チュートリアル講演1
6月7日 (水) 15:30~17:10 B会場(シビックホールB)
「AIにおけるトラスト」
中川 裕志 氏
(理化学研究所・革新知能統合研究センター・チームリーダー / 東京大学・名誉教授)
AIが社会のいたる所で利用されている状況において,AIをトラストできることは利用者にとって重要になってきている.トラストできるAIを規定しようというEUなどの活動を紹介する. 次に、AIが人間の代理エージェントとなる場合、 たとえば自律的アバターなどにおいて、トラストを確立する方法、トラストを脅かす要因、たとえば「なりすまし」についての問題点と可能な対策などについて紹介する.
[ 略歴 ]
1975年 東京大学・工学部卒業.1980年 東京大学・大学院修了(工学博士).
1980年~1999年 横浜国立大学・工学部. 1999年~2018年 東京大学・情報基盤センター教授.
2017年~現在 理化学研究所・革新知能統合研究センター・チームリーダー. 東京大学・名誉教授.
チュートリアル講演2
6月7日 (水) 13:30~15:10 B会場(シビックホールB)
「デジタル人文学とAI:人間文化の固有性・共通性・偏りと向き合う」
大向 一輝 氏
(東京大学大学院人文社会系研究科准教授)
多くの学問領域で積極的にデジタル技術が導入される中、人文学においても大規模なデータベースやコーパスが整備され、これらを対象とした言語処理やマルチメディア情報処理等によって新たな知見を得る「デジタル人文学」・「人文情報学」と呼ばれる分野が注目されている。
デジタル人文学ではネットワーク分析や知識表現、機械学習を用いた文字認識など、従来の研究を効率化する手段としてAI技術が用いられる一方、今後は基盤モデルが生成するテキストや画像を人間文化にどう位置づけるのか、あるいは社会システムとしてのAI技術を作り出す人々の意志や要求をどのように理解するかなど、人文学の研究対象として扱う必要性が生じている。
本チュートリアルでは、デジタル人文学の現状を紹介するとともに、人工知能学会を中心とする研究コミュニティとの連携・協働の可能性について議論する。
[ 略歴 ]
2005年総合研究大学院大学複合科学研究科博士後期課程修了。博士(情報学)。同年国立情報学研究所助手、2007年同助教、2009年同准教授を経て、2019年東京大学大学院人文社会系研究科准教授、現在に至る。ウェブ情報学、人文情報学、学術コミュニケーションを対象とした研究開発に携わる。2004年情報処理推進機構「未踏ソフトウェア創造事業」スーパークリエータ認定。2020年「学術情報サービス基盤CiNiiの開発」により文部科学大臣表彰・科学技術賞(開発部門)受賞。著書に『ウェブがわかる本』(岩波書店)、『ウェブらしさを考える本』(丸善出版)がある。
チュートリアル講演3
6月8日 (木) 9:00~10:40 B会場(シビックホールB)
「解釈可能な機械学習」
吉川 友也 氏
(千葉工業大学 人工知能・ソフトウェア技術研究センター 上席研究員)
解釈可能な機械学習 (Interpretable Machine Learning; IML) は機械学習モデルの出力の根拠を説明する技術であり、AIシステムの透明性が求められる昨今において重要な技術の一つとなっている。
またIMLはモデルや訓練データのデバッグ、データ分析等、研究開発をサポートする道具としても有用である。
本講演では、IMLの代表的な手法を解説するとともに、最近の研究動向についても紹介する。
[ 略歴 ]
2015年 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士後期課程修了。博士(工学)。
2015年 千葉工業大学 人工知能・ソフトウェア技術研究センター 主任研究員。
2023年 千葉工業大学 人工知能・ソフトウェア技術研究センター 上席研究員。現在に至る。
解釈可能な機械学習や動画認識を中心に、機械学習やコンピュータビジョンの研究に従事。
チュートリアル講演4
6月9日 (金) 12:00~13:40 B会場(シビックホールB)
「拡散モデルによる画像生成の基礎と最新研究動向」
石井 雅人 氏
(株式会社ソニーリサーチ)
早川 顕生 氏
(株式会社ソニーリサーチ)
拡散モデルは生成モデルの一種であり、データがノイズへと徐々に崩壊していく「拡散過程」を逆にたどることによってデータを生成する。多様なデータの生成に強いことが経験的に知られており、近年では特に与えられたテキストに沿った画像を生成するtext-to-imageのタスクにおいて、その性能の高さに注目が集まっている。本講演では、まず、多くの拡散モデルの基礎となっているDenoising Diffusion Probabilistic Models (DDPMs)について解説する。その後、text-to-imageを始めとする条件付き生成への拡張や、動画・3D生成などを含む最新の応用例をご紹介するとともに、スコアベース生成モデルとの理論的なつながりとその活用についても解説する。
[ 略歴 (石井 雅人) ]
2010年 東京大学大学院 修士課程修了。博士(情報理工学)。2010~2019年 NEC中央研究所 研究員、2017~2019年 理研AIP 客員研究員、2019年 ソニーグループ株式会社入社、2023年より株式会社ソニーリサーチに出向、現在に至る。一貫して画像向けの機械学習アルゴリズムの研究開発に従事。第3回技術経営・イノベーション賞 文部科学大臣賞、MIRU2016 長尾賞、MIRU2017 優秀賞受賞。
[ 略歴 (早川 顕生) ]
2016年 東京大学 工学部 機械情報工学科 卒業
2018年 同大学大学院 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 修士課程修了
2018年 ソニー株式会社 (現ソニーグループ株式会社)入社
2023年 株式会社ソニーリサーチに出向 現在に至る
ニューラルネットワークの大規模分散学習や画像生成モデルに関する研究開発に従事。
情報処理推進機構(IPA) 未踏IT人材発掘・育成事業採択 (2017年度)
チュートリアル講演5
6月8日 (木) 15:30~17:10 B会場(シビックホールB)
「基盤モデルの技術と展望」
岩澤 有祐 氏
(東京大学松尾研究室 講師)
2021年頃に登場した基盤モデル (Foundation Model) は,従来のように個別のタスクに仕立てたモデルを作るのではなく,単一のモデルを多様な後続タスクに適用可能となっている深層学習のパラダイムを表した言葉である.この傾向が特に顕著なのは言語(GPT-3,PaLMなど)であるが,マルチモーダル領域におけるImagenやCLIP,強化学習領域におけるGato,RT-1など多様な領域で同様のアプローチを取った研究が行われている.基盤モデルは一般にデータ・モデル両面のスケールと同時に説明されることも多く,モデルサイズ・計算量・データサイズと性能の関係に関する経験則(Scaling Law)や,モデル規模が拡大した際にのみ発現する能力 (Emergent Law) の存在などが報告されている.本講演ではこれらの技術的な動向について概観し,今後の展望について述べる.
[ 略歴 ]
2014年 上智大学理工学研究科理工学専攻情報学領域を修了
2017年 東京大学工学系研究科技術経営戦略学専攻博士後期課程を修了(学術振興会特別研究員DC1)
2017年より、東京大学松尾研究室 特任研究員、特任助教、特任講師を経て2022年4月より講師。深層表現学習技術の研究開発、講義などに従事。