応募総数 | 採択件数 | 条件付き採択 | 総採択件数 | 実施件数 | |
---|---|---|---|---|---|
2020年度 | 26件(重複申請除く) | 26件 | 2件 | 26件 | – |
2019年度 | 22件 | 22件 | 0件 | 22件 | 22件 |
オーガナイズドセッション一覧
- OS-1 計算社会科学(鳥海 不二夫,笹原 和俊,榊 剛史,瀧川 裕貴,吉田 光男,高野 雅典)
- OS-2 食とAI(野中 朋美,藤井 信忠)
- OS-3 自律・創発・汎用AIアーキテクチャ(栗原 聡,川村 秀憲,津田 一郎,大倉 和博)
- OS-4 データ流通エコシステムのデザイン(早矢仕 晃章,大澤 幸生)
- OS-5 データサイエンスの普及と自動化(砂山 渡,森 辰則,西原 陽子,高間 康史)
- OS-6 複雑化社会における意思決定・合意形成のためのAI技術(福島 俊一,福田 直樹,伊藤 孝行)
- OS-7 移動系列のデータマイニングと機械学習(藤井 慶輔,竹内 孝,竹内 一郎,田部井 靖生,依田 憲,前川 卓也)
- OS-8 リーガルテックとAI ~法務・契約業務への応用~(加藤 恒昭,外山 勝彦,森 信介)
- OS-9 “ナッジ”エージェント:人をウェルビーイングへと導く環境知能システムの構築へ向けて(小野 哲雄,植田 一博,山田 誠二,本田 秀仁,小川 浩平)
- OS-10 AutoML(自動機械学習)(大西 正輝,日野 英逸,白川 真一,秋本 洋平)
- OS-11 人工知能におけるプライバシー,公平性,説明責任,透明性への学際的アプローチ(荒井 ひろみ,福地 一斗,工藤 郁子,中川 裕志)
- OS-12 広告とAI(関 喜史,安井 翔太,福田 宏幸)
- OS-13 AIを人と社会の側から考える(福住 伸一,佐倉 統,松田 雄馬)
- OS-14 不安を緩和するAI(田中 文英,上出 寛子,檜山 敦)
- OS-15 脳波から音声言語情報を抽出・識別する(新田 恒雄,桂田 浩一,入部 百合絵,田口 亮)
- OS-16 暗黙知のモデル化と演算可能性(佐々木 淳,阿部 明典)
- OS-17 AIと制約プログラミング(宋 剛秀,沖本 天太)
- OS-18 世界モデルと知能(岩澤 有祐,鈴木 雅大,山川 宏,松尾 豊)
- OS-19 グループインタラクションとAI(湯浅 将英,岡田 将吾,酒井 元気,酒造 正樹)
- OS-20 人狼知能と不完全情報ゲーム(大槻 恭士,狩野 芳伸,片上 大輔,大澤 博隆,稲葉 将通)
- OS-21 ICTによる食糧問題の解決(武田 英明,小林 一樹,朱 成敏)
- OS-22 創作者と人工知能が創る創作の未来(上野 未貴,森 直樹,はたなか たいち)
- OS-23 臨床の知 ―厚い記述がもたらす知―(諏訪 正樹,藤井 晴行,加藤 文俊)
- OS-24 産業分野におけるディープラーニング活用状況と利活用促進に向けて~産学連携での取組~(大谷 光,岡田 隆太朗)
- OS-25 Affective Computing(熊野 史朗,寺田 和憲,鈴木 健嗣)
- OS-26 人工知能と倫理(神崎 宣次,久木田 水生,服部 宏充)
OS-1 計算社会科学
オーガナイザ
- 鳥海 不二夫(東京大学)
- 笹原 和俊(名古屋大学)
- 榊 剛史(株式会社ホットリンク)
- 瀧川 裕貴(東北大学)
- 吉田 光男(豊橋技術科学大学)
- 高野 雅典(株式会社サイバーエージェント)
内容・テーマの例
Webのソーシャル化や実空間での様々な行動センシングが進行している現在,人々の自発的な情報行動やコミュニケーションなどの詳細はデジタルに記録・蓄積されるようになりました.このような大規模社会データを情報技術によって取得・処理し,分析・モデル化して,人間行動や社会現象を定量的・理論的に理解しようとする学問が「計算社会科学」 (Computational Social Science)です.
計算社会科学OSでは,大規模社会データ分析研究,社会シミュレーションによる理論的研究,バーチャルラボによる実験的研究などを使い,人間行動や社会現象を理解することを目指した研究を募集します.
キーワード
- 大規模社会データ分析
- 社会シミュレーション
- バーチャルラボ
- 社会ネットワーク分析
OS-2 食とAI
オーガナイザ
- 野中 朋美(立命館大学)
- 藤井 信忠(神戸大学大学院システム情報学研究科)
内容・テーマの例
食・食システム分野へのAI活用が広がっている.食とひとえにいってもその適用範囲は幅広く,食品製造・流通・販売・サービス提供を通じた一連のバリューチェーンにおける生産性・付加価値向上や,人の嗜好や感性データを用いた食品・料理レシピ・献立開発,調理・提供現場におけるロボット導入,対話型接客,需要予測,さらには農林水産分野への応用など,人工知能技術を用いた研究やビジネス活用が進んでいる.また,食を起点として,健康寿命延伸や人との関わりを活かした新たなコミュニティづくりや医療データ連携など,ヘルスケアや地域活性の側面も注目され,食を通じた社会課題解決に期待が近年ますます期待が高まっている.
食べることは人間の根源的な行為であり,食は工学・サイエンスのみならず医学や文化,歴史など複数の学問領域に密接に関わるため,多方面からの学際的アプローチで研究することが望まれる.
そこで,本OSでは,食・食システム分野における基礎から応用にわたる幅広い人工知能研究を扱う.萌芽的な研究や,食に関する実証研究・社会システム研究なども歓迎し,食分野に関心を持つ幅広い研究者や実務家が集う議論・交流の場を提供する.なお本セッションは,2018年度に実施した「食とAI」オーガナイズドセッションに継続して実施するものである.
