人工知能の話題
ダートマス会議
「会議」というと「何かを決めるための話し合い」のように聞こえますが,互いの研究成果を発表し合う研究発表会のことです.正式には“The
Dartmouth Summer Research Project on Artificial Intelligence (人工知能に関するダートマスの夏期研究会)”と呼び,ここで初めて,“Artificial
Intelligence (人工知能)”という言葉がジョン・マッカーシーによって使われました.発起人は,ジョン・マッカーシーの他,マービン・ミンスキー,クロード・シャノン,ナザニエル・ロチェスターといった人たちで,その他,T.More,A.L.Samuel,O.Selfridge,R.Solomonoffなどの参加者がいました.現在の学会の国際会議のように全参加者が一同に集まるのではなく,各参加者が夏期のいろいろな時期に1週間程度ワークショップに参加する形式で行われました.
特に,アレン・ニューウェルとハーバート・サイモンは初めての人工知能プログラムといわれる“Logic Theorist (ロジック・セオリスト)”のデモンストレーションを行いました.これは,有名な数学の本“Principia
Mathematica (数学原論)”の定理を,いろいろな公理をしらみつぶしに組み合わせることで証明することができました.これは,コンピュータが四則演算などの数値計算しかできなかったものであった当時では画期的なことでした.
ちなみに,人工知能という言葉ではなく,人工知能の概念自体は,1947年の「Lecture
to London Mathematical Society (ロンドン数学学会での講義)」にてアラン・チューリングによって提唱されたとするのが良いでしょう.  :研究会のオリジナルのプロポーザルには,手書きで "June 17 - Aug 16" の日付があります.(AI magazine, vol.27, no.4, p.13, 2006) 
ジョン・マッカーシー:現在のAIの始まりといわれる1956年のダートマス会議の主要メンバーで,AIの名付け親です.他にも,プログラミング言語LISPや極小限定(circumscription)などの業績があり,1971年にチューリング賞を授与されています.
マービン・ミンスキー:人工知能の語りべです.フレーム理論やパーセプトロンの限界に関する指摘などの業績があり,1969年にチューリング賞を授与されています.
アレン・ニューウェルとハーバート・サイモン:世界で初めての人工知能プログラム“Logic
Theorist”や,これを発展させたGPS(一般問題解決システム)の開発で知られます.1975年にチューリング賞を共同受賞し,サイモンは1978年にノーベル経済学賞を受賞しています.
クロード・シャノン:情報理論の生みの親です.デジタル通信の携帯電話が使えるのは彼の業績のたまものです.チェスの解析なども行いました.
ナザニエル・ロチェスター:IBM社最初の商用コンピュータIBM-701開発チームの中心メンバーです.
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