られませんでした.この点も,次回以降の課題とします.
第115回知識ベースシステム研究会 (SIG-KBS)
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第115回知識ベースシステム研究会は,「知識表現・知識獲得とその応用」をテーマに,招待講演を含めて11件の発表が行われました.研究会は朝から開始しましたが大変盛況であり,会議全体を通じて100名程度の参加者がありました.
招待講演では,東京工業大学の村田剛志先生に「深層学習による桜島噴火予測」というタイトルでご講演頂きました.予測困難な火山噴火の分析手法に取り組まれており,桜島火山の周辺に設置された伸縮計や地震計などから観測された8年分の時系列データを対象として深層学習を適用することにより精度の高い噴火予測を実現されている点が印象的でした.
また一般講演では,深層学習・表現学習の応用(身体動作,感情表現,グラフ構造)に関する発表が多数ありました.さらに,相関ルールの高速抽出手法や評価関数の提案から,時空間の潜在的影響分析,相互行為分析による対話生成システム,旅客機の到着予測に関するものまで,様々な分野の発表がありました.どの研究発表においても提案技術の独自性・有用性が高く,興味深いものでした.また各発表に対して非常に活発に意見交換が行われ,充実した議論の場となりました.
人工知能基本問題研究会・行動計量学会シンポジウム「確率的グラフィカルモデルの最近の進展」(SIG-FPAI)
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人工知能基本問題研究会は,日本行動計量学会と共催で,「確率的グラフィカルモデルの最近の進展」と題して,講演会を行いました.2016年の合同研究会でも「確率的グラフィカルモデルの産業界への応用」という企画を行っています.オーガナイザでもある鈴木讓(阪大)の他,本村陽一(産総研),植野真臣(電通大),玉田嘉紀(京大),湊真一(京大)の各氏にお話いただきました.今回は,特に,研究者以外の方にも理解できるように配慮していただきました.11/23(金)の1日でしたが,会場がほぼ満席になり,延べで200名以上の方が参加され,大変盛況でした.合同研究会の開催に携わった皆様に感謝します.