キーワード
- 機械学習/データマイニング
- 最適化
- ビッグデータ
- サービス工学/経営工学
- 社会科学/認知科学
OS-3 自律・創発・汎用AIアーキテクチャ
オーガナイザ
- 栗原 聡(慶應義塾大学理工学部)
- 川村 秀憲(北海道大学大学院情報科学研究科)
- 津田 一郎(中部大学創発学術院)
- 大倉 和博(広島大学大学院工学研究科)
内容・テーマの例
今後の少子高齢化社会においては,AIを労働力として積極的に導入することが急務です.その場合,人とAIとのインタラクションが発生するが,人がAIに対して違和感や驚異を感じることがあってはなりません.人がAIに対して親近感や安心感を感じ,人間同士における間合いや気配りといった一体感を人とAIとの間でも構築できることが極めて重要となります.このように,AIが人と共生するためには,現在のツール型AIでは必要とされない「高い汎用性と自律性」が極めて重要な要素となります.目的指向に基づいた人や環境の状態に対するセンシングと能動的な人や環境へのインタラクション能力を創出する必要があるのです.そして,そのような知能アーキテクチャには環境に対する高い適応性と汎用性が求められ,まだ黎明期になる創発型のアーキテクチャなどの開発にも重点を置く必要があります.本OSでは,今後において重要性が高まる自律型AIを実現するための知能アーキテクチャ,認知アーキテクチャ,行動選択アルゴリズム,自律エージェントアーキテクチャ,創発メカニズムなどに関する研究発表を募集し,人と共生する日本型AIを実現するための中核となる自律性に関する研究コミュニティの活性化を目指します.
キーワード
- 汎用人工知能・自律メカニズム
- 創発メカニズム・多段創発メカニズム
- 群知能・記号創発ロボティクス
- 脳型情報処理・複雑ネットワーク
- 統合型認知アーキテクチャ
OS-4 データ流通エコシステムのデザイン
オーガナイザ
- 早矢仕 晃章(東京大学)
- 大澤 幸生(東京大学)
内容・テーマの例
AI技術や多様なデータの浸透により,AI技術が様々な分野に普及しつつあるのと同時に,既存の分析技術や統計学では扱えない新規なデータが登場してきている.その中で,一つの企業や組織のデータではなく,異なる領域のデータやAI技術を流通・交換・連携させることによる価値発見と問題解決のプロセスを包含する「データ流通エコシステム」に注目が集まっている.しかし,このようなエコシステムや異分野データ連携環境の重要性は認識されているものの,技術的に解決すべき問題だけでなく,法的な課題,社会の受容性,リテラシー教育など,様々な障壁が存在する.3年目となる本オーガナイズドセッションでは,データ・AI技術・ヒト・モノ・コトの相互作用によるデータの価値発見と交換によるデータ利活用事例,異分野データ連携技術,データ価値化手法,データ利活用における認知プロセス,データ市場及びそのデザインに関する発表を広く募集する.また,健全なデータ市場及び価値あるデータ流通を阻害する社会要因等についても議論し,これからのデータ流通社会に向けた提言も行っていく.本OSでは,データ流通エコシステムに関する最新の研究をまとめ,全国大会から社会に向けて発信することを狙いとする.
キーワード
- データ市場
- 異分野データ連携
- データ設計
- データ流通
- メタデータ
OS-5 データサイエンスの普及と自動化
オーガナイザ
- 砂山 渡(滋賀県立大学)
- 森 辰則(横浜国立大学)
- 西原 陽子(立命館大学)
- 高間 康史(首都大学東京)
内容・テーマの例
昨今のデータサイエンティスト育成が急務となっている世の中においては,AIリテラシーの基礎教育やリカレント教育の充実に加え,データサイエンスへの敷居を下げることが必要となっています.データサイエンスへの敷居を下げるためには,データ収集から知識創発に至るまでの意思決定のためのデータ分析プロセスの全体像の理解と,そのプロセスにおける人間の試行錯誤と推論を欠かすことができません.人間の意思決定に必要なのは思考の発散と収束であり,思考の発散においては可能性の網羅的な探索が,思考の収束においては列挙された可能性からの推論が必要とされています.
そこで本セッションにおきましては,データ分析プロセスの一部を自動化することで,人間の作業の手間を省き,人間の思考錯誤と推論を支援する研究発表を募集します.特に,指標を提示するデータ分析システムの提案にとどまるのではなく,「データ分析システムを用いる人間の作業」に着目し,その作業の自動化を試みる研究発表を募集します.また,人間とコンピュータの協働作業においては,コンピュータが客観的な情報を提示し,人間が主観的に判断を行うのが,これまでの一般的なスタイルとなっていましたが,人間の主観的な思考を先読みすることなどによって,コンピュータに主観的な判断の一部を担わせる手法について議論を行い,データ分析の経験が少ない人にも,手軽にデータ分析を進めてもらえる環境について検討します.また,コンピュータによる自動化の助けを受けながらデータサイエンスのスキルを身につけられる,データサイエンティスト育成のための環境についても検討します.
キーワード
- データ分析作業の自動化
- 試行錯誤支援と自動化
- 知識推論支援と自動化
- データ解釈支援と自動化
- データサイエンティストの育成
OS-6 複雑化社会における意思決定・合意形成のためのAI技術
オーガナイザ
- 福島 俊一(科学技術振興機構)
- 福田 直樹(静岡大学)
- 伊藤 孝行(名古屋工業大学)
内容・テーマの例
AI技術の進化が著しく,人間の代わりにAIが自動実行するタスクが増えつつあるが,それらのタスクを定義し,実行を指示し,結果を評価する等,上位の意思決定をするのは人間である.しかしながら,情報爆発やボーダーレス化が急速に進んだことで,意思決定の際に考慮すべき要因・影響の膨大さや複雑さは,人間の認知限界・思考範囲を超えるようになってきた.この困難さを克服し,人間が適切かつ迅速に意思決定できる仕組みを持たねば,ビジネス・研究開発・政策等における国際競争力を維持・確保するのが難しくなる.
一方,ウェブやソーシャルメディア等の情報技術の活用によって,これまでにない大規模な集団での合意形成や不特定多数の群衆の意思決定が可能になってきた.しかし,フェイクニュース・フェイク動画の拡散,炎上,フィルターバブル等の現象が多々発生し,健全な議論が困難であるとか,集団浅慮(Groupthink)に陥るとか,世論誘導・政治操作(デジタルゲリマンダー)に悪用される等の問題も起きている.
このような問題意識のもと,本オーガナイズドセッションでは,複雑化する社会における人間(個人や集団)の意思決定・合意形成のためのAI技術にフォーカスする.膨大な意思決定空間の探索と解候補(選択肢)の評価,大規模議論の可視化・不整合検出,群衆の意思決定・合意形成のファシリテーション,フェイクや炎上の検出・回避・ファクトチェック,集団浅慮・視野狭窄や悪意・扇動意図による思考誘導の回避,合理性・論理性だけでなく共感・納得感や主体性の高い意思決定・合意形成の仕組み等の技術開発を含む.機械学習,推論,マルチエージェント,メカニズムデザイン等のAI技術の発展に加え,計算社会科学,行動経済学,社会心理学,ソーシャルメディア論,シビックテック,社会学・政治学,法律・倫理等の知見や連携した取り組みも重要になる.
キーワード
- 意思決定,合意形成,意見集約
- エージェント技術,メカニズムデザイン,自動交渉
- フィルターバブル,フェイクニュース,フェイク動画,SNS
- コレクティブインテリジェンス,シビックテック,ファクトチェック
OS-7 移動系列のデータマイニングと機械学習
オーガナイザ
- 藤井 慶輔(名古屋大学大学院情報学研究科)
- 竹内 孝(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
- 竹内 一郎(名古屋工業大学大学院工学研究科)
- 田部井 靖生(理化学研究所革新知能統合研究センター)
- 依田 憲(名古屋大学大学院環境学研究科)
- 前川 卓也(大阪大学大学院情報科学研究科)
内容・テーマの例
計測技術の発展によって,様々な生物や人工物の移動の記録が可能になりました.これを背景に,多岐にわたる社会や科学分野への貢献,例えば,小型GPSを装着した野生の動物の行動データから動物の生態の理解,車両の移動データから様々なリソース配分の効率化,カメラから得られたスポーツ選手の行動データからスキルの評価などが期待されています.このように移動系列を解析する手法の重要性が高まっていますが,対象を越えて移動系列が持つ普遍的性質を扱う方法や,その性質を用いて高度な予測を行う人工知能技術は存在せず,従来の研究は対象毎に個別の領域で研究が行われるに留まっています.そこで,本OSでは,解析手法の1つであるデータマイニングや機械学習技術を軸足とし,対象間に共通する問題やその上で更に個別の議論を行うことで,各領域や共通の問題の解決を行っていきます.
本OSは,工学,コンピュータ科学,生物学,神経科学,スポーツ科学などを専門にする研究者が,記録されたヒト,動物,自動車などの軌跡・活動・行動データの解析方法について機械学習など人工知能分野の技術を用いた議論する場となることを期待しています.本OSのオーガナイザには,科研費新学術領域「生物ナビゲーションのシステム科学(生物移動情報学)」への参画者が多く含まれており,ヒトや車両などの公開データだけでなく,様々な生物行動の貴重な計測データの研究も発表される予定です.関心のあるテーマとして,生物・人工物の軌跡・活動・行動データに関する以下の例がありますが,これらを超えた領域からの参加など分野の創出と発展を期待しています.
テーマの例:
- データマイニング,機械学習,時系列分析
- 認識,予測,可視化,知識抽出
- モデリング,強化学習
- 位置推定,データ前処理,ラベリング
- モニタリングおよび認識システムなどへの応用
キーワード
- 時空間データ
- データマイニング
- 機械学習
- 生物モデル
- 軌跡・活動・行動データの情報処理
OS-8 リーガルテックとAI ~法務・契約業務への応用~
オーガナイザ
- 加藤 恒昭(東京大学)
- 外山 勝彦(名古屋大学)
- 森 信介(京都大学)
内容・テーマの例
近年リーガルテックが注目されている.その中でも秘密保持契約,業務委託契約,サービス利用規約などの法務・契約文書に関する知的処理を対象とする.これらの文書では当事者間の権利や義務などが定められている.そこでは当事者間の公平性(有利不利性)が問題となるとともに,項目を過不足なく規定した適切な構造になっているかどうか(粗密性),文書中で用いられている用語は曖昧さのないものであるかなど,様々な観点での評価・分析・改善が必要になる.これらの作業は従来弁護士など分野の専門家によって行われていたが,これらを自動化あるいは適切に支援することの必要性が大きくなっている.本セッションではこれらを目指す人工知能技術についての研究発表を募り,議論を通して,研究開発の高度化と加速を目指す.
キーワード
- 法務・契約テキスト
- リーガルテック
- 専門文書理解
- 文書分類
- 専門用語処理
- ドキュメント構造解析
OS-9 “ナッジ”エージェント:人をウェルビーイングへと導く環境知能システムの構築へ向けて
オーガナイザ
- 小野 哲雄(北海道大学)
- 植田 一博(東京大学)
- 山田 誠二(国立情報学研究所)
- 本田 秀仁(安田女子大学)
- 小川 浩平(名古屋大学)
内容・テーマの例
行動経済学において提唱されている“ナッジ” (nudge) は「ほとんど気づかないくらいにささやかな方法」で人々を健康や幸福へと導く戦略 [Thaler 08] として知られ,Thaler は当該研究の業績により2017年にノーベル経済学賞を受賞した.さらに,AI や IoT などの情報技術の急速な発展にともない,人々の意思決定におけるナッジの重要性が認識され,今後,当該項目を研究および投資の対象とすべきであることが日本政府の成長戦略・投資戦略 [骨太方針18, 19] において確認されている.
一方,近年のAI技術の急速な進展は,人間はAIシステムが出力した解に従うべきか,もしくは自律的に意思決定を行うべきかという対立する概念をも生み出している.そこで本OSでは,“ナッジ”エージェントの提案および実環境への実装をとおして,上記の対立を解消し,人間とAIシステムの融和により,人々をウェルビーイングへと自然に導く環境知能システムの実現方法について議論を行いたい.
本OSのテーマはきわめて学際的であるため,AI研究者およびHAI研究者ばかりではなく,心理学,行動経済学,神経科学の研究者との協働により議論を深めていきたい.
テーマの例としては以下が想定される.
- 人の意思決定を促すエージェントのモデル化と実装
- 「心のナビゲーション」としての”ナッジ”の役割と機能
- 人の意思決定に影響を与える要因についての心理学的考察
- 認知的バイアスがHAIのインタクラションに与える影響
- 神経経済学の視点から時間と意思決定の関係に関する考察
キーワード
- HAI
- ナッジ
- 行動経済学
- 意思決定
- 環境知能システム
OS-10 AutoML(自動機械学習)
オーガナイザ
- 大西 正輝(産業技術総合研究所)
- 日野 英逸(統計数理研究所)
- 白川 真一(横浜国立大学)
- 秋本 洋平(筑波大学)
内容・テーマの例
深層学習の出現によって高度な認識技術が実現できるようになっている半面でハイパパラメータ調整やアーキテクチャの選択など職人的な作業が多くなっており,これらの作業を自動化する AutoML の研究が行われている.本オーガナイズドセッションではAutoMLに関する研究としてハイパパラメータ調整,ニューラルアーキテクチャサーチ,メタ学習,転移学習,マルチタスク学習などの研究を募集する.
キーワード
- ハイパパラメータ調整
- ニューラルアーキテクチャサーチ
- メタ学習
- 転移学習
- マルチタスク学習
OS-11 人工知能におけるプライバシー,公平性,説明責任,透明性への学際的アプローチ
オーガナイザ
- 荒井 ひろみ(理化学研究所革新知能統合研究センター)
- 福地 一斗(筑波大学)
- 工藤 郁子(東京大学)
- 中川 裕志(理化学研究所革新知能統合研究センター)
内容・テーマの例
人工知能技術の発展及び社会実装が進む中,人工知能技術の向上のみならずその利用におけるプライバシーの保護や公正性,説明責任,透明性などへの配慮について社会的な関心や要請が高まっている.例えば機械学習を利用した個人に対するAI信用スコアリングサービスにおいては,個人情報保護の遵守,データの共有範囲や用途を適切に説明するプライバシポリシーの設定,サービスのベネフィットとリスクについての十分な説明,ユーザーに対する公平性などが課題となりうる.現在,これらのAIにかかるプライバシー,公平性,説明性などの諸問題に対処するために,AIや機械学習のコミュニティで盛んに研究が行われている.一方で,これらの問題に対して実際にどのような基準を達成すれば問題が解決したと言えるかは必ずしも明瞭ではない.これらの要請について現行法令,倫理,世論(public acceptance)といった様々な論点が存在しており,法学,哲学,社会学などのそれぞれの立場において盛んに議論されている.実際に,既に多くの機関や企業からAI活用に伴う諸問題に対処するための倫理指針やガイドラインが複数公表されている.しかしながら,現実的にAI技術の利点を担保しつつこれらの問題を解決するためには,それぞれの立場からの研究に加え,学際的な研究が必要不可欠である.すなわち,法学,倫理学,社会学,機械学習など様々な分野の研究者が同時に集う学際的な場を用意し,様々な立場の意見を集約し,論点を整理したのち,実際の実装方法に関する議論をする必要がある.
本オーガナイズドセッションでは,上記のような状況を受け,法学,哲学,社会学,機械学習など様々な分野における人工知能のプライバシー,公平性,説明性などの諸問題についてのサーベイ,論考,解決方法の提案などにまつわる報告を募集し,議論状況の共有,論点整理及びディスカッションを行う.特に様々な観点からの具体的なケースや技術の分析や問題提起などを歓迎する.
テーマ例:
- 機械学習の公正性,説明性についての機械学習,哲学,法学等からの学際的な報告
- AI利用におけるプライバシーや公正性についてのケース分析
- AI倫理ガイドラインについてのサーベイ
- AI技術の社会受容性についての調査報告
キーワード
- AIの倫理
- 機械学習の公正性,説明責任,透明性
- プライバシー保護技術
- Trustworthy AI
- 個人情報保護法
OS-12 広告とAI
オーガナイザ
- 関 喜史(株式会社Gunosy Gunosy Tech Lab)
- 安井 翔太(株式会社サイバーエージェント AILab)
- 福田 宏幸(株式会社 電通 データ・テクノロジーセンター)
内容・テーマの例
本セッションでは人工知能技術の広告への応用に関する研究開発を扱います.
広告と人工知能は研究事例として数多く行われています.具体的には以下のような内容です.
- オークション型デジタル広告における広告CTR予測・最適化
- 広告クリエイティブの自動生成
- 検索連動型広告におけるクエリ選択
また広義の意味ではSEOやマーケティングにおけるデータマイニングなども含まれると考えております.
キーワード
- 機械学習応用
- 広告
- データマイニング
- 情報検索
- 強化学習
OS-13 AIを人と社会の側から考える
オーガナイザ
- 福住 伸一(理化学研究所)
- 佐倉 統(東京大学大学院情報学環)
- 松田 雄馬(合同会社アイキュベータ)
内容・テーマの例
新しい技術が次々と開発され,社会に入ってこようとしている.しかし,社会や人々がそれを受け入れなければ,その技術は消えて行ってしまう.一方,社会や人間側は,新しい技術を無理やり使おうとすると,どこかで無理が生じ,結果的にそれらの技術の普及を妨げることになってしまう.すなわち,新しい技術が社会に入り,広がっていくためには,それが受け入れられるためやるべきことを明らかにしていく必要がある.これを実現するためには,技術サイドだけで議論しても解決できず,社会や人間の側で議論し,課題を技術開発側に示していくことが重要である.従来は,新しい技術に対して人間が我慢しながら使い,少しずつ課題を出し,それを解決するというやり方であった.しかし,単なるインタラクションではなく,社会自体に新しい技術が埋め込まれるようになる時代では,その手法では解決は難しく,製品仕様だけでなく,使用することによる影響を明らかにし,その影響を抑えるために技術側も社会・人間側も何をすべきか,を示していかなければならない.
このように,社会や人々がAIを中心とした新しい技術と安心して共存するために,社会や人々は技術に何を求めるか,について,社会・文化的側面と人間的側面から討議する.具体的には,前者では「人-AI関係の比較文化研究」,後者は,「人とAI/ロボットのインタラクションにおける社会への影響」を中心にテーマを募集し,討議する.
キーワード
- 社会
- 文化
- インタラクション
- 使用
OS-14 不安を緩和するAI
オーガナイザ
- 田中 文英(筑波大学)
- 上出 寛子(名古屋大学)
- 檜山 敦(東京大学)
内容・テーマの例
人はその一生の間に様々な不安を覚える.こうした不安に対処するため,古今東西,人類は様々な方法を用いてきた.本OSでは,AIや関連技術を用いて,人の不安を緩和することを考える.初開催となる今回は,議論のたたき台として「独居高齢者の社会的孤立抑制」「注射など医療処置に対する不安の緩和」「宗教と技術の関わり合い」を用意し,不安緩和のための技術的解法を模索する.同時に,これらの具体例にとらわれず,不安の緩和に関連する広い範囲からの論文投稿や参加を歓迎する.
キーワード
- 不安の緩和
- 100年人生
- 社会的孤立
- 痛みの軽減
- 対話エージェント
- 宗教
OS-15 脳波から音声言語情報を抽出・識別する
オーガナイザ
- 新田 恒雄(早稲田大学GCS)
- 桂田 浩一(東京理科大 理工学部情報科学科)
- 入部 百合絵(愛知県立大 情報科学部)
- 田口 亮(名古屋工大 情報工学専攻)
内容・テーマの例
脳波信号から音声言語情報を抽出して識別する研究が始まっている.ここ10年はfMRI, PETなどの観察から,概念-> 言語表現プランニング-> 音節・単語・文表現-> 発話運動神経系に至る活動関与部位(where)に関する多くの知見が得られ,これらの知見を受けた脳波観測から言語活動(what)を推定する研究が活発である.音声言語に関する脳波研究では,脳皮質上のセンサーから脳波(ECoG)を検出する研究が先行しているが,頭皮上で観測した脳波(EEG)信号を用いる研究も実現すると応用が広いため意欲的に進められている.本オーガナイズドセッション(OS)では,主に後者の発話時EEG信号あるいは音声想起(speech imagery)時EEG信号から,単語,音節,短文などを分析/特徴抽出/識別/利用する近年の研究成果を中心に紹介・討議する.
具体的には,雑音・artifact除去,言語情報(表象)抽出のための分析・抽出方式,識別,利用における課題と解決方法などを討議したい.本OSを通して,欧米に比べて遅れ気味の「音声言語に関するBrain Computer Interface (BCI) 研究」が前進することを期待している.
テーマの例:
- 脳波のための分析モデル
- 脳波中の高次認知機能の分析
- 高次認知活動に関する脳波信号と雑音除去
- 脳波における音素・音節の表現形態(言語表象)
- 脳波信号からの音声言語特徴抽出
- 発話時脳波信号からの音声デコーディング
- 音声想起時脳波からの想起内容識別
- 脳波に対する音素・音節ラベリングツール
キーワード
- 脳波からの雑音除去
- 音声想起
- 脳波分析・特徴抽出
- 脳波中の音節・単語・文識別
- 脳波中の音素・音節ラベリング
OS-16 暗黙知のモデル化と演算可能性
オーガナイザ
- 佐々木 淳(AOI TYO Holdings(株))
- 阿部 明典(千葉大学文学部)
内容・テーマの例
数値記号化が困難であり形式知としてのモデル化が立ち遅れている分野は人文,クリエイティブ,芸技,消費分析,価値観分析など多方面に及ぶが,これらは本質的に人間の世界認識のあり方に深く関わる.過去の記号論における成果等も今一度参照しつつ,本セッションではこうした分野における評価・記述・把握のモデルを提案する諸研究について議論し,同時にこれら諸研究を連携させることを目的とする.
ここで言うモデルとは定義によるトップダウンと具体データによるボトムアップの交互性,すなわち学習を通してモデルの定義を調整しつつ創発・アブダクションへと開かれているようなモデルであり,具体的情報により編集し続け得るモデルのことである.
ディープラーニングによる導出結果の説明不可能性が問題となる中,人間とAIの関係をより豊かにし,人間にとって説明可能な演算経過を可視化するためにも,現象の数値計算のみに留まらない暗黙知の演算体系を試行することが重要である.従って,提案モデルを機械学習等へ対応させることもまた不可欠である.このように,諸研究モデルのシステム実装についても重視しつつ,最終的に社会へ役立つ実装をしていくことまでを射程に入れていく.
テーマ例:
- コンテンツ・物語生成モデル
- 価値観モデル
- 消費・知覚・感情・連想
- 技芸ほかに関する暗黙知のモデル化等研究全般
キーワード
- モデル化仮説
- 教師データ
- 暗黙知
- メタタグ
- アブダクション・創発
- 世界認識
OS-17 AIと制約プログラミング
オーガナイザ
- 宋 剛秀(神戸大学)
- 沖本 天太(神戸大学)
内容・テーマの例
制約充足問題および制約最適化問題 (以下,まとめて CSP と呼ぶ) は,それぞれ与えられた制約を満たす解および最適解を探索する問題である.
制約プログラミングは, CSP を取り扱うプログラミングパラダイムである.
人工知能研究で生じる多くの組合せ問題は CSP として定式化できることから, 制約プログラミングは, 1980年代から現在に至るまで人工知能分野で活発に研究されてきた.
本オーガナイズドセッションでは,「AI と制約プログラミング」に関する研究発表・議論を行う場を提供することを目的とし,AIにおける探索や推論,制約に関する理論, アルゴリズム, 言語, モデル, システムなど AI と制約プログラミングに関する基礎から応用問題まで幅広く発表を募集する.以下にテーマの例を挙げる.
- ソルバー (CSP, SAT, MaxSAT, PB, SMT, ASP など)
- 推論・探索アルゴリズム (CDCL, 列挙 など)
- 知識コンパイル (BDD/ZDD/MDD など)
- マルチエージェント (DCOP, 提携構造形成問題 など)
- 応用 (モデル検査, スケジューリング, プランニング など)
制約プログラミングはCP国際会議や各種ソルバーの競技会が毎年開催されるなど国際的な関心が高い.本オーガナイズドセッションでは,国内の研究者を一堂に会して,国内コミュニティの活性化を目指す.
キーワード
- 制約充足問題・制約最適化問題
- SAT/MaxSAT/PB/SMT/ASP
- BDD/ZDD/MDD
- 列挙問題
- マルチエージェント
OS-18 世界モデルと知能
オーガナイザ
- 岩澤 有祐(東京大学)
- 鈴木 雅大(東京大学)
- 山川 宏(東京大学/全脳アーキテクチャ・イニシアティブ)
- 松尾 豊(東京大学)
内容・テーマの例
世界モデルとは,環境からの限られた情報を元に,環境のモデルを学習によって内部的に構築する枠組みである.こうした世界モデルを用いることで,直接には観測できない,過去/未来・反実・観測不能な状態の挙動を把握できるようになり,目的に応じた行動選択の性能を高めることができる.世界モデルのような複雑な環境をどのようにモデル化するかという問題を取り扱うこと自体は,制御における内部モデルや認知科学におけるメンタルモデルなどと密接な関係にあり,必ずしも新しいアイディアではない.しかし,深層学習の発展により高次元のデータから効率的に良い表現を獲得できるようになったことを背景に,これまではモデル化が困難であったような複雑な世界をモデル化できるようになりつつあり,ロボティクスや強化学習研究において活用が急速に進んでいる.
本企画セッションは,深層学習を用いてエージェントを取り巻く環境をモデル化する方法論を中心に,複雑な環境における世界モデルの構築方法,AIの諸問題における世界モデルの重要性についての議論を行う.世界モデルという概念を介して,人工知能だけでなくロボティクス,認知科学,神経科学などの分野の研究者と共同して学際的な議論を行う場となることを目指す.
キーワード
- モデルベース強化学習
- 深層学習
- 表現獲得
- 深層生成モデル
- 予測モデル
- 自己教師あり学習
- 生物における外界のモデル化
- 知能の汎用性
OS-19 グループインタラクションとAI
オーガナイザ
- 湯浅 将英(湘南工科大学)
- 岡田 将吾(北陸先端科学技術大学院大学)
- 酒井 元気(東京電機大学)
- 酒造 正樹(東京電機大学)
内容・テーマの例
人グループインタラクションの研究は,参加者のコミュニケーション能力や内面状態(性格やリーダーシップ)の推定技術の構築や個人のコミュニケーション能力の改善にも繋がることから期待が高まっている.さらに近年発展してきている機械学習の技術と,音声・画像・言語などのメディア処理,ユビキタスコンピューティング,ウェアラブルコンピューティングを統合することで,グループインタラクションの理解とモデル化,その支援技術に関する研究基盤が整ってきた.しかしながら,これらにより発表される研究成果は各研究グループごとに実験デザインが統一されていないことが問題になっている.本OSでは,グループインタラクションの理解および支援技術に関する研究発表を広く募集し,研究発表の場を提供するとともに,複数の研究グループで統一できる実験デザインや評価方針を議論する.
キーワード
- グループコミュニケーションの質のモデル化
- ウェアラブルデバイス
- 社会的信号処理
- グループディスカッションにおけるフィードバック
- インタラクションへの介入
- ワークショップデザイン
- CSCW
OS-20 人狼知能と不完全情報ゲーム
オーガナイザ
- 大槻 恭士(山形大学)
- 狩野 芳伸(静岡大学)
- 片上 大輔(東京工芸大学)
- 大澤 博隆(筑波大学)
- 稲葉 将通(電気通信大学)
内容・テーマの例
本セッションの目的は,不完全情報ゲームおよび不完全情報ゲームの一つである人狼を対象にして,「人間と自然なコミュニケーションを行うエージェントの構築およびその関連研究」に関する議論の場を提供することです.本セッションに関連する技術は,エージェント同士もしくは人間とエージェント間の信頼・説得・協調関係の構築や,欺瞞的コミュニケーション,ノンバーバルインタラクション,多人数インタラクション,自然な対話生成,不完全情報に基づく推定,雰囲気の理解と生成など多岐にわたり,この先,人工知能と人間の間のコミュニケーションが密になるにつれて必ず必要となる技術です.したがって,このようなテーマを凝縮した不完全情報ゲーム環境について,人工知能学会をベースとして統一した議論を行うことは今後のAI研究の発展に欠かせないと考えます.
テーマの例:
- 新しい人狼知能エージェントの提案
- 不完全情報ゲーム
- 信頼・説得・協調力のある知的対話システム
- 新しい人狼知能プロトコルの提案
- 多人数コミュニケーションにおける信頼・説得・協調
- ノンバーバルインタラクションによる信頼・説得・協調
- 欺瞞的コミュニケーション研究
- 不完全情報に基づく人狼の役職推定
- 多人数の議論における空気を読む・生成するシステム
- その他、不完全情報ゲームに関連する諸研究
キーワード
- 人狼知能
- 不完全情報ゲーム
- 知的対話システム
- 多人数コミュニケーション
- ノンバーバルインタラクション
- 欺瞞的コミュニケーション
- 信頼・説得・協調,雰囲気工学
OS-21 ICTによる食糧問題の解決
オーガナイザ
- 武田 英明(国立情報学研究所)
- 小林 一樹(信州大学)
- 朱 成敏(国立情報学研究所)
内容・テーマの例
近年の食料生産人口の減少と高齢化により食料の生産性の低下が懸念されている.また,食生活の変化とグローバル化により食料の輸出入による流通における品質問題が注目されている.これらの問題を解決し,食料の安定的な供給と品質管理を確保するために情報通信技術(ICT)を始め,Internet of Things(IoT)と人工知能(AI)関連技術が注目されており,食料生産における近年の変化を主導する技術となった.本OSでは農林水産業や食料流通,食品安全にICTやIoT, AI関連技術を導入し,食料生産の効率化と流通の安全性,食品の品質向上を確保する近年の食料問題の全般を対象とする.
キーワード
- 食糧問題
- 食品安全
- 流通
- 農林水産業
- 酪農業
OS-22 創作者と人工知能が創る創作の未来
オーガナイザ
- 上野 未貴(大阪工業大学 工学部)
- 森 直樹(大阪府立大学 工学研究科)
- はたなか たいち(株式会社クリエイターズインパック)
内容・テーマの例
計算機は創作者が作品に込めた情緒を理解することができるのか?
近年,人工知能を用いて解析および生成の両面から,人の創作物を対象とした研究が進んでいる.
人がコミュニケーション手段として用いる言語や画像を中心としたストーリーを持つ創作物として,小説,漫画,絵本,アニメ,音楽などが研究対象として想定されてきた.
一方で,創作物をデータとして客観視するだけではなく,創作過程で込められた想いを主体的に扱い,創作者と研究者をつなぐための研究にも注目が集まっている.
人工知能分野では完成して公開された創作物を扱う事例が多いが,研究初期段階から創作者と連携し,人が考えて創る創作過程に発現する高度で繊細な情報を扱うことも今後重要になっていくと考えられる.
創作物の構成要素は言語と画像から成るなどマルチモーダル情報であることが多く,単一のコンテンツのみを対象として研究を進めるだけではなく,分野融合的かつ横断的な研究連携が望まれる.
また,研究者が単に創作物をデータとして扱い人工知能技術を適用するだけではなく,研究者と創作者をつなぐための方法論として人工知能技術を発展させていく視点が不可欠である.
本オーガナイズドセッションでは,創作者と研究者が人工知能を介して共存し豊かな創作の未来を築くことを目的として,研究的視点を持つ創作者,創作的視点を持つ研究者,本分野に興味を持つ者から,広く,創作物と工学の関係性に基づくタスク設計,データ構築,数値計算手法,望まれる応用開発,に関する研究を募る.
キーワード
- 創作者と人工知能
- マルチモーダル情報
- 深層学習
- 機械学習
- 創作支援
OS-23 臨床の知 ―厚い記述がもたらす知―
オーガナイザ
- 諏訪 正樹(慶應義塾大学)
- 藤井 晴行(東京工業大学)
- 加藤 文俊(慶應義塾大学)
内容・テーマの例
情報処理パラダイムは,人の知能を「頭の中に格納された知識やアルゴリズムにしたがって,世界の情報を処理して,新たに情報をつくりだしたり,意図を生み出して世の中に働きかける」行為としてモデル化する考え方である.情報処理の考え方にしたがうならば,知能とその主体を取り囲む世界は,情報入手と,情報もしくは行動の出力という,入出力行為で結ばれることになる.人工知能研究はこの考え方に礎を置き,発展を遂げてきた.
しかし,70年代には,哲学分野からフレーム問題というAIにとっての障壁が指摘され,80年代以降,認知科学分野からはsituated cognitionという考え方が台頭した.情報処理パラダイムが知能のモデルとして不十分であることを示唆する動きであった.それ以降,知能は身体という物理的な存在に宿っていること,したがって身体を通して世界の中に埋め込まれていること,情報は受動的に世界から与えられる(入力される)ものではないこと,知とは,身体と世界の相互作用の中から主体が能動的に見出すものであること,などが活発に議論されてきた.
この考え方に立つならば,主体が埋め込まれている「現場」の個別具体性や,主体の身体性および主観性は,知能を論じる際に捨象するわけにはいかない.近代科学が定めてきた原則,<普遍性><客観性>を無自覚に信奉すると,研究が「生きている人」の知のあり様(分厚い現実)をどうしても捉えきれなくなる.哲学者の中村雄二郎氏は著書『臨床の知とは何か』でそれを切に訴えている.
本OSは,中村雄二郎氏の著書にちなんで「臨床の知」と称する(「厚い記述」の必要性を訴えるサブタイトルを付した).客観性や普遍性の原則を念頭に置きながらも,個別具体性,身体性,主観性を強く孕むデータを尊重し,「知の現場の豊かな諸相」を浮かび上がらせるための「視点」を発見したり,有望な「仮説」を見出す研究の場としたい.そのために,生活や産業の現場で生じているものごとを,個別具体性,身体性,主観性を大事にする方法で記述・観察し,たとえ証例数(心理学ではNという文字で表すことが多い)が少なくても,その中に面白い「視点」や「仮説」を見出そうとする研究,特に,人が生きている現場における「厚い記述」に基づく研究の投稿を奨励する.この問題意識を共有する知能の現場は,少なくないはずである.
以下に示す,「人が生きている現場」で生起する知を論じる研究を,本OSのテーマとして取り上げたい.
- 学校における学び
- 学校における教育・ファシリテーション
- 産業界における学び
- 産業界における教育・ファシリテーション
- 技能伝承
- リハビリテーション
- 医療行為・看護
- 地域施設のデザイン
- 住まいのデザイン
- 都市や建築における居場所の創造
- 建築空間におけるふるまいの記述
- 企業の経営
- 企業の人材教育
- アートや音楽などの創造
- 庭園空間の鑑賞体験
- 生活における感性・個性の醸成
- 日常の生活経験に潜むデザイン・マインド
- 地域の価値の発見
- 小集団(家族,組織)におけるコミュニケーションの理解
- コミュニティのデザイン
- シビックプライドの醸成
キーワード
- 臨床
- 現場
- 主観性
- 厚い記述
- 研究方法論
OS-24 産業分野におけるディープラーニング活用状況と利活用促進に向けて~産学連携での取組~
オーガナイザ
- 大谷 光(日本ディープラーニング協会)
- 岡田 隆太朗(日本ディープラーニング協会)
内容・テーマの例
日本ディープラーニング協会(JDLA)は,ディープラーニング(DL)を中心とする技術による日本の産業競争力の向上を目指して2017年6月に設立された非営利団体である.DLを事業の核とする企業および有識者が中心となって,産業活用促進,人材育成,公的機関や産業への提言,国際連携,社会との対話など,産業の健全な発展のために必要な活動を行っている.同協会による産業活用促進における活動の一環として2019年7月にNEDOより発表された「産業分野における人工知能及びその内の機械学習の活用状況及び人工知能技術の安全性に関する調査」へ協力.同調査結果から見えてきたのは,開発プロセスを通じて企画・立案段階からPoC段階へ進む際の案件数の下落率が最も高いこと,AI導入に意識はあるも「課題は不明」という回答数の多さである.AI/DLの社会実装が進む一方でリテラシー格差が生むビジネス応用の格差是正に向けて産学連携,あるいは,行政と足並みをそろえて取り組むべきことを議論する.また,米中へのヒアリング調査から浮き彫りになった日本ならではの課題についても議論を行い,産学連携で実際に進んでいる人材育成施策,産業活用促進における取り組み,さらに今後必要となるアプローチについて議論したい.
キーワード
- ディープラーニング
- 機械学習
- 産業活用促進
- AI人材育成
- 産学連携
OS-25 Affective Computing
オーガナイザ
- 熊野 史朗(NTT)
- 寺田 和憲(岐阜大学)
- 鈴木 健嗣(筑波大学)
内容・テーマの例
Affective Computingは90年代にRosalind Picard (MIT Media Lab教授)が提唱した分野であり,機械に人の情動を認知させる,機械を情動的に振舞わせる,機械に情動を持たせることを基本目標とする.人の心に計算論的アプローチで迫ろうとするこの分野は,情報学,心理学,認知(神経)科学,生理学,社会学,哲学,経済学など幅広い分野にまたがる学際分野である.こと人工知能は,情動の自動推定にも有効な優れたアルゴリズムを構築してきただけでなく,快/不快,驚き,後悔といった人の知能の進化基盤ともいえる感情をモデル自体に取り入れるなど,Affective Computingにおいても中核的役割を担ってきた.Affective Computingの黎明期には,心理学的にコントロールされた条件下で喚起/演技されたそれら基本情動カテゴリや感情価・覚醒度といった基本情動次元の自動認知が主な対象だった.だが,近年では,機械学習技術に加えてオンライン実験,ウェアラブル生体センサ,データロギング,データ共有の普及でより実環境に近い条件下で得られた多くのデータや,痛み,鬱,ストレス,共感,wellbeingといったより高次の対象をも扱えるようになってきた.Affective Computing分野は国際的には旗艦会議であるInternational Conference on Affective Computing and Intelligent Interaction (ACII)を中心としてここ数年で特に伸びてきており,かつ,次回のACIIは,本オーガナイザが中心となり2021年秋に初めて日本開催となる.しかし,日本国内では関連研究が他分野に分散しており,Affective Computing分野の現状や人工知能分野との関わりを俯瞰的視点で眺めることが難しい.そこで,本オーガナイズドセッションは,国内最大級の規模と活気を誇る本大会にてAffective Computing分野やその関連分野で活躍する研究者を集め,発表や議論による知識共有を通じて人工知能分野におけるAffective Computingの位置付けや現状をより明確にし,今後の方向性について共に議論・共有することを目的とする.
キーワード
- Affective Computing
- 情動
- 計算論
- 主観
- 行動
- 生理
OS-26 人工知能と倫理
オーガナイザ
- 神崎 宣次
- 久木田 水生
- 服部 宏充
内容・テーマの例
人工知能技術の発展に伴って,そうした技術の倫理的次元の重要性が認識されつつあるにもかかわらず,その工学的な取り扱いは未だ陽とは知れないのが現状である.本OSは,人工知能と社会との多様な関わりの中で特に倫理に焦点をあて,人工知能技術の倫理的次元に関して多様な意見を収集・共有し,議論を行うことを目的とする.
ところで,AIにおけるELSI(倫理的・法的・社会的問題)が注目されて久しいが,社会のあらゆる局面にAIが埋め込まれていく現状では,取り扱うべき課題の網羅は難しい.その課題が法的なものか,倫理的なものか,道徳的なものか,またはそれ以外かにより,課題に臨む際の観点は全く異なるため,ELSI全般を取り扱う事で議論はかえって深まりにくくなるという懸念もある.本OSが倫理に焦点を絞るのはこうした考慮に基づいている.
実際,人工知能技術に関わる倫理的問題に対する注目は高い.自動運転車に関するトロッコ問題に代表されるように,明確な答えを見出しにくい問題に対して,倫理面に配慮したアルゴリズムやモデルをどのように設計するべきなのか.兵器のように人々を害したり,人々の思考を操作・支配し得る技術やシステムの研究開発をどのように進めるべきか,人工知能技術者の多くがそれらを検討する思考の道具立てを備えていない.
また,技術の研究開発の過程そのものにも多くの問題が潜在している.センサーを備えたデバイス群やSNSをはじめとするWeb上のサービスから人々の営為に関する多量・多様なデータを収集・利用が可能である現在,それらのデータを利用したアルゴリズムやモデルを構築する過程で,個人に対する取扱と保護は曖昧なものとなっている.利便性や効率の向上という社会の目的を前に,個人(ないしはそのデータ)はどのように扱われるべきか.研究者や開発者が考慮すべき,倫理面に配慮した対象の取り扱いについて議論する必要がある.
人工知能技術が急速に生活の場に溶け込み,データを介して人々に深く接触することが可能となった事で,いま我々は,すでに様々な倫理的課題を抱え,その解決を迫られつつある.本OSでは,従来からの情報倫理や研究者倫理を超え,データ・アルゴリズム倫理,機械倫理,そして技術の倫理的デザインなど,人工知能と倫理について,すでに引き起こされている課題やその解法について国の内外を問わず動向を共有すると共に,人工知能技術を扱う方向性について幅の広い議論を行う.より具体的には以下のような話題を想定するが,この限りではない.
テーマ例:
- 開発した技術・システムがもたらしうる帰結について開発者が考える際に役立つような倫理学的なアプローチに関する議論(デュアルユースの話題なども含む)
- 技術・人工物に倫理的価値を組み込む倫理的デザイン・設計についての議論
- 社会のビッグデータの取り扱いに関する議論
- フェイクニュースなどのmisinformationの問題とその対策に関する議論
- 人工知能に関する倫理関連研究の現状についてのオーバービューを与えるような報告(何がやられていて,何が足りないのか,いまは何をやるべきなのか)
- 人工知能浸透社会に向けた倫理観・価値観の構築に関する議論
キーワード
- 機械倫理
- データ倫理
- アルゴリズム倫理
- 技術の倫理的デザイン
- 研究者倫理