概要 | 近世哲学の開祖のひとりホッブスは,有名な『リヴァイアサン』(1651)の冒頭で「人工人間(artificial man)」について述べる.「生命とは四肢の運動にほかならず,時計のようにバネと車でみずから動く自動機械は人工生命を持つと言ってよいのであるから,人間の技術は人工人間を創りうる」.ギリシャ時代のピグマリオン伝説をはじめとして,人類の歴史は常に人工人間の存在を想定してきた.これらに見られるような,アンドロイド(=man-like)型ロボットを想定するという人間の思想は,決してひまつぶしの,あるいは興味本位のものに留まらない.なぜならそれは,人間とはなにか,という哲学的問いのひとつの正当な視点にほかならないからである. 知能は記号的操作による演算のみで成立するのかそれとも直観的な働きが不可欠なのか.機械の心とは関係論的把握によって捉えられる虚焦点なのか.ロボットと人間の境界がメルトダウンしていくことの意味はなにか.これらについて論じてみようと思う. |
